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「食えなくなっても知らねえよ~!」高崎市の絶滅寸前グルメの存続をうったえる「絶メシリスト」の攻防戦

集英社オンライン / 2022年11月20日 10時1分

群馬県高崎市の知る人ぞ知る絶品グルメ店が絶滅の危機に! いつなくなってもおかしくない高崎グルメの魅力を伝え、後世に残そうとするグルメサイト「絶メシリスト」を運営する高崎市総務部企画調整課に、熱い思いを語ってもらった。

昔からあるお店を後世にも残したい

「絶やすな!」という一言からはひとつでも絶品グルメを後世に残そうとする強い意志を感じる

「食えなくなっても知らねえよ~!」

暗に「食べてほしい」と訴えかけるような謳い文句が目に入る、そのグルメサイトの名前は「絶メシリスト」

同サイトには、後継者不足に悩み、地元に愛されている絶やしたくない群馬県高崎市の絶品グルメ、通称「絶メシ」を出す飲食店がジャンルを問わず掲載されている。軽快な文章と美麗な写真で紹介される、名物店主が作り出すリーズナブルな価格の旨いメシは、見る人の食欲をかき立ててやまない。



実はテレビ東京系列で2020年1月から放送されたドラマ「絶メシロード」は本サイトがモデル。俳優・濱津隆之が車中泊をしながら、日本全国にある絶滅間近の絶品グルメ「絶メシ」を追いかけて食べに行く様が話題になり、今年8月からはドラマのseason2が放送されていた。

紹介中のお店は現在進行形で後継者問題をかかえている、絶メシという名称通り、早く食べに行かなければ本当になくなってしまう……そんな切羽詰まったスリリングさも絶メシの魅力である。

「絶メシリスト」は「高崎ブランド・シティプロモーション戦略」のもと、高崎市のブランドイメージを向上させる一環として施策されたもの。その過程で広告代理店・博報堂に委託してサイト開設に至ったとのことだ。

高崎駅周辺の様子、写真左側にある白い建物が「高崎OPA」だ

ではここからは、高崎市総務部企画調整課の担当者に話を伺っていこう。

「近年、高崎駅周辺では再開発が進み、2017年にはイオンモール系列のファッションビル・高崎OPAがオープンするなど賑わいを見せております。ただ高崎の魅力をどうPRしていくかを考えた際に、昔から営業しているものの後継者問題をかかえているお店がたくさんあることに気づいたんです。

お店のなかには古くから地元住民に愛されているところもあったので、『絶やしてはいけない』と危機感を抱き、サイト開設に踏み切りました」

絶メシ店との出会いはカルチャーショック

1972年に作られた全長430mにもわたる「高崎中央銀座商店街」のアーケード

どんな基準でお店を選出しているのかも気になるところ。

「絶品グルメがあることはもちろんなのですが、基本的には家族経営や、店主ひとりで切り盛りしているなど少人数体制でやっていて、かつ後継者問題を抱えているお店が多いです。

それから、昭和の雰囲気がありつつ、地元から愛されていることも重要ですね。そのお店にしかない年季の入った雰囲気や居心地のよさなども基準に加えています」

昔から続くお店は、存在自体が希少化していると言っても過言ではない。そして、それはお店の立地、空間、通りなども同じだという。なかでも、高崎市のある通りは、昭和の名残 が漂う人によってはたまらない空間になっているんだとか。

「高崎駅西口から徒歩15分ぐらいの場所にある『高崎中央銀座商店街』は、昭和レトロな香りが漂う商店街で、ノスタルジックな雰囲気を味わえます。いつなくなってしまうかわからないのは、グルメだけではなくこうした古きよき町の風景も同じです。お店だけではなく、こうした町の匂いのようなものを嗅いでもらって楽しんでいただければ幸いですね。
ちなみにこの商店街の近くにある喫茶店『コンパル』は、『絶メシロード season2』第3話の舞台となり大きな話題となりました」

ドラマ「絶メシロード season2」第3話の舞台にもなった喫茶店「コンパル」)

店主の田島さんが作る「プリン・ア・ラ・モード」は格別

昭和の空間を楽しみながら、絶品グルメに舌鼓を打つひとときは格別だろう。そんな絶メシ店の取材は「絶メシ調査隊」という人々によって行われているらしいが……?

「『絶メシ調査隊』はプロのライターさんによって構成されています。ライターさんのほとんどが東京在住の方であり、地元住民ではない新鮮な気持ちで絶メシを食べてくれるんです。こうした新たな体験という視点が記事には入っておりまして、絶メシのアイデンティティのひとつになっていると言えますね」

サイト掲載で常連さんが離れる懸念…
後継者問題で悩むことも

今でこそ多くのお店が掲載されるようになった「絶メシリスト」。ただお店のなかには、サイトの宣伝効果で客足が伸びることをよしとせず、取材を断るところも多かったようだ。

「昔からあるお店は、常連さんがいてこそ成り立っている面もあり、取材をお断りされることも。店主としては、『絶メシリストに載ることでお客さんが増えるのはいいことだが、それで逆に常連さんがお店を離れてしまうのは困る』とのことで、我々も取材の依頼は慎重に行っています」

毎日、主人の善養寺さんが麺を手打ちしているラーメン店「香珍」

モチモチ、滑らかな食感の麺と旨味抜群のスープとの絡みは最高!

「絶メシリスト」に載っている「香珍」という絶品手打ち麺を提供するラーメン店は、絶メシに載ることで客足が伸びたという。

ただ店主が高齢でお客さん一人ひとりを丁寧に相手していたら、お店を回せないらしく、現在メニューはラーメン1本のみというお願いをしているようだ。絶メシでお客さんが増えることは喜ばしいことだが、こうした弊害が出ることもある。

「ですが、私たちの思いを理解してくれたのか、取材OKのお店もどんどん増えていき、サイトのラインナップも充実してきました。『絶メシリスト』では後継者の募集もしているのですが、サイト開設後からちらほらと後継を名乗り出る人が出てきて、着々と絶メシというものの知名度は広がっていったように思います。まだ正式に後を継ぐ事例は出てきていませんが、やる気のある後継者を待っている店主は多いですね」

絶メシ店の味に惹かれ、実際に後継者を志望する者も少なくない。それだけ人々の間で絶メシの認知度が高まってきているのだと言えるかもしれない。

コロナ禍に入り苦境に…
なくなる前に訪れてくれ!

順調に人々の目に止まり始めてきた「絶メシリスト」……だったのだが、あのパンデミックによって多くの店がさらに苦しい状況に置かれてしまったという。

「本、ドラマでの展開が続き、好調だった矢先に新型コロナウイルスの感染が深刻化してしまいました。絶メシ店に限らず、市内では多くの飲食店が大変な事態となり、一部では閉店してしまったお店も……。絶メシ店の多くは、常連さんが変わらず訪れてくれることで営業できているところも多いみたいですが、予断を許さない状況です。

実際に『絶メシリスト』に載った後、閉店してしまったお店は7店舗もあります。高崎市としては、絶やすには惜しい絶メシ店をひとりでも多くに人に知ってもらって、貴重な食文化を味わってほしい。個人飲食店の衰退は日本のみならず、世界的な問題です。古きよきお店を守り、後世に伝えていくという輪が全国的、世界的に広がれば我々としては本望ですね」

――今、この瞬間にも絶メシ店のなかには閉店を検討しているお店はあるだろう。高崎市の絶メシを食べてみたくなった方は、「食えなくなっても知らねえよ~!」が本当になる前に足を運んでみよう。

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