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男2:女1で酩酊させ「即日セックス・動画撮影」の回数を競った鬼畜ナンパ塾の卑劣な手口と塾長の悪あがきの顛末

集英社オンライン / 2022年11月11日 19時1分

3年ぶりに行動制限なしで行われた今年の渋谷のハロウィンはコロナ禍を忘れさせるマナー違反の見本市のような乱痴気騒ぎだった。これまでのハロウィンでは悪質なナンパで痴漢、盗撮、公然わいせつといったトラブルに発展したケースもある。悪質ナンパ師たちが罪に問われた「リアルナンパアカデミー事件」を追いかけてきた高橋ユキ氏が綴る。

コロナ禍でも衰えぬナンパ師たちの性欲

2020年からの新型コロナウイルス感染拡大により、私たちの生活は大きく変化した。リモートワークが推奨され、会議や打合せはオンライン。外出時にはマスク着用。会食や旅行も憚られる日々が続いてきた。感染拡大は未だ終息する気配がみられないものの、昨今ようやく厳しい行動制限も求められなくなり、街はかつての活気を取り戻しつつある。


ハロウィンの渋谷のセンター街は活気にあふれていたが…

他人とのコミュニケーションにおいて、これまでにない配慮が求められる時代となったが、そんなコロナ禍でも街でナンパに励む強者たちがいる。むしろマスク時代となり、ナンパが増えたといったニュースもあったほどだ。
そして今も、SNSでストリートナンパを意味する「ストナン」やナンパ師を意味する「PUA」(Pick Up Artistの略)などのワードで検索をかければ、ナンパ師アカウントらによる“戦績”あるいは“落とせるナンパの方法”などが頻出する。
時代がどう変わろうとも、直接の出会いを求める欲求や、好みの相手とセックスしたいという性欲を抑えることは不可能なのだ。

そんなナンパの世界でコロナ禍以前にある事件が起こったことは、まだ記憶に新しい。

ナンパ塾のゴールは「即日」セックスすること

女性の口説きを有料で指南するナンパ塾『リアルナンパアカデミー』(以下・RNA)の塾長・Wと、その塾生らが立て続けに逮捕されたのは2018年から2019年にかけてのこと。塾生らはRNAに最高数十万円の受講料を支払い、ナンパの技術を学ぶために配布されたマニュアルを読み、塾長の指導を受けていた。

リアルナンパアカデミーのホームページ(現在は閉鎖)

ところがWは塾生らにナンパの成功回数を競わせ、その内容を記録させていた。
ここでの“成功”とはナンパした女性とただ飲むだけではない。セックスをすることだ。
だが、彼らによるその行為は、女性が酩酊し抗拒不能に陥っているなかでなされたものであり、同意のもとによるものではなかった。このため、RNAの関係者らは準強制性交等などの容疑で相次いで逮捕、のちに起訴された。

RNAが配布していたテキスト『ナンパの技術』初級編では、まずナンパの定義から始まる。

〈ナンパの定義づけの重要性 ここでのナンパの定義とは、自分にとってナンパをする意味や目的のことです。

「ナンパとは自分にとって何なのか?」
「ナンパとは自分が何を達成するために行うものなのか?」
「ナンパをすることによって、どんな自分になろうとしているのか?」

という明確な意識はとても重要になることがあります。ナンパを実践していく過程で自分のナンパスタイル を決定する指標にもなります。そして何より自分自身がナンパをする意味でもありますから、常にモチベーションの中心として重要な意味付けにもなります。自分自身の中でナンパという行為をまず定義づけしてみ てください。ゴールや目的を明確に自分の中で意識することによって、そのための行動がはっきり見えてきます〉

ナンパ行為は自己改革のための修行の場でもあるかのような錯覚をおぼえる内容だ。
当時、罪に問われたRNAの面々においては、ここでの「ゴール」は“女性との性交数を増やすこと”だった。そして性交を彼らは「ゲット」と称する。ナンパしてその日に「ゲット」することを「即」という。彼らの中では「即」に持ち込む回数が多いことが賞賛の対象となった。

塾生同士で月間の性交数を競い合う

起訴されたRNAの面々らの公判によると、手口は全て共通していた。

まずナンパした女性と飲みに行き、そののち「ハウス」と呼ばれるRNA塾生らが使用できるマンションへと移動。そしてゲームを始める。
ダーツを行い、負けたほうがイエーガーマイスターやウォッカなどの度数の高い酒を飲むというルールで女性を酔わせ、さらにカードゲームでも同じルールを用いて女性を最終的に酩酊させる。
そうして意識のなくなった女性と性交に及んでいた。

女性を泥酔させて犯行に及んだ(写真はイメージです)

ナンパの成功率を上げるためにRNAでは「正3」という手法も多用された。
これは男性が2人でひとりの女性をナンパするというものだ。ベテラン塾生が新米塾生に技術伝承を行うことも兼ねた、「ゲット」数を上げるための方法でもある。そのため、1人の女性が被害に遭った現場に、2人のRNAメンバーがいるというシチュエーションは多かった。

またこの「正3」スタイルであれば、ナンパ後にカードゲームに持ち込んだとき、男性2人がLINEでお互いの手札を教え合うなどのイカサマも可能となる。それゆえ女性を酩酊させる流れを作りやすい。

さらに塾生らが公判で口を揃えて証言していたのが「塾長から『合意を得た記録を残せ』と指導を受けていた」ということだ。
そのため塾生らは、酩酊した状態の女性と性交する際にその様子を動画に記録し、これを「ゲット」の証明としてグループLINEに送信していた。

彼らが「ゲット」の数にこだわっていたのには理由がある。

塾生らは塾長とともにある期間において「ゲット数」を競い合っていたからだ。
RNAによる一連の事件のひとつは「1か月のゲット数」を競い合うレースの最終日ギリギリのタイミングに発生した。このとき、塾生らのニックネームとその月の彼らの性交回数が頻繁に集計され、グループLINEに投稿されていた。

タイムリミット直前、塾生Nのゲット数は19。ゲット数21だったHとともに、先述のような流れで女性を酩酊させふたりで性交におよび、レース用に作られたグループLINE『終戦記念日』の集計締め切り7分前に「間に合った」という文言とともに、その動画を投稿した。
HはNに「20ゲットおめでとう」と労いの言葉をかけたという。

医師、会社役員、公務員…エリートたちが犯した罪

「ナンパして、性交人数が増えることを、ある種ステイタスのように感じてました。身勝手な思いで繰り返してた、バカだったと思います」

Hは法廷でこう語っていたが、ある種の人間はたしかに「数」の多さを尊敬の指標とすることがある。古くは、100人斬り、といった言葉があったように、女性との性交回数を「モテ」の指標であると勘違いし、ゲット数を上げるためならばどんな方法も厭わず、仲間達からの尊敬を集め、自分に自信をつけるために「ゲット」に励んでいた。

さて塾生らは公判で概ね起訴事実を認めていたが、肝心の塾長は初公判罪状認否でキッパリと起訴事実を否認していた。

「共犯と共謀した事実はなく、女性は飲酒したが抗拒不能になった事実はない。また抗拒不能な状態であったという認識もありませんでした」

塾長Wは当時、3件の準強制性交等罪で起訴されていた。
2017年11月13日に東京都内のホテルの一室において、塾生だった元会社員・Oと共謀の上、飲酒酩酊し抗拒不能となったAさんと性交したという「Aさん事件」。
2018年3月2日、大阪ハウスにおいて、塾生だった歯科医師・S(不起訴)と会社役員・G(同)らとナンパをしたCさんに飲酒酩酊させ抗拒不能な状態に陥らせて性交したという「Cさん事件」。
同年3月10日、元塾生の元世田谷区職員・N、ブランド販売会社の役員Yらと、都内のハウスにおいて飲酒酩酊し抗拒不能となったBさんと性交したという「Bさん事件」だ。

「冤罪で有罪にならないように」撮った動画が犯行の証拠に…

彼も塾生らと同様、みずから指南していたメソッド通りの行為を実践していた。共犯の塾生らや被害者らによれば、事件はいずれもナンパしたのち場所を移し、ゲームを持ちかけ、負けたら一気飲みというルールを設定する。その後、イカサマを用いて多量に飲酒させられた被害者らと性交に及ぶというものだった。

しかし被告人質問で塾長Wは、こうした関係者証言を否定した。

まず、RNAでは女性を抗拒不能にさせての性行為は法律違反だと指導していたと主張。また、ゲームも「テキストベースの教材で、泥酔させないように、あくまでも場を盛り上げることがメインだと指導していました」と抗弁した。塾生らが女性に飲ませすぎていれば「個別にLINEで指導していました」ともいう。
性交動画の撮影、保存についても「冤罪で有罪にならないように、一部始終を動画で撮るように指導していましたし、私もそうしていました」と、あくまでも自分たちの身を守る目的のもと、撮影を行なっていたに過ぎないと述べた。

そのうえ被害者らは酩酊もしておらずあくまでも合意のもとに「ゲット」したのだと繰り返していた。塾長Wは女性たちを「Aさん」「Bさん」ではなく、「女A」「女B」などと呼びながら、すさまじい早口ですらすらと語り続ける。

スマホに残った動画を取り戻そうとする塾長

「女Aに『性行為しよう』というと同意しました。キスをして舌を絡め、胸や性器をさわり、ワンピースを脱がせました。ストッキングを脱がせる時、女Aに『一瞬腰浮かせて』というと協力して浮かせ、ストッキングを脱がせてからコンドームをつけて挿入しました……」

彼の主張としては、被害者らとは合意のもとに性交したにもかかわらず、被害を受けたとう虚偽の訴えがなされている……ということのようだ。公判の最終意見陳述でも、きっぱりと冤罪を主張した。

「被害者のふりをして嘘の話をする人間を信用し、冤罪の判決を出している。明らかに真実でない話をしている人間を信用することなく、公正な判決を下されることを望みます」

こうした主張は判決において全て退けられ、3件ともに被害者や共犯である塾生らの証言が認められ、被害者が「抗拒不能」な状態にあるなか、W塾長はそれに乗じて性交したと東京地裁は認定した。

塾長Wのなかでは、あくまでも自分は冤罪の被害者だったようで、この2020年3月に言い渡された一審判決を不服として控訴。東京高裁の控訴審でもこれは棄却されたが、さらに最高裁に上告。今年1月、最高裁第3小法廷は塾長Wの上告を棄却する決定を下している。
これにより懲役13年とした一審・二審判決が確定した。

だが彼の戦いは終わっていなかったようだ。

塾長Wや塾生らが逮捕前に使用していたスマホは証拠として押収されており、そこには被害者らが酩酊状態で被害に遭う動画が残されている。被害者らは、動画に犯行の様子が記録されていることについて公判で不安を吐露していた。いつ誰に拡散されてしまうか分からないという不安からだった。

なんと塾長Wは、この犯行動画が収められたスマホなどの還付を求めても別途、争いを続けていたのである。

当初、東京地検に対し、このスマホなどの還付を求めていたが「データの削除に応じれば還付する」と伝えたところ、塾長Wは申し出を断ったため、還付がなされなかった。
これを不服として抗告するなどしていたが、2022年7月、抗告も棄却された。

取材・文/高橋ユキ

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