突然ですが、岡山県真庭市をご存じですか? 中国山地のほぼ中央に位置しており、市の公式HPによると東西に約30km、南北に約50km、総面積約828k平方メートルという、岡山県下で最も大きな自治体で、気候は年間を通じて比較的穏やかという土地柄だそうです。やはり映画監督であるオダギリジョーさんの出身地の津山のお隣にある市です。
この真庭を舞台に、トマト農家の仕事と並行して映画を撮り続けているのが山﨑樹一郎監督。2011年の第1作『ひかりのおと』では三代続く酪農を継ぐため、東京から故郷に戻ってきた青年の物語、2014年の『新しき民』では280年前に実際に起きた農民一揆を題材にした物語、そして最新作『やまぶき』はカンヌ国際映画祭ACID部門に選出され、すでに10を超える国際映画祭で紹介されている人間群像劇となります。
誰かが山頂から蹴落とした小さな小石が、崖を転がり落ちるうちに大きな土砂崩れを誘発するように、山間の小さなエリアの人間関係が、本人たちの知らず知らずのうちに影響しあっていることを鋭いショットの連なりで見せている作品です。厳しい状況を描きながら微かな希望をしっかりと提示するのも山﨑監督らしさとも言えます。地方で映画を作り続けること、地方だから描けることを伺いました。