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青森最恐の心霊スポット・八甲田山遭難事件の現場で待ち受けていたのは旧日本兵の亡霊だったのか!?

集英社オンライン / 2022年11月13日 14時1分

アウトドア技術を駆使して一般人が行けない秘境にある心霊スポットを調査する〈ホラー探検隊〉。今回は、日本山岳史上もっとも多くの死者を出した八甲田雪中行軍事件の舞台・鳴沢。いまだに犠牲者の霊が彷徨うといわれる青森最恐の心霊スポットで隊員の身に絶体絶命の危機が迫る!

いきなり絶体絶命!

鳴沢第二露営地跡にある石碑。天候が急変したために、当時の雪中行軍隊はやむなく露営をすることに。多くの隊員がこの地で命を落とした

冷たい雨は豪雨となり、横たわる身体を濡らす。闇夜を吹きすさぶ風は轟音とともに容赦なく体温を奪ってゆく……。

このままだと低体温症になって命すら危ういのではないか。そんな不安を覚えて咄嗟にタープの下へ移ろうとするも、なぜか全身が金属になったように指先ひとつ動かすことができない。



もしかして、これがいわゆる金縛りなのだろうか。だとしたら人生初だ……。

しかし、初めて遭った直接的な心霊現象に感動を覚えている場合ではない。豪雨で全身が冷えきり、すぐに温めなければ命を落としかねない状況である。まったく最悪のタイミングで“人生の初体験”を迎えたものだ。

この地で命を落とした将兵たちも、動くことさえできないような猛吹雪のなかで、今の自分と同じような絶望を味わったのだろうか。冷たい雨風に爪先の感覚をじわじわと奪われていくにつれ、いままさに寝転がっているこの場所で起きた日本山岳史上最悪の遭難事故における犠牲者たちの苦しみが、現実感を伴って眼前に迫りくる想像を止められなかった。

日本山岳史上最悪の遭難事故

行軍を率いた後藤伍長の銅像。明治37年に建てられたもので、台座には遭難者210名の名前が刻まれている

2021年9月某日、私たちは青森県中央部にある八甲田山を訪れていた。ここが青森県最恐の心霊スポットだからである。それは、明治期に八甲田で起きた大規模山岳遭難・八甲田雪中行軍事件の舞台ゆえだ。

1902(明治35)年1月、日本陸軍は冬季寒冷地における行軍の訓練として、青森歩兵第五連隊210名を青森連隊駐屯地から田代温泉方面へ送り出した。出発直後は順調に進んでいたが途中で天候が急変。本来ならば帰営すべきところ、猛吹雪にもかかわらず行軍を強行し、多数の死者を出した。

1日目の晩は平沢の森で露営するも天候は回復せず、夜中を過ぎてようやく帰営を決定して出発するも、連隊は鳴沢の峡谷へ迷い込み、遭難。さらに沢を下った挙句、本流である駒込川に出て鳴沢を登り返すなど、猛吹雪のなかをひたすら彷徨い続けたため次々と隊員が命を落とした。

結局2日目も状況は好転せず、その日の晩は鳴沢の上流部の窪地で露営したものの、凍傷と体力低下によってここでも多くの隊員が凍死。この第二幕営地が、本事故においてもっとも壮烈な場所だったといわれている。

なお、その後も出発から約1週間後に救援隊が到着するまで第五連隊の将兵たちは彷徨い続け、合計199名が命を落とした。

鳴沢の激流。滝の付近は気を抜くと足を取られそうになる

多岐にわたる八甲田怪談

悲惨な遭難事件だが、このときの犠牲者の霊がいまだに彷徨い続けているという噂が囁かれている。
たとえば「深夜に現地を訪れると真夏にもかかわらず震えるほど寒くなる」「急に肩が重くなり体調が悪くなった」というようなソフトなものから、「雪を踏み鳴らすようなザクザクという行進の音が聞こえる」「軍服を着た男たちが歩いていく姿を見た」といった具体性を帯びたものまである。

さらに、「兵士に道を尋ねられる」というパターンもあるらしく、そのバリエーションの豊かさはこの地が確かに心霊スポットであるということなのだろう。

また、実話怪談の金字塔である『新耳袋 現代百物語〈第四夜〉』(木原浩勝・中山市朗/メディアファクトリー/1999年3月刊)にも、八甲田に深夜のドライブへ向かった若者たちが山中で行軍の足音を聞き、軍服の男たちに車を囲まれた、というあらすじの体験談が収録されている。
(同逸話はYouTube上で著者本人が語っている 参照: https://youtu.be/kdYTDH0xodE

さらに興味深いのが、平成初期の怪談ブームより以前から現地に心霊体験談の記録があることだ。

今からおよそ半世紀前に刊行された書籍『青森県の怪談』(北彰介編/津軽書房/1973年刊)にも、「雪中行軍の幽霊」という題名で収められており、「そのような事件があってまもなく、兵営の歩哨(=見張り:著者注)は深夜の吹雪の夜には、遠くの方から大勢の、寒い、寒いという声と共に『歩調とれ、かしらー右』と云って入ってくる一団の軍靴の音をきいたという。」とある。

よくある肝試し系の怪談も多いが、この“帰ってくる系”の怪談が妙にリアルな手触りがあり、同地が青森随一の心霊スポットであることを実感させられる。

死霊の祟りか、あわや凍死

水路を抜けて鳴沢へと入る。段々と車道から離れて川の音しか聞こえなくなる

この青森最恐の心霊スポットを調査するために、私たちはやってきた。多くの心霊現象が囁かれる八甲田山だが、実際に多くの人が亡くなった露営地や山中ではそうした逸話を聞かない。

冬は積雪、夏は激流の沢沿いにそもそも訪れる人は少ないからだろう。そこで、とくに多くの死者を出した2日目の行軍路に沿って鳴沢を沢登りし、その上流部に設けられた第二露営地で一夜を明かして、噂の真実性を検証することが目的だった。

八甲田山中を走る県道40号脇には「鳴沢第二露営地」と記された看板や碑があり史跡となっているが、沢筋が細く当時の露営適地として疑問があったため、下流側で「連隊が露営できるほどの広さの河原で、かつ両側が立っていて風雪を防ぐに適した場所」を独自に探しあて、そこで野営をおこなうことにした。

白っぽい岩が特徴の沢を登る。所々温泉のような匂いもした

激流の滝の脇を降りていく。この後大雨が降り、引き返すことになった

沢登り自体はとくに障害もなく終えることができたし、野営中も最初は問題なかった。むしろ本当に青森最恐の心霊スポットのど真ん中なのか、と思うくらいに長閑で快適だった。

気分をよくした私は頭上に張られたタープ(雨よけの布)の下から這い出ると、適度に平らな場所を見つけて寝転び、夜風に揺れる梢を見ながら上機嫌にうとうとするほどであった。しかし――問題が起きたのはそのあとだ。

まるで地獄の死者の咆哮


結局、そのまま私はタープの外側で寝てしまっていた。それだけならよいが、寝ている間に天候が急変したらしく、気がついた頃には雨で身体じゅうがびしょ濡れになっていたのだ。寝るときに防寒も兼ねて登山用の雨具を着用していたことが仇になった。

水分がすぐには染み込んでこないため、雨に濡れても全身がひどく浸水するまで気がつかないのだ。防寒のため雨具のフードを被ったまま横向きになっていたのも裏目に出た。顔に雨粒が当たっていれば、すぐに起きたかもしれないのに。

気がつけば辺りには突風が吹き荒れ、寝る前に見上げた優しく揺れる梢が、化け物がヘッドバンギングしているように大暴れしている。どんどん風雨も激しくなっていき、たまに一帯が白い光に包まれたかと思うと、次の瞬間に雷鳴が響き渡る。まるで地獄の死者の咆哮だ。

そんな大嵐ともいうべき状況のなか、雨ざらしで寝転がっているなんてもちろん普通の状況ではない。当然すぐにタープの下へ入りこんで、少なくとも雨に濡れないようにしなければならない。だが私は――冒頭で述べた通り、動くことができなかったのだ。

タープを背にして寝転がっていた私は、声を上げてタープで寝ているであろう、ほかの隊員に助けを求めようとした。しかし、「……ぉ」みたいな掠れた空気音が出るのみで、思うように声が出せない。よく金縛り中には声が出せなくなる怪談を耳にするが、どうやら本当だったらしい。

事態はなんら好転せず、すでに足の爪先は冷たさを通り越して感覚がない。手の指もそろそろ同じような状況になりつつある。ああ、もう少しで内臓まで冷えたら低体温症患者の出来上がりだ、そのまま数時間もすれば死ぬな……そんな諦めが入った絶望が鎌首をもたげてきたとき――

「先輩⁉」

唐突に背中から声をかけられた。と同時に、身体の感覚が瞬時に戻ったのがわかった。動かせる。よかった。

どうやらタープ側にいた隊員のひとり・滝川くんが起きていて気づいてくれたらしい。あとで聞いたところによると、彼はこの豪雨のなか、心霊写真が撮れないかと沢へ向けてシャッターを切り続けていたそうで、ひと通り撮り終えて振り向いたところで、タープの外で濡れ鼠になっている私に気がついたのだとか。

あわや凍死寸前だったところ、間一髪助かった。改めて痛感したのは、ここが青森第五連隊の将兵たちが疲労と風雪のため多数凍死している場所だったこと。そこで金縛りに遭い、凍死一歩手前までいざなわれたことは、単なる偶然なのだろうか……。

真夜中の鳴沢で何かが映るのではないかと思い、撮れた限界がこちら。暗いので長秒露光していたから、ブレている白い影は虫だろう。この後大雨が降って撤収すると、確かに濡れながら寝ている哀れな姿が。まさかそんな目に遭っているとは・・・

文/成瀬魚交 撮影/滝川大貴

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