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「家族関係がキツかったら、距離を置いていい」井上真央×石田えりが“わかり合えない母娘”を熱演。映画『わたしのお母さん』

集英社オンライン / 2022年11月11日 10時1分

誰よりも近いのに、誰よりも遠い、もどかしい母と娘を描いた映画『わたしのお母さん』で、初共演を果たした井上真央と石田えり。「しんどかった」と苦笑する撮影の裏側と、俳優として受けた刺激について聞いた。

母と娘の間の葛藤は、誰もが抱える深いテーマ

左から、明るく社交的な母(石田えり)、母と仲のいい次女の晶子(阿部純子)、母との間にわだかまりを抱える長女の夕子(井上真央)
©2022「わたしのお母さん」製作委員会

──脚本を読んだときの感想から教えてください。

井上 「毒親」のような極端な書かれ方ではなく、母と娘のすれ違いが繊細に、静かに書かれてあって。夕子が抱えてきた思いに触れたとき、ゆっくりと時間をかけて、埋もれていた感情をほどいていけたらと思いました。



──井上さんは、母との関係をうまく築けない娘の夕子を、石田さんは、悪気なく娘を追い込んでしまう母の寛子を演じられました。

石田 「このお母さん、コミュニケーションが上手じゃないなあ」って思いました(笑)。娘の目を見ずにチク〜ッと嫌味を言ったり。普通に話せばいいのにね。

井上 女手ひとつで3人の子供を育て上げたお母さんは、やっぱりすごい。でもその完璧さや長女として求められることが、夕子にとっては、重荷になることもあったのかもしれません。

石田 夕子は、内に秘めてしまうところがありますよね。母としては、もう少しオープンに接してくれたらいいのにな、と思うのに。

井上 かわいげがないんです(笑)。

石田 甘えてほしいと思うけど、なんだか嫌われている空気が充満しているし、思い通りにならないことにイライラして、隙間風が吹く……。悪循環ですよね。でも、母と娘って、意外にそれが当たり前だったりもする。

井上 誰よりも距離が近いからこそぶつかるし、逆にぶつかれない悩みもある。仲のいい母娘でも、お互いに言えない思いは抱えているはずですよね。

──お互いが演じられた役については、どう映りましたか?

井上 脚本ではお母さんの無神経さがもう少し露骨だったと思います。

石田 嫌な人って、自分のことを「嫌なやつだ」とは絶対に思っていないじゃないですか。だから、私もあえて嫌な部分を強調して演じなくても伝わるかなと思ったんです。

井上 えりさんがカラッと明るく演じていらしたから、悪気のないお母さんでしたよね。だからこそより夕子の悩みが深くなった気がします。

辛く苦しいシーンをなんとか乗り越えた

──おふたりはこれが初共演ですが、それぞれに抱いていた印象は?

井上 初めて映画館で見た映画が『男はつらいよ』と『釣りバカ日誌』の2本立てだったんです。その2本が子供の頃からずっと好きだったので、『釣りバカ日誌』に出演されていたえりさんと母娘を演じることは、うれしさ反面、緊張反面でした。

石田 真央ちゃんはもう、若い頃から大スターでしたけど、特に印象的だったのは『焼肉ドラゴン』(2018)。

井上 ホントですか!?

石田 色々あるんですよ、他にも。『八日目の蝉』(2011)も素晴らしかったですしね。でも『焼肉ドラゴン』を見たときに、「うわっ、すごくいい女優さんだ」と思いました。芝居の芯がしっかりしているから、すごく弾けてもブレないんです。だから共演をすごく楽しみにしていました。

©2022「わたしのお母さん」製作委員会

──特に印象的だったシーンは?

石田 夕子が夜遅く帰ってきたことを、私が演じる母親が激しくとがめるシーン。結構、大変でした。

井上 でしたねえ(笑)。

石田 あのシーンは、初めて母娘が真正面から対峙することになるので、夕子からもバーンと鬱憤をぶつけられるかと思っていたんです。でも、ずーっと私がひとりでキレまくり、夕子の心は離れていくばかり。私が想像していた感じと違ったので、すっごく大変でした。

井上 あの日はえりさん、一日中、夕子に怒ってました(笑)。

石田 一度くらいは夕子が立ち向かってくるかなって想像していたんだけど。

井上 夕子がお母さんに立ち向かおうとする描写はありましたよね。脚本には「母の顔を見て、どうしようもなく悲しくなる夕子」と書いてあって、最初のテストのときは泣いてしまったんです。でも、夕子はお母さんの前で涙をこぼしたりできないから苦しいんだと。

立ち上がってしっかりお母さんを見つめて、気持ちを言おうとするけどわかってもらえないだろうと諦めてしまう。難しかったですね。

──辛いシーンだったようですが、撮影現場の雰囲気は?

石田 しんどかったですねぇ(笑)。

井上 あはは!

石田 普通にコミュニケーションを取る余裕はなくて。とにかく、自分の役のことで必死でした。

──夕子は母親が期待する娘になれないことに悩み、母親は、一般的な母娘らしいやり取りができないことに悩む。それぞれの親子関係があっていいはずなのに、ふたりとも「母娘はこうあるべき」という世間のラベリングに合わせようと苦しんでいるようにも見えました。

井上 普通に見たらすごくいいお母さん。そんなお母さんの期待に応えられないし、合わせられない自分を、夕子は責めていますよね。もう少し柔軟さがあれば楽に生きられるのになあ……と。でも、世間の当たり前に合わせられないのは、自分に嘘をつかない生き方ですし、「正直でいいんだよ」と言ってあげたいですね。

石田 家族は距離が近いから余計、甘えが出て関係が複雑になるんだけど、一旦その場を離れて、引いたところから見るのもいいと思う。

──家族とはいえ、それぞれが別の人格を持った他人ですしね。

石田 そうそう。家族と気が合わなかったり、関係がキツいと思う人がいたら、距離を置いていいと思います。そうしたほうが、意外に冷静に付き合える場合もあるから。

お芝居がうますぎて「ずるい」と思う

──先ほど、井上さんが初めて見た映画の話が出ましたが、おふたりが尊敬する俳優や映画スターのお話も伺いたいです。

井上 大学の卒論で、杉村春子さんについて書いたんです。そのときに作品をたくさん見ました。舞台女優というイメージがありますが、映画やドラマにも出演されていて、尊敬する方のひとりです。

スターという意味では、レオさま(レオナルド・ディカプリオ)。『ギルバート・グレイプ』(1993)を見たときから好きでした。若い頃はキラキラしたり、ギラギラしたり(笑)。今は年齢を重ねたからこその魅力があって。ちょっとお腹の出てきたレオさまも好きですね。

石田 私はニコール・キッドマン。すごく美人でスタイルもよくて透明感もあるじゃないですか。そういう人って、演技力が伴わない人もいるけれど(笑)、彼女の場合は何を演じてもすごいし、進化し続けている。『白いカラス』(2003)なんか、すごかったな。

あとアカデミー賞にもノミネートされた『愛すべき夫婦の秘密』(2021)もいい。ポップな役から暗い役まで演じ分ける変幻自在さはさすがだし、演技というものの真髄を掴んでいる感じ。ちょっともう、「ずるい!」って思っちゃうくらい好きです。



取材・文/松山梢 撮影/小田原リエ ヘアメイク/松本直子(井上さん)、MARI(石田さん/SPIELEN) スタイリスト/伊藤信子(井上さん)、山田陽子(石田さん/マージュ)

<衣装クレジット>
井上さん:ドレス¥63,800(DIESEL)、イヤーカフ¥25,300(LORO)、その他スタイリスト私物
石田さん:ジャケット¥25,300、ブラウス¥9,680、パンツ¥16,280(すべてSOEJU)

『わたしのお母さん』(2022) 上映時間:1時間46分/日本

©2022「わたしのお母さん」製作委員会


3人姉弟の長女で、今は夫とふたりで暮らす夕子(井上真央)は、明るく社交的な母・寛子(石田えり)に、幼い頃からなぜか苦手意識を抱いてきた。夕子の弟の勝(笠松将)一家と暮らしていた母は、不注意からボヤ騒ぎを起こし、夕子の家に居候することに。落ち込む母をなぐさめるため、妹の晶子(阿部純子)と温泉旅行へ連れ出すものの、ことあるごとに余計なひとことを口にする母に、夕子はたびたび黙り込んでしまう。旅行の後も、母が家事を張り切るほど、息苦しさを感じる夕子。思いがけず始まった同居生活を機に、距離を置いてきた母との間にできた溝の深さに直面することになる……。

11月11日(金)よりユーロスペースほか全国順次公開
配給:東京テアトル
©2022「わたしのお母さん」製作委員会

井上真央
1987年1月9日生まれ、神奈川県出身。角田光代の小説を映画化した『八日目の蝉』(2011/成島出監督)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、山路ふみ子映画賞新人女優賞をはじめ数々の賞を受賞する。その他の映画出演作に、『白ゆき姫殺人事件』(2014/中村義洋監督)、『焼肉ドラゴン』(2018/鄭義信監督)、『カツベン!』(2019/周防正行監督)、『一度も撃ってません』(2020/阪本順治監督)、『大コメ騒動』(2021/本木克英監督)など多数。テレビドラマでは「花より男子」シリーズ(TBS)、連続テレビ小説「おひさま」(2011/NHK)、大河ドラマ「花燃ゆ」(2015/NHK)、「明日の約束」(2017/KTV)、「乱反射」(2018/NBN)、「少年寅次郎」(2019/NHK)、「夜のあぐら〜姉と弟と私~」(2022/BS松竹東急)に主演。

石田えり
熊本県出身。1978 年、『翼は心につけて』(堀川弘通 監督)で映画デビュー。『遠雷』(1981/根岸吉太郎監 督)で日本アカデミー優秀主演女優賞と新人俳優賞を受賞。『華の乱』(1988/深作欣司監督)、『飛ぶ夢をしばらく見ない』(1990/須川栄三監督)で日本アカデミー最優秀助演女優賞はじめ数々の映画賞を受賞する。その他、『嵐が丘』(1988/吉田喜重監督)、『AYA』(1991 /スルーン・ホアス監督、オーストラリア AFI 主演女優賞ノミネート)、『サッドヴァケイション』(2007/青山真治監督)など話題作に数々出演する。世界的な写真 家ヘルムート・ニュートンが撮影した写真集『罪―immorale―』(1993)は大きな話題を呼んだ。2017 年に はピーター・リンドバーグ撮影の写真集『56』を刊行。2018 年には、短編映画『CONTROL』で初監督。2021 年 10 月公開の『G.I.ジョー・漆黒のスネークアイズ』(ロベルト・シュヴェンケ監督)ではハリウッド映画デビューを果たしている。

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