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BOOKOFFは文化の破壊者なのか? 店舗の分布が語る、書店チェーンが果たしてきた役割

集英社オンライン / 2022年11月14日 14時1分

均質化の代名詞・文化の破壊者として批判されがちなチェーン店。しかし、チェーン店がつくってきた文化もあるはずだ。書店チェーンが果たしてきた役割を、地図ライターの重永瞬氏とライターの谷頭和希氏が地図とデータを通して探る。(サムネイル画像 Ned Snowman/Shutterstock.com)

――ここまでのお話でBOOKOFFとヤマダデンキの店舗数がだいたい同じということが分かりましたが、分布はどうでしょうか?

谷頭
東京近郊を見比べてみると……あー、BOOKOFFの方がだいぶ密集してますね。

BOOKOFFとヤマダデンキ 東京周辺

BOOKOFFとヤマダデンキ 中四国周辺

重永 他の地方を見てみましょう。例えば中国・四国をみると……高知県はだいぶ違いがありますね。



谷頭 ヤマダデンキは結構あるけど、BOOKOFFは高知市にしかない。

重永 やっぱり家電の方が生活必需品だから郊外立地が多いんでしょうね。

谷頭 島根もBOOKOFFは出雲のあたりに数件しかないけど、ヤマダデンキは山陰線沿いにずーっとありますね。

重永 北海道を見ると……割と似たような分布になってる。

BOOKOFFとヤマダデンキ 北海道

谷頭 似てますね。北見、網走、釧路、帯広……だいぶ重なってますね!

重永 名寄にヤマダデンキしかない以外はほぼ同じですね。
全国的に見ると、BOOKOFFはヤマダデンキよりも大都市圏で多い傾向があります。

BOOKOFFとヤマダデンキの店舗数比較

都市圏に集中する丸善ジュンク堂とヨドバシ

――BOOKOFF以外の書店チェーンでも「このチェーンと分布が似てる!」みたいなものはありそうでしょうか?

重永 丸善ジュンク堂はヨドバシに近いですね。つまりほぼ主要都市圏 + αしかないっていうことですが。

谷頭 そういう意味では丸善ジュンク堂のエッジのなさが際立つというか、BOOKOFFやヴィレヴァンと比べると分布にあまり面白みがないですね。
文教堂は最初に話したように川崎出発のローカルチェーンっぽい分布になっているから、他と比較するのは難しいかな。

重永 他の書店チェーンもいくつか見てみましょう。
紀伊國屋書店も丸善ジュンク堂とだいぶ近いですね。紀伊國屋だけ北陸にあったり、多少の違いはありますが……。

BOOKOFFとTSUTAYA

谷頭 TSUTAYAはBOOKOFFと同じような店舗数ですけど、より万遍なく分布してる感じ。
和歌山県や高知県ってBOOKOFFはほぼ一つの都市にしかないけど、TSUTAYAはたくさんある!

重永 TSUTAYAは沖縄や鹿児島の離島にも店舗がある。

谷頭 TSUTAYAを運営するCCCの代表である増田宗昭は、CCCの理念について「カルチャーのインフラを作る」と言っていますが、そうした「カルチャーのインフラをつくる」という企業としての姿勢が現れてますね。

書店チェーンと他チェーンの違い

重永 書店チェーンならではの分布の特徴ってあるんですかね。大都市集中とか競合を避けるみたいなのは割と他のチェーンでも共通するところだと思うんですけど。

谷頭 でもやっぱり飲食チェーンと比べるとかなり大都市集中の感が強いですよね。特に丸善ジュンク堂とか紀伊國屋みたいな新刊書店は。
それは本というものの性質によるんじゃないかとは思うんですけど。在庫をいっぱい抱えるとか。
そうやって考えていくと、今日この話何回もしちゃってますけど、TSUTAYAとかBOOKOFFっていうのがある意味ではそういうニーズとか商圏っていうものを超えて全国に出店していったんだっていうのが、地図にしたことで明確になったなと思います。

道路中心の文化論を

重永 書店の分布は交通機関や行動様式との関係もあるんじゃないかと思っていて、車と電車だと本との親和性だいぶ変わりますよね。電車の中で本を読む、っていうスタイルが確立されているというのも都市圏に書店が集まる一つの要因としてあるのかなと思います。

谷頭 ありそうですね。それでいうと、本だけでなくCDやDVDのような別メディアも扱っているっていうのがBOOKOFF・TSUTAYAと丸善ジュンク堂・紀伊國屋の違いだと思います。車を運転しながら本は読めないですけど音楽は聞けますよね。車との親和性が高いからこそ、 BOOKOFFとTSUTAYAは都市に限らず全国に出店できたのかなと思います。

重永 たしかに。行動様式と音楽の聴取環境の関係なんかも調べたら面白そうですね。

谷頭 こうして色んなデータを見ながら話していると、普段の自分が都市中心、鉄道中心の見方に偏ってるなと改めて思いますね。東京に住んでいるとどうしても鉄道文化に引きずられちゃうけど、実際には日本人の普通、多数派は車とか道路中心の文化ですよね。メディアも都市に集中しているからどうしても偏った見方のものが多くなってしまう。
書店文化についても、丸善、ジュンク堂、紀伊國屋がつくってきた文化はたくさん語られていると思うんだけど、自家用車が主な交通手段になっている地域でBOOKOFFやTSUTAYAが文化にどういった影響を与えてきたのかもしっかり考えていかなきゃいけないなと思います。

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