貞淑な妻と娼婦。ふたつの顔を演じ分けるフランスの国宝的俳優カトリーヌ・ドヌーヴ
集英社オンライン / 2022年11月16日 15時0分
〈「今でも『あの時は戸田さんに助けてもらった』と言われます」スターの地位に戸惑っていた若き日のブラッド・ピッド〉から続く
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターの見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
ハリウッド映画のヒロインとは違う、大人のヒロイン
フランスの国宝的な俳優であるカトリーヌ・ドヌーヴは、映画に一生を捧げていると言ってもいいくらい、ほぼ毎日カメラの前に立っているんじゃないかしら。それくらい、驚くほどの本数の映画に出演しているし、太い幹のようなキャリアを築いているわね。
フランス語圏の女優さんなので、仕事でお会いしたことはありませんが、主演映画はもちろんたくさん見ています。どの作品でも、あの綺麗なブロンドヘアが際立っていました。
彼女の出演作で特に印象に残っているのは『昼顔』(1967)。貞淑な妻と娼婦という、ふたつの顔を演じわけていますが、とにかくストーリーが衝撃的でした。一筋縄ではいかない裏の顔がある多面的な女性を、あの美貌で演じきる。それだけでドラマになっていました。
こういうヒロインが登場するのが “大人の”フランス映画。一元的に割り切れるハリウッド映画のヒロインとは一味も二味も違います。そういう作品を次々に世に贈ってくれていた、かつてのフランス映画が懐かしい!
『昼顔』(1967)Belle de Jour 上映時間:1時間40分/フランス
美しい若妻セヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、医師である夫のピエール(ジャン・ソレル)と共にパリで幸せな生活を送っていた。ところが、マゾヒスティックな空想にとりつかれたセヴリーヌは、上流階級の婦人たちが客を取る売春宿の話を聞き、“昼顔”という名前で働くようになる。
カトリーヌ・ドヌーヴ
1943年10月22日生まれ、フランス・パリ出身。両親や、1967年に亡くなった姉のフランソワーズ・ドルレアックも俳優。10代から映画に出演しはじめ、『シェルブールの雨傘』(1964)のヒットで世界的スターに。主な出演作は『ロシュフォールの恋人たち』(1967)『昼顔』(1967)『哀しみのトリスターナ』(1970)『終電車』(1980)『インドシナ』(1992)『8人の女たち』(2002)など多数。
語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
〈ナイフで傷つけ合いながら恋人と性的行為!? 映画よりドラマティックな半生を送るアンジェリーナ・ジョリーのイメージギャップとは〉へ続く
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