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【漫画あり】ヤクザがギリシャ神話の世界線で大暴れ!? 古代ギリシャ研究家の藤村シシンも興奮する人気急騰中の漫画『イリオス』

集英社オンライン / 2022年11月17日 11時1分

「週刊ヤングジャンプ」で連載中の異色の漫画『イリオス』。ギリシャ神話を下敷きとした現代ヤクザの抗争劇という驚きの設定で連載開始直後から話題を呼んでいる。古代ギリシャ研究家で作品のファンでもある藤村シシン氏に本作の魅力をうかがった。

「ギリシャ神話×ヤクザ」の意外な化学反応

━━まず最初に『イリオス』を知ったきっかけはなんですか?

連載が始まった時に、「ヤングジャンプ」を読んでいる人から「ギリシャ神話に関するマンガが始まった!」と連絡がきました。「ギリシャ神話なんだけど、ヤクザもの」と言っていたので、「何を言っているのかな?」と思って読み始めたのですが(笑)、すぐに「これは、やばいぞ!」と気づきました。


古代ギリシャ研究家・藤村シシン氏

━━最新話まで読まれたご感想をお聞かせください。

「トロイア戦争」(※注1)ものを現代アウトロー漫画にするっていうアイデアがすごいけど、まさか本気で描くわけじゃないだろうなと思って読んだら、すごい本気で描かれているんですよね。ちょっと題材だけ、名前だけ取ってギリシャ神話を描くのではなくて、マジでギリシャ神話をやっているんですよ。

舞台を古代ギリシャから現代日本に移動させただけじゃなく、当時のギリシャ人が『イリアス』(※注2)を本気でリアリティを持って語っていたのを、日本のヤクザの抗争にすることで、現代日本人もリアリティを持って読めるのがすごいなと思いました。「アガメムノン」→「崇目ムネオ」とか名前の落とし込みもすごい。

古代ギリシャ人って、こんな感じで『イリアス』読んでたのかなっていうぐらいのレベルですね。

※注1 「トロイア戦争」:紀元前1200年頃に起きたとされる古代ギリシャがトロイアに攻め込んだ戦争。「イリアス」で語られている。

※注2 『イリアス』:紀元前8世紀ごろにホメロスによって伝えられたといわれているギリシャ神話を題材とした長編叙事詩。漫画『イリオス』の"原典”と思われる作品。

本物のギリシャ神話のリアリティ

━━作者の円城寺真己さんにとっては、すごい褒め言葉ですね。

古代ギリシャ研究側としても、最高にエキサイティングにカスタムされた現代版イリアスを描いてくれてありがとうございますって感じです。
『イリアス』をテーマにした作品はいっぱいあるんですけど、ここまで各キャラクターを細かく真に迫って描いているものって、ほとんど見たことがないと思います。
例えば映画の『トロイ』ではアキレウスとか、主要キャラを絞って物語を描くのが普通なんですけど、『イリオス』はかなりレアなキャラクターも出てきてるんですよね。パンダロスとか。

原典でもちょっとしか出てない人が出てきて、それがちゃんと役割を持っていて、ものすごいリアリティで全員を描いてるところが、本物のギリシャ神話じゃないかって思うぐらいに本当にすごいですね。
まだ「イリアス」を読んでいない幸運な人たちは『イリオス』で『イリアス』を勉強したほうがいいですね。

クセ者ぞろいのキャラクターたち

━━作者としては、ギリシャ神話を滅茶苦茶に描いちゃってるから、研究者の人には怒られるんじゃないかっていう不安があるみたいですけど…。

そんなことはないです。怒る要素がないんですけど(笑)。古びた物語にまた新しい命を吹き込んで、それを連載という形で見せてくれるの、最高の体験です。

ギリシャ神話とヤクザの抗争っていうアイデアだけで終わらず、しっかり描き込んだ、全力で真剣にやっているマンガだというところがおもしろ味をすごく引き立ててると思います。
喜劇なのか悲劇なのか絶妙なラインでになっているところも、どこか原典となっているギリシャ神話っぽい感じです。
運命は喜劇でもあるし悲劇でもあるっていう。『イリアス』感がが出ていてすごい作品だなって思ってます。

暴力性と責任感で人気のお兄さん

━━『イリオス』でお気に入りのキャラクターはいましたか?

主人公のパリスです。この作品で彼の新しい魅力を教えてもらいましたね。
そもそも主人公がパリスなことがすごいんですよ。(紀元前8世紀から)3000年ぐらいの間に「イリアス」はいろんな語られ方をされてきて、いろんな物語だったり改変があるんですけど、パリスが主人公の作品はすごい珍しいです。
パリスって、一人の女性を私情でかっさらって戦争の原因を作っちゃうので、かなり感情移入しにくいキャラクターで憎まれ役になることが多いんですよね。

主人公・パリス

でも、『イリオス』のパリスは、女を好きになってみんなに知らせずに運命に巻き込まれちゃった、というわけじゃなくて、自分で運命を変えようとして自分の意思であえて全員巻き込んでやってるわけですよ。
このパリスのキャラクターはすごい新しいから、こんなふうに描くということに驚くとともにこの作品のすごくおもしろい点だと思います。

━━あと、粨(へくと)兄さんも人気があるんですよね。

九州伊莉雄会のNo.1粨トオル

そうですね。紀元前8世紀から人気がありますね。
『イリアス』を伝えたホメロスもあえてヘクトル(粨のモデル)に感情移入させるように語っているんですよ。ホメロスはギリシャ人なので、(トロイアの大将である)ヘクトルは敵なんですけど、その敵にあえて感情移入する要素をつけているんです。

「俺はこの国を守る義務があるんだ」「家族も駄目な弟もいるし、全員俺が守らなきゃいけない」というキャラクターとして立てて、最終的に※※※※(ネタバレのため伏せ字)でみんなが感情移入するというような手法を使ってたので、それが3000年間続いて来たんです。

『イリオス』の粨は味方ですが、すごい暴力で話を解決してるじゃないですか。
もちろん『イリアス』でも「私にはみんなを守る責任があるから」というキャラなんですけど、結局全部暴力で解決してるから…よく考えたらヘクトルって暴力キャラだよなって、改めてわかりました。
『イリオス』のおかげでヘクトルの新しい一面を知れましたね(笑)。

誰が死んで誰が生き残るのか?

━━アキレスに関してはいかがでしょうか。

ライオンを喰らい、10人を超える女性を抱く超人アキレス

アキレスだけ物語上、ややリアリティラインがおかしくて、彼だけファンタジックな存在じゃないですか。他のキャラたちも全員超人たちなんですけど、レベルを画した超人として出てきて、もうなんか強さも能力値も考え方も、他の人たちとは次元が違うって感じです。これは原典でのアキレウスもそうなんですよね。

『イリアス』でも一人だけ女神との半神なので、強さのレベルが他の人たちと全然格が違う強さなんです。それがマンガ上で現代のヤクザの抗争の中でもそのリアリティラインが一人だけ違うところが表現されていますよね。
「なるほど、アキレウスって現代日本で実際にエンカウントするとこんな感じなんだ!」って体験を味わってます。

━━今後『イリオス』に期待することはありますか?

最初にパリスがリンゴを選ぶシーンで運命に逆らう話をしているので、『イリアス』を知っている人間からすると、あの運命をなぞるのかどうか、違う運命をパリスが選ぶのかどうかが気になります。
原典では、この抗争がどうなって、誰が死んで誰が生き残って、誰が誰を殺すかもわかってはいるけれども、その運命にたどり着くのかどうか、違う運命になるのかどうかっていうのところがすごく楽しみですね。

あとはトロイア戦争って、トロイの木馬が運び込まれてそれで街が破滅するっていう有名な逸話があるんですけど、この物語上で、トロイの木馬が何で表現されるのかっていうのが、やっぱり一番楽しみですね。期待値が上がってしまいます。

——最後にまだ読んでない人に一言いただけますか?

由緒正しい西洋最古の物語が、令和の現代日本ヤクザものとしてパワーアップして帰ってきた! 今までの人生でトロイア戦争のネタバレを踏まずに生きてこれた人々こそ幸運だ! そして戦争の結末を知っている人も「あのシーンがどう描かれるのか!? 運命は変わるのか!?」という視点で楽しめる……『イリオス』!
このエーゲ海国家の戦争……もとい、組の抗争を今見ないと古代人も現代人も後悔するぜ!

古代ギリシャ×ヤクザの大河アウトロー第1話公開中!(すべての画像を見るをクリック)

取材・文/佐藤祐二

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