1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

中学受験で追い詰められて、ゲーム、スマホ、過食・拒食…。子どもの「依存行動」を防ぐ親の心がけ

集英社オンライン / 2022年11月19日 11時1分

「依存症」は大人だけがなるものではない。受験のストレスやプレッシャーが原因で、依存症になってしまう子どもたちもいるという。受験シーズン真っ只中の今、親が知っておきたい「我が子を依存症にしない方法」を、児童精神科医の前田佳宏先生に聞いた。

ストレスへの対処として、
ゲームやスマホに依存する

「そもそも、受験にストレスはつきもの。体調不良やメンタルの不安定さなど、受験を控えた子どもたちには、多かれ少なかれ何かしらの反応が心身に出ます。依存行動は、『ストレスへの対処法のひとつ』でもあるんです」

そう話す前田佳宏先生は、子どもの愛着障害やトラウマなどを専門とする児童精神科医。依存症に悩む子どもや保護者にも数多く出会ってきた。



「たとえば、受験のストレスから逃れるために何かに依存することでしんどい現実から離れることができ、一時的にでも気持ちが楽になれる。それでなんとかバランスを保ち、最後まで勉強を続けられるという子たちもいます。

依存すること自体がダメというわけではなく、本人にとっては、その行動をすることで救いやメリットがあったりもします」

小中高生の場合、手軽にできるゲームやスマホなどのデバイスに依存しやすい傾向がある。一方で、過食・拒食やリストカット、盗みなどの「嗜癖行動」に依存する子もいるそう。手持ちの小遣いが少ない未成年にはさほど多くはないものの、市販薬やエナジードリンクなどに依存するケースもゼロではない。

「たとえばゲームがストレス解消になっている子でも、受験勉強に支障をきたさない程度にプレイしたり、自分でやめられるのであれば問題はありません。

依存症は、自分ではコントロールできず、日常生活になんらかの支障が出ている状態。不安やしんどさをゲームで解消しようとするうちに、ゲームをする時間がどんどん増えていき、やがて睡眠や勉強の時間を削ってまでやらないと気が済まないようになり、保護者が様子の変化に気づくというケースも少なくありません。

『うちの子、依存症かも』と感じても、実際には病院を受診しないと正確な判断は難しい。当の本人が病院へ行きたがらないことも多いものです。

すぐに受診しなくとも、お子さんが通う学校のスクールカウンセラーや、お住まいの県にある精神保健福祉センターや保健所に保護者が相談することも可能です。家庭だけで抱え込まないようにしましょう」

依存症の子どもは「依存行動によってなんとか自分を保っている状態」

真面目ないい子だからこそ、
依存症になることも

受験のストレスがあっても、すべての子どもが依存症になるわけではもちろんない。依存症になりやすい子どもには「コミュニケーションの課題」があることが多いと前田先生は言う。

「たとえば、自分のストレスや不安を解消したいとき、誰かに話を聞いてもらう方法がありますよね。でも『こんなことを話して否定されたらどうしよう』などと考えてしまう子は、なかなかそれができません。

その代わりに、『これをやれば気持ちがスッキリできるし、自分を裏切らない確証がある』と感じる物質や行動に依存してしまうケースも少なくないんです」

依存症というと、一般的には「意思が弱い・誘惑に負けてしまう」といったイメージに見られがちかもしれない。しかし、むしろ「真面目ないい子」だからこそ、依存症になりやすいという傾向もあるそうだ。

「いわゆる『優等生』と呼ばれる子たちは、自分の気持ちを押し殺して周りの大人たちの言うことを聞いていることがよくあります。

そういう子たちは、受験勉強がしんどくても『本音を言ってはいけない』『感情を抑えてがんばらないと』と考えがち。そして、ストレスに対処するために依存行動が始まってしまうことがあります。

『ある程度賢くて考える力はあるけれど、人に頼ることが苦手だったり、頼る方法がわからなかったりするがゆえに、依存症になってしまう子』は、一定数いると思います」

何でも相談できる関係が依存症を防ぐ

子どもの依存症には、その子の家庭環境も大きく関係するという。

「子どもの依存症が起きてしまう背景には、親子関係や、それまでの親子間のコミュニケーションの積み重ねが影響していることがよくあります。

日頃から悩みや困りごとを気軽に親に話せる環境にある子たちは、やはり依存症にはなりにくい。否定的だったりすぐ怒ったりする親だと、子どもにとって相談できる相手ではなくなってしまいます。

親には話せなくとも、学校や塾の先生など気持ちを受け止めてくれる身近な大人がいたり、自宅以外で安心して過ごせる環境が何かしらあれば、依存症には至らなかったりする。依存症になる子は『頼れる人や場所がひとつもないために、何かに依存せざるを得ない』という子も多いんです。

我が子を依存症にさせないために親ができることは、普段から『話を聞いてもらえる、受け入れてもらえる』と子どもが感じられる関係性をつくっておくことだと思います」

「自分の気持ちを否定されない親子関係」が依存症を防ぐ

気持ちに寄り添い、追い詰めない

中学受験をする家庭も増え、早期から受験勉強をスタートする子も一定数いる。

しかし、子ども自身が受験勉強の目的をきちんと理解していなかったり、勉強がスムーズに進まない環境にあったりして、強いストレスを抱えた結果、依存行動に走ってしまうケースもあるという。

「我が子の受験勉強がうまくいっていないようだと感じたら、まずは子どもの話を聞いて気持ちに寄り添い、どこに問題があるのか気づいていくことが大切です。

たとえば『志望校に受かるとこんなメリットがあるよ』と、具体的な見通しを持たせてみる。子ども部屋が勉強に集中しにくい状態になっている・塾の雰囲気が合わないといった要因がありそうなら、それらの環境を整えたり変えたりしてみる。

もっとも避けるべきは、親に無理やり勉強を続けさせられて、依存行動をするほどに追い詰められ、それが子どものトラウマになってしまうこと。親子関係が悪化したり、一切勉強をしなくなってしまう…といったことにもなり得ます。

本人が依存症になりかけているような状態だったり、深いトラウマを植え付けてしまいそうだったりするのなら、たとえば中学受験なら受験そのものを再考する、志望校を変更するというような思い切った対処法も、場合によっては必要かもしれません」

依存行動には必ず理由がある

「子どもの依存行動は、本人の中でなにかがうまくいっていないサイン」だと、前田先生は考えている。

「『勉強がうまくいかずモヤモヤしている』『プレッシャーから逃避したい』など、その子が何かに依存をしたくなる理由が必ずあるはず。ただ叱って依存行動をやめさせようとしても、根本的な解決には結びつきません。

たとえばゲーム機器やスマホを没収しても、結局、他のモノや行為に依存するようになるだけということがほとんどです。

依存症には治療が必要になるため、お子さんの依存が心配な場合は早めの相談や受診をおすすめしますが、そこまでではなくとも『最近、隠れてゲームやスマホをしているようだ』『受験勉強に集中できていないのでは』と気になったときは、まずは話を聞き、我が子がどんなことにストレスを抱えているのか理解しようとする姿勢が大切だと思います」

後編では、子どもの依存行動の減らし方や付き合い方、治療法についてお聞きする。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください