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真面目に勉強していた子が受験ストレスでゲーム依存に。親の対応の「正解」と「不正解」

集英社オンライン / 2022年11月19日 11時1分

我が子が受験のストレスをきっかけに依存症になってしまったら……。もしゲームやスマホ、過食・拒食などへの依存行動が見られた場合、親はどのように対処すればよいのだろうか。児童精神科医の前田佳宏先生に、子どもの依存行動の減らし方や付き合い方、治療法を聞いた。

依存症の目安は「平日3時間以上」

ゲームやスマホ、過食・拒食など、我が子の依存行動が気になって親が受診を勧めても、本人が嫌がることも少なくない。しかし「無理やり受診させることは避けたほうがいい」と前田先生は言う。

「たとえ病院へ連れて行くことができたとしても、途中で来なくなる・アドバイスを聞き入れないなど、治療が続かなくなってしまうケースも珍しくありません。



受診をさせる前に『このまま依存行動を続けても、結局は苦しさが増してつらくなっていくだけで、何もいいことはない』とわかってもらうことが先決です。本人も、どこかではそのことに気づいているはずですから」

病院を受診する目安としては、たとえばゲームやスマホならば「平日に3時間以上やっているかどうか」がひとつの判断基準になってくるという。

「受験生の子どもの場合、平日は学校を終えて塾へ行く・または自宅などで勉強をするという過ごし方が大半ですよね。

『休日に長時間やる日がある』程度ならば問題ありませんが、平日の限られた時間のなかで毎日3時間以上ゲームやスマホをやっていれば、少なからず学業や睡眠に支障が出てきてしまっているはずです」

HSCや発達障害の子どもも要注意

前回の記事では「親に何でも話せる関係性の子どもは依存症になりにくい」と紹介した。一方で、家庭環境に問題がない場合でも、依存症になりやすい子どもたちもいるそうだ。

「たとえば、人一倍敏感なHSCや、見通しを立てることが苦手なASD、注意散漫になりやすいADHDなどの発達障害(またはグレーゾーン)を持つ子どもたちは、そうでない子どもに比べて、受験勉強のストレスをより抱えやすいところがあります。

それぞれに強みもある一方で、適切な発散方法を持っておらず、受験へのストレスが強い場合は、依存行動に走ってしまうこともあり得ます」

繊細で感受性が強いHSCは、人口の約5人に1人と一定数存在する。また、知的な遅れを伴わない発達障害児の場合、子どもに合う環境を求めて中学受験をさせるケースもある。

たとえ親子関係が良好であっても、「生まれ持ったもの」が要因で依存症を引き起こすリスクもゼロではないということも、親として頭に入れておきたい。

依存行動以外に置き換えていく

実際に、子どもの依存症の治療は、どのような形で進んでいくのだろうか。

「心理カウンセリングなども用いて、まずは『どういう状況になると依存行動をしたくなるのか』、その原因を分析して知ることから始まります。そして、依存行動にどう対処していくかを具体的に考えていきます。

たとえばスマホに依存している子の場合、その子がスマホに触れられるシチュエーションを減らしていきます。『家に誰もいない』『手の届く場所にスマホがある』という2つの要素が揃ったときにスマホをやりがちならば、その機会を物理的に減らす。

自分の部屋ではなく塾の自習室など、人目があってスマホを見づらい環境で勉強するように変えるといった対処法が考えられます」

ほかに健全なストレス発散方法を見つける、相談できる相手や居場所を確保するなど「依存行動とは別の依存先を増やす」方法が、依存症の改善には大切だという。

「やりたくなったときに『自分の気持ちを落ち着かせる方法はほかにもあるんだ』と、実感してもらうことが必要です。

依存行動は、自分ひとりではコントロールできません。周囲の人を巻き込んで協力してもらうことそのものが、本人の治療によい影響を与えます。自分の気持ちを理解してくれる人がいる、協力関係を築けるということ自体もリハビリになります」

人を頼る・協力してもらうこと自体が治療につながる

ご褒美作戦も効果的

そのほかにも、ゲーム機器などを親に預かってもらい、やりたくなったときに「やってもいいか」と許可を取るようにする方法などもあるという。ひとつの方法を試してなかなか改善されない場合には、子どもに合いそうな方法が見つかるまで試していくのがよいそうだ。

一方で、これまでやっていた依存行動をいきなり完全にやめさせることは難しい。ゲームやスマホであれば、受験を控えている場合あっても子どもと時間を決めて約束し、その枠組みのなかでやらせる対処法はアリだという。

「『ゲームは一日◯分まで』と決めて、子どもが約束を守れたら好物をつくってあげる、息抜きに行きたい場所へ連れていくなど、親の負担にならない程度のご褒美をあげるようにするのもおすすめです。

我が子の依存行動を減らしたいときに『志望校に落ちたら、目指しているやりたい仕事に就けなくなるかもよ』などの将来的に起こり得るリスクを伝えても、本人には響かないことがあります。それよりも短期的なメリットを与えたほうが、効果が出るケースも多いんです。

逆に、子どもが約束を守らない場合は、『これ以上やったらお小遣いはなし』など、依存行動を減らさないと実際にデメリットが起きる状況をつくることも有効です」

「勉強しているか」だけで判断しない

我が子の心配が尽きない受験の時期。だが前田先生は「『見えている部分』だけで判断しないようにしてほしい」と言う。

「受験生の子を持つ親はどうしても、子どもが『勉強をやっているか・やっていないか』ばかりを重視しがち。気持ちはわかりますが、ゲームやスマホばかりしていること自体を問題視するのではなく、理解し、サポートしようとする姿勢を持つことのほうが大事です。

依存行動を減らしていくための協力は必要な一方で、『依存行動をしてしまう気持ち』自体も、一度受け入れてあげること。お子さんによっては、親御さんが理解しようとしてあげるだけで依存行動が減っていくこともあります。

子どもは、なぜその依存行動をしてしまうのか、理由をうまく説明できないことも多いです。でも、たとえばストレスを感じたときに『なんだか胸がチクチクする・ゾワっとする』といった身体感覚がセットであり、それから逃れるために依存行動をしていることもある。

お子さんが『つらい、しんどい』と言葉でうまく言えなくても、依存行動をしてしまっている現状を否定せずに、まずは寄り添ってみてほしいです」

我が子の依存行動に隠れているものを理解しようとすることが大切

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