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【突撃取材】「キャンプ飯、見せてください」。そこには“映え”を超えた愛と友情の味があった!

集英社オンライン / 2022年11月18日 14時1分

キャンプブームは依然として続き、週末には大勢の人とテントで埋め尽くされているキャンプ場や公園も少なくない。そんなキャンプの楽しみといえば、やっぱり食事。SNS上は“映え”のごはんで溢れているが、実際にはもっと多様なメニューや物語があるはずだ! キャンパーたちに「キャンプ飯、見せてください」と話しかけてみた。

秋晴れの土曜日、取材班は埼玉県戸田市の彩湖・道満グリーンパークへ向かった。この公園は東京都心から近いアクセスに加え、予約なしでデイキャンプやバーベキューが楽しめるとあって好天の休日は広い駐車場がいっぱいになるほど多くの人々が訪れる。

取材班が公園に到着したのは午前11時前。すでにデイキャンパーたちがあちこちで火を起こしていた。


夫婦水入らずで味わう、余りもの活用の「チーズフォンデュ」

最初に目に止まったのは、白いテントの脇で小さな鍋を挟んで向かい合う夫婦。

「妻とキャンプに行き始めたのはつい最近です。昨日、冷蔵庫に野菜が余っているのをどうしようかと思ってたんですよ。そしたら、妻が『外でチーズフォンデュを作ってみない?』と提案してくれて」

男性がそう答えたところで、妻がタッパーから野菜を取り出し、とろみを増していく鍋の中のチーズへ投入。

「カボチャ、ニンジン、ブロッコリーは家で下茹でしてきました。鍋の中は、シュレッダーチーズをベースに白ワイン、ニンニクで風味をプラスしてあります」

熱々のチーズをまとわせたカボチャを口にした男性の顔がほころぶ。あり合わせの材料にちょい足し、夫婦の共同作業でちょっとおしゃれなメニュー。
結婚2年目だというが、長年連れ添った夫婦のような阿吽の呼吸だ。

ママ友と楽しむ、本格派キャンパーの「ブイヤベース」

背後にハンモック、脇にはきれいに吊り下げたキャンプギア。テーブル上の鍋の中身は南フランスの煮込み料理、ブイヤベースだ。
ママ友たちに料理の腕をふるうのは、キャンプ歴3年のANDOさん。

「YouTuberの『少年かむい』さんを見て、3年前にソロキャンプを始めました。ママ友ふたりは、今日が初のデイキャンプなんです。みんなそれぞれの自由な過ごし方を尊重しつつ、困ったらすぐに助け合えるように少しだけ離れて座っているんです」

メイン料理をブイヤベースにしたのも今回のコンセプトに合っているからだとか。

「バーベキューだと焼いている間がけっこう忙しい。でも煮込み料理は、ときおり鍋の中を見ながら、自分もゆったり過ごしつつ、周りの手助けもできるんです」

ANDOさんに教えてもらいながら、斧を使って薪を割り、焚き火をするママ友ふたり。「家族ではキャンプをする機会がないんでうれしい」と満足げだ。

ブイヤベースは市販のダシを使って時短調理。一方、具材は生のエビ、タラ、ムール貝。アク取り、火を通すタイミングなども手抜きなし。手を抜くところ、手をかけるところのさじ加減がキャンプ飯の肝だろう。

「食後はチャイ。スパイスを合わせて作ります」とANDOさんの一言に、ママ友たちは満面の笑みを浮かべた。

パパ友3人組が青空キッチンで作る「燻製料理」

正午過ぎ、宴もたけなわの40代後半から50代前半の男性3人組を発見。

「僕たち、子どもが同じ保育園に通っていたパパ友なんです」と気さくに話してくれた克典さん。サザエやハマグリの海鮮焼きから始めて、スペアリブ、パスタも食べ終えたところだそう。

「まだ最後にこいつが残ってますよ」と指差したシルバーの箱。
ふたを開ければもうもうと立ち上がる煙の中にししゃも、鶏肉、卵。桜チップの燻製香に期待が高まり、克典さんが卵を割ってみる。
とろり半熟の黄身が絶妙な仕上がりにオヤジ3人、少年さながらの歓声を上げる。

「料理担当は特に決まっていないです。仲間がスペアリブを漬け込んで持ってきてくれるというから、じゃあ自分は燻製やってみようかと。このワクワク感がやめられないですね」

家でも料理上手な父親として活躍する姿が目に浮かぶが……。

「いやいや、家のキッチンは妻の領域なんで(笑)。その分、気の置けない仲間と一緒にアウトドアならではの料理にチャレンジしています」

照れ笑いの中、日々キッチンに立つ妻への感謝の心が垣間見えた。

妻に教えてもらった「餃子サンド」の再現に挑む

大きなテント、その脇に一台の自転車。
足立区からやってきた石川さんがホットサンドメーカーを開いて見せてくれたのは、ホットサンドかと思いきや「餃子サンド」だ。

「餅、明太子、のりを餃子の皮で挟んで焼いたものです。前回、夫婦でキャンプに行ったときに妻が作ってくれたのが美味しくて。今日は僕だけ仕事が休みだったんで17キロ自転車をこいできて、教えてもらったレシピをソロで試してたんです」

それだけでも相性のいい和の食材を餃子の皮で挟むことで、小麦の香ばしさが加わり風味が増す。スナック感覚の食べやすい形はキャンプ向き。
忠実に再現できたように見えたが、石川さんは一口食べて小首をかしげる。

「まあまあ美味しいけど……仕上げのごま油を忘れたからか、何かもの足りない。うーん、やっぱり妻にはかなわないと思い知りました」

苦笑いする石川さん。夫婦でのキャンプは車で、ソロのときは自転車で、とアウトドアのスタイルを使い分けている。

フレームから組み上げたというこだわりの自転車は、前後のキャリアにバッグを装備し、テントや調理器具を積載可能。自分のスタイルを追求する男のキャンプ飯は、これからも進化していくに違いない。

こだわりの中華鍋で作るパラパラ絶品「チャーハン」

焚き火で熱した中華鍋を振っていた姿が目を引いた。50代の下田さんは、中華お玉でチャーハンをかき回しながら話す。

「今日はおろしたてのこの中華鍋を使いたくてね。ひとりでふらっと昼メシだけ作りにきたんだよ」

黒光りする中華鍋は鉄製品の名産地、燕三条製。「洗わないで拭いて手入れをするんだよ」とギアへの思い入れが溢れる。焚き火台も前日に購入したばかり。コンパクトに収納できるところが気に入っているそうだ。

「というわけで、今日の主役はキャンプギア。2、3時間でサクッと帰るつもりだから、料理は凝らずに冷凍チャーハンです」

キャンプ歴は6年ほど。家族と、仲間と、ときどきひとりで。場所は近所から沖縄は宮古島まで。シーンに合わせて多彩なスタイルで楽しんでいる。そこまでキャンプに魅せられたのはなぜか。

「うーん、きっかけはなんだったかなあ……子どもの頃にさ、こういう外遊びが流行ってたんだよね」

真鍮製の吹き棒で炭をコツコツいじりながら話す下田さんの目じりにシワが寄った。

男ふたり、エナジードリンクで流し込む「冷凍餃子」

餃子とピザを調理中のふたり組、坂井さんといなべさんはともに20代後半。学生時代から10年来の付き合いだという。

「今年の頭くらいから少しずつキャンプ道具をそろえ始めて、前回はお互いの彼女を連れて4人でキャンプをしたんです。そのときはパエリアとか天ぷら、炊き込みご飯まで作ってもらって。映えるし、超うまかったですよ。

今回は家からわりと近いこの公園に男だけで来てみました。汚くてもいいや、失敗してもいいや、そんな感じで食べたいものを食べたいだけ食べようぜってことで」

そう謙遜しつつも、スーパーで購入したチルド餃子をひっくり返すと、その焼き目の美しさに取材班も「おお、すごい!」。

「ここで何度かデイキャンプをして慣れたら、山梨のほったらかし温泉のキャンプ場に行ってみたいんです。そのときはまた彼女を連れて」

片手にはエナジードリンク、食料袋の中にはカップ麺も見えた。
肩肘張らず、欲望に忠実であれ。
若きふたりにキャンプ飯の神髄を教わった。

家族みんなで果たす「焼き芋」リベンジ

昼下がり、話を聞いたのは隣の川口市からお越しの浦野晋介さんご一家。
小学2年の長男、5才の長女、生後3カ月の次男を連れてこの日が3回目のキャンプだという。

晋介さんが炭火の上の焼き芋をさわり、火の通り具合をチェックする。

「焼き芋が今日のメインです。今年キャンプを始めたばかりで、実は1週間前、同じように焼き芋をしたんですが、火の通りがいまいちで(笑)。今日はリベンジなんです!」

妻の道絵さんは「テントを張ったり、焚き火をしたり、家族みんなで少しずつできることを増やしていきたいですね」と話す。

できあがるまで取材班が時間をつぶし、再度、浦野さんのテントに向かっていると「お芋焼けたよ!」と子どもたちが走ってきて教えてくれた。満を持して芋を割ってみると断面がしっとりと、完璧な仕上がり。

「広葉樹の薪を見つけたんだけど、それだと燃えにくいからって、先週のキャンプの帰りに針葉樹のやつ、買ってたんだよ」

長男の昇太くんが今回の成功の秘訣を教えてくれた。

かくしてホクホクの焼き芋をご厚意で“お福分け”。
取材班の独身男3人、焼き芋の甘さとともに家族の温かさが心に染みた。

取材・文/小林 悟
撮影/松本 侑
サムネイルデザイン/鈴木沙季

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