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『ドラクエⅢ』を遊び尽くす変態級達人たち。350台を超えるファミコン本体収集で見つけた大発見とは…!?

集英社オンライン / 2022年11月19日 19時0分

ワザの練習だけで4500時間。「スーパーマリオ」にドハマリして世界で2番目の記録達成〉から続く

ゲーム開始からクリアまでの実時間を競い合うRTA(リアル・タイム・アタック)という競技でドラクエⅢの「なんでもあり」ルールにチャレンジし続ける3人のプレイヤー、ばくぜろ氏・ひっしー氏・ピロ彦氏。本人たちでさえ「狂気を感じる」と語る彼らに、RTAにかける熱意を聞いた。

出会いから早2年。直接会話したのは4回目

RTA(リアル・タイム・アタック)とは、限りなくゲームを早くクリアする遊び方だ。単に早くクリアする、と聞くと簡単に思えるかもしれないが、実際は0.1秒単位の正確さが求められる操作を何度も行ったり、8時間ぶっ通しでのプレイをしたりなど、技術・体力・精神力が求められる遊び方といえる。



そんなRTAだが、なかにはルール無用ともいえる「なんでもあり」のRTAもある。ばくぜろ氏・ピロ彦氏・ひっしー氏の3人は、ドラクエⅢでなんでもありRTAを行っているプレイヤーたちだ。

――改めて、皆さんはどのような集まりなのでしょうか?

ばくぜろ ドラクエⅢのRTAがきっかけです。このRTAを始めるまで、つながりはほとんどありませんでした。

ピロ彦 直接会ったこともないですし、お互いの声を聞くのもこれが4回目くらい。ほとんどチャットで交流しています。

ひっしー ドラゴンクエストⅢのRTAで一切の制限を設けない、なんでもありルールのプレイヤーの一人が作ったチャットルームがあって、もともとRTAを行っていたそれぞれが自然と集まった感じです。

――なんでもありって、どこまで許されているんですか?

ピロ彦 ゲームソフトのプログラムを解析したり、数あるゲーム機本体を厳選して最速の1台を探し出したり。最近ではファミリーベーシックでタイピングしてエンディングを呼び出しています。

ばくぜろ なんでもありといっても、事前に用意したセーブデータを利用してクリアするといったことは許されていません。それ以外であれば、途中でカセットを入れ替えたり、本体に電気ショックを与えたりしても大丈夫です。

――プログラムの解析など……やはり学校やお仕事でも専門的なことを?

ピロ彦 そういうわけではないですね。一応、プログラミングは学校でも勉強していましたが、どちらかというと必要にかられて身に付けたというか。15年くらい前からパソコンの仮想環境上でゲームをプレイし、スーパープレイや理論上の最速クリアをめざす動画を作っていて、その過程でプログラムも学んでいきました。

ばくぜろ 私も理系といえば理系出身というくらいで。今はシステムエンジニアとして働いていますが、それがRTAに役立ったとか、反対にRTAをやっていたからエンジニアになったとかはないですね。

ひっしー 私は全然関係なくて、ヨーヨーやけん玉、コマの製造販売を行う会社に勤めています。

20万円かけて見つけた最高の1台

――先ほどの、ゲーム機の厳選というのはなんですか?

ピロ彦 ドラクエⅢでは、特定のタイミングでファミコン本体の電源を落とし、再び電源を入れると、所持アイテムなどがめちゃくちゃになった状態で再開するというバグがあります。RTAではこのバグを使って自分に都合のいい状態を引き出してクリアをめざすのですが、起こるバグがファミコン本体によって違うんです。

ばくぜろ ファミコンどころか、ファミコンの互換機によっても異なります。最速クリアが可能なバグを引き当てられる本体を探し出す必要がありましたが、どのような結果が出るかは実際に電源をオン/オフしてみないとわからない。最速を引き当てる、本体ガチャのはじまりですね。

ひっしー 本体ガチャを繰り返した結果、私の手元には350台の機体が集まりました。

ひっしー 趣味がレトロゲームの収集で、もともとファミコンも100台近く持っていました。そんな折、ドラクエⅢのRTAに本体性能の差があることを知って、自分ならいい記録を出せる本体を持っているんじゃないかと、RTAヘの挑戦を始めたんです。ただ、残念ながら最初の100台のなかに最速を出せる本体はありませんでした。それから本体ガチャを続けて、今のエース機に落ち着くまでにおよそ半年。20万円近くかけたかな。

――20万円! ほかのかたも本体をたくさん持っているんですか?

ばくぜろ 自分は20台くらいですね。

ひっしー ばくぜろさんは幸運で、割と早い段階で理想的な本体と出会えたんですよね。早く自分も最速の1台を、と追い求めていたらいつの間にか350台になりました。でも、たった20万円で2年経った今でもあーでもない、こーでもないと検証を楽しめているので、すごいリーズナブルですよね。

「あの頃はファミコンを温めるのが生活のすべてでした」

――本体の厳選以外にも、何か研究をされていたんですか?

ピロ彦 本体温度がバグの結果に影響することが判明して、ファミコンを冷やしたり温めたりしましたね。

――ファミコンを……温める?

ばくぜろ 事の発端は私の引っ越しでした。新居に移っていつも通りにバグを起こしてみたところ、期待通りのデータが全く引き出せなくなっていたんです。

ピロ彦 最初のうちは、電気の周波数が変わったからじゃないか、変電所が違うせいじゃないかと疑っていました。

ひっしー 時系列は前後するのですが、周波数の違い自体は調べてみたんですよね。東日本と西日本で、電気の周波数が変わるじゃないですか。そこで、関東から大阪の友人に本体を送りつけて検証してもらったのですが、差異は見られなかったので関係はないみたいです。

――実際に調査したんですね!?

ひっしー 一応ですけどね。話を戻すと、実は私にも同時期に同じ現象が起きたんです。離れた場所にいる2人に同じ現象が発生した。共通する要因として考えられるのは、気温の変化ぐらいではないか。それで調べてみたら、案の定、ばくぜろさんの引越し前後で気温ががくっと下がっていたんです。

ひっしー 実際に部屋を密閉して当時の気温を再現してみると、同様のバグが起きました。

ピロ彦 検証の結果、電源のオン/オフバグでは、電源を消してつけるまでの時間とその時の温度が関係していることがわかったんです。それからは、どの時間、どの温度がバグの発生に必要なのか調査する日々でした。

ばくぜろ ピロ彦さんの本体は冷やしたほうが成功率が高いのですが、私の場合は逆でした。本体温度が低いとクリアに必須のアイテムがでないし、操作キャラも弱くなっちゃうのでクリア不可能になるっていうパターンが多かったんです。

――本体によって最適な温度が違うんですね

ひっしー 私の本体も温めタイプでした。そこで、電気毛布や膝掛けなどいろいろ試して、最終的にホットプレートを使う方法に落ち着きました。

ひっしー ただ、家庭用のホットプレートだと温度が高すぎるので、低温で動作するように改造して、そのうえで来る日も来る日も検証を重ねました。当時は生活のすべてが検証でしたね。仕事も、ホットプレートの電源をつけっぱなしにして出社して、昼休みに一旦帰って数値を調べて、また会社に戻ってのサイクルを毎日のように送っていました。今思い返しても、我ながらどうかしていたと思います。

好きだからではなく、可能性のためにできることをやるだけ

――いろいろな工夫をされているんですね

ばくぜろ 先ほども触れましたが、カセットを入れ替えてバグを起こすという技があって。カセットを素早く入れ替えるためには両手をフリーにしておかなくてはいけないんです。正直、電源ボタンに手を伸ばす時間も惜しい。そこで、アレクサとSwitchBotを利用した、リモートでファミコンを再起動できる仕組みを作ったこともあります。

ピロ彦 カセット入れ替え時のタイムロスを減らすため、2つのカセットを接着させることもしました。

ひっしー 電源オンオフのタイミングをより正確にするため、専用の電気回路を構築したこともありますね。

――プログラムコードの解析や回路の作成はなかなか難しいことかと思うのですが、そういった作業が好きというのもあるのでしょうか?

ひっしー 好きだからというよりも、必要だから習得した感じですね。このRTAはどこまで広がるんだろう、どこまで早くなるんだろうという好奇心があって、その目的を達成するために自分ができることをやっただけ。だから0.1度単位で温度が調整できて、低温でも安定して動く化学実験用のホットプレートも購入しました。

ピロ彦 「中古で1万5000円くらいするんだけど、どうしよう」と、ひっしーさんに相談されたのですが、それはさすがに知らないとしか言いようがなかったですね。

#1 0.01秒の戦い! ゲームクリアのスピードを競うRTA(リアルタイムアタック)とは
#2 「連続30時間プレイ」「同一ソフト800本保有」達人に聞くRTAの魅力
#3 102時間耐久のゲームの祭典「RTA in Japan Summer 2022」とは?
#4 星野源も「2021年で一番面白かったエンタメ」と絶賛! 筋肉で約6.7億円を動かしたRTA走者
#5 『ぷよぷよ』にドハマリしてゲーセンで出会った女性と結婚。プロぷよらーが目指すゲーム業界の未来
#6 10年やりこんで知ったRTAの怖さ…連続48時間プレイ、100回以上クリアしたゲームも
#7 ワザの練習だけで4500時間。「スーパーマリオ」にドハマリして世界で2番目の記録達成

年の瀬に130時間ぶっとおしで開催! 80以上のタイトルが集まるRTAゲーマーたちの“草オリンピック”が超人すぎる!〉へ続く

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