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あのマンガ家が進路に影響を及ぼした!? ヒットを生み続ける漫画家・甲斐谷忍のマンガ術

集英社オンライン / 2022年11月17日 17時1分

今年で画業30周年を迎える漫画家・甲斐谷忍。30年間にわたり、次々と名作を生み続けてきたその仕事は圧巻の一言。甲斐谷流マンガ術について話をうかがった。

サラリーマンになったことも、
ベストチョイスだった

――画業30周年おめでとうございます。まずは甲斐谷先生が職業としてマンガ家を意識しはじめた頃の話をお聞かせください。

小学2年の時に、友人宅でお兄さん所有の『がきデカ』(山上たつひこ)を読んで、「こういうのを生業に出来たらいいな」と思ったのが最初です。
同じぐらいの時期に、知り合いからコミックスを段ボール2箱分ぐらい貰って、ハマったのが、ちばてつや先生の『ハリスの旋風』と小山ゆう先生の『おれは直角』。
このお二方の存在は、あとあと自分の進路に影響を及ぼしてきます。



――それからマンガ家への道を一直線に?

マンガはずっと読んでいましたが、現実的にマンガ家になるのは難しいと分かってきて、小学5年の頃はアナウンサーになりたいと思っていました。そっちのほうがよっぽど難しいんですけどね(笑)。
コンピュータというものが世に出始めた中学生の頃は、プログラマーになりたいと思っていましたし、中学3年生の頃は友達とバンドを組んで、ミュージシャンになりたいとも思っていました。

――その後、地元の鹿児島大学工学部に進み、製紙会社に就職なさって。在職中にマンガ雑誌への投稿を始められたそうですね。

めちゃくちゃ居心地のいい会社でしたが、僕自身に変化がないことへの耐性がなくて。
「製紙メーカーだと多分30年後も紙を作っているんだよな」と考えた時に、モチベーションを保ち続けられるかどうか自信がなくなったんです。

――画業30周年を迎えたいま、その頃の自分に声をかけてあげられるとしたら何と言ってあげたいですか?

サラリーマンになったことも、その後の選択も、結構ベストチョイスだった気がします。ですから、余計なことを言って乱したくないかな。

30年のマンガ家生活で、
閃いたのは7回ぐらいしかない

――では、マンガ家人生を振り返って転機になったなと思うことはありますか?

手塚賞を獲ったことです。マンガ家を目指した頃の大目標は、ちばてつや先生の名を冠した賞を獲ることだったので、初投稿先は「週刊ヤングマガジン」。そこで月例賞の佳作を獲って、次はちばてつや賞を目指そうとなったのですが、30ページのうち残り2ページというところで8月31日の締め切りに間に合わなかったんです。
近い締め切りで他に出せるところはないかと探したら、1か月後が締め切りの手塚賞があって。募集が31ページで、展開が駆け足だなと思う部分を1ページ増やせるのもちょうどよく、描き直したものを投稿しました。

――その時の投稿作が、第42回手塚賞(ストーリー部門)で準入選しました。

長らくチャンピオン読者だったこともあって、「週刊少年ジャンプ」にそこまでの思い入れはなかったのですが、僕の作品を推してくださった審査員が、本宮ひろ志先生と小山ゆう先生だったんです。

――ちば先生と小山先生が進路に影響を及ぼしたというお話は、こういうことだったんですね!

はい。小山先生が推してくださるなら「ジャンプ」でお世話になろうと。

――デビュー後は、『ソムリエ』『LIAR GAME』『ONE OUTS』『小田霧響子の嘘』……そして最新作の『カモのネギには毒がある 加茂教授の人間経済学講義』(以下『カモネギ』)と、知的好奇心を刺激する作品を発表しつづけてこられました。アイデアを生み出すコツのようなものはあるのでしょうか?

僕はどこかでアイデアが閃く人だと誤解されているのですが、30年のマンガ家生活の中で、閃いたことって7回ぐらいしかないんです。
描いていることも誰でも思いつくようなことばかりで、それを何か凄いことをやっているかのように見せる努力だけは常にしている感じです。

ある大御所マンガ家の伝説にインスパイアされた神回

――では、連載を長く続ける秘訣はありますか?

長く続けることに関していえば、一番大事なのは健康だと思います。腰痛で入院したことがあるので、筋トレと水泳はずっと続けていますね。
あとマンガは1話目が全てなところがあると思っているのですが、僕は本当に1話目を作るのが下手で、「ジャンプ」で始まる作品の1話目は必ず読むようにしています。

少し前になりますが、『僕のヒーローアカデミア』はすげえなと思いました。あんなの描けないですよ。
自分的にやれることは全てやって、これは完璧だと思っているのは『太平天国演義』。ただ、出来がいいと思った作品ほど反響がないんですよね。

――ご自身の作品の中で、特に思い入れのあるエピソードはありますか?

集英社には、「ある大御所マンガ家さんが一度提出した原稿を思うところがあって全て描き直した」という伝説があって、その話が大好きなんです。
それが頭にあって、『ONE OUTS』でマリナーズ戦を描いている時、ネームを早めにあげて鹿児島に帰省したことがあるんです。

実家で荷物を整理していたら、たまたま僕が生まれた日の前日の新聞が保存してあって、その一面が当時の阪急ブレーブスが試合を放棄したってニュースだったんです。それを見た瞬間、「これだ!」と思ってすぐに編集に電話しました。そこで、一旦出したネームを全部描き直したんです。

――おぉ! 『ONE OUTS』の話が出ましたが、主人公の渡久地や『LIAR GAME』の秋山、最新作『カモネギ』の加茂教授など、先生の作品には頭の切れるキャラクターが多いイメージです。キャラクターはどうやって作ることが多いですか?

おそらくですけど、周りのマンガ家さんの作品を見ると、この人そのものだよねってキャラクターを作る人と、憧れの対象としてキャラクターを作る人に分かれると思うんです。
僕は完全に後者ですね。

マンガにおいて作画が締める割合は
全体の10%ぐらい

――知的でクールなキャラクターも、読み進めていくうちに人間的な部分が見えてくるところが素敵だなと思うのですが、そのあたりに先生の人格が滲んでいたりすることも?

うーん、どうなんでしょう。作品に込めたメッセージというのは、どうしても自分の中から出てくるものではありますが、意図したものではないというか。だから、ドラマ化はへっちゃらなんですけど、『ONE OUTS』がアニメ化した時は恥ずかしかったですね。
アニメってドラマより忠実に原作のセリフをなぞるじゃないですか。アニメを流しながらスタッフと作業したことがあるんですけど、「……消そうか」って。

――作画についてもお伺いしたいです。端正な線が印象深いですが、どうやって今の絵柄を確立されたのでしょう。

幼い頃からマンガを描いてきた訳ではなく、社会人になってからマンガ家になろうと思いたったので、絵柄は戦略的に決めました。
当時、読者として好きだった望月玲子先生と上條淳士先生と能條純一先生の絵柄を足して3で割って、人為的に作っていったんです。全然達していないんですけど、ちょっと上條先生っぽいことができたりすると嬉しいんですよね。やはり、自分が楽しくないと続きませんから。

――演出やコマ割りなどの技術はどうやって?

僕はマンガにおいて作画が締める割合は全体の10%ぐらいで、重要なのは構成だったり、演出だったりだと思っているんですね。

ですから、デビューしたての頃は、好きな先生方のコマ割りを研究しまくりました。

マンガ業界に入って30年経ち思うのは、一読者の頃は「なんとなくやれそう」と思っていたことが、「とんでもなく難しいことだ」と気づかされること。
富士山を遠くから見ている時は「大きいな」ぐらいだったのが、近づいて見上げた時に初めてめちゃくちゃデカいことに気付くみたいな。いま、それを痛感しています。

『カモのネギには毒がある』最新第3巻絶賛発売中!!

カモのネギには毒がある 3 加茂教授の人間経済学講義

著者:甲斐谷 忍 原案:夏原 武

2022年11月17日発売

715円(税込)

B6判/194ページ

ISBN:

978-4-08-892507-3

1%の経済強者と99%の弱者…「カモリズム社会」は、絶対に打倒する──!!
“実地研究”と称し様々な「奇行」をする世界的な天才経済学者・加茂洋平。大学で蔓延しつつあったマルチ商法組織「NSA」を潰滅させ、更なる上部の新型マルチ組織「起業家集団/風景」の殲滅へと動き出す。だがその「洗脳」強化された悪質な手口が浮かび上がり…。弱者を借金地獄に落とす悪徳商法を駆逐する、加茂教授の「カモリズム経済学」実践講義とは──!?

取材・文/山脇麻生 ©甲斐谷忍プロダクツ/集英社

甲斐谷忍画業30周年記念!!
レジェンド作品レビューパネル展示

ヒットメーカー・甲斐谷忍の貴重なイラスト&名作キャラ達がズラーッとお出迎え
この絶景ぜひご覧ください!!

【2022年12月中旬(予定)まで開催中】
場所:集英社神保町三丁目ビル1F

『カモのネギには毒がある』の大パネル試し読みも!!

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