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コロナ禍で騒音トラブル3割増。「隣人ガチャ」で外れを引かないコツと対策法を専門家に聞く

集英社オンライン / 2022年11月16日 13時1分

コロナ禍で在宅ワークが増えたため、騒音など隣人トラブルを訴える声が急増しているという。またせっかくマイホームを購入したものの、近所にトラブルメーカーがいて困惑する人も。引っ越してからわかる「隣人ガチャ」リスクにどう対策するか。

近隣住民同士のトラブルによる事件が後を断たない。記憶に新しいところでは、今年9月に北海道旭川市のある夫婦が男に包丁で刺されて死傷した。原因は子どもと容疑者のもめごとだったという。

「ガチャ」という当たり外れのあるカプセルトイに由来して、最近は「隣人ガチャ」というネットスラングも登場した。トラブルメーカーが住んでいる近くに引っ越してしまったときの不運、嘆きである。

トラブルは避けたいものだが、隣人を選ぶことはできない。もちろん、引っ越しする前に調べようとする人もいるだろうが、不動産屋からの情報は限られているし、自らの足で情報収集するのも一筋縄ではいかない。結果的に、引っ越してから後悔することも少なくないだろう。



そうした人たちの悩みに応えるサービスを提供するのが、「トナリスク」という会社だ。購入予定の物件について隣人や近隣住民の事前調査を行なっている。

「われわれが購入検討者を装って隣人や近隣に聞き込みしています。直接話すので、隣人のことがよくわかるし、その人が周りにどう思われているのか調査することもできます」

こう話すのは、トナリスクの松尾大史代表。もともと大手探偵会社の「MR」で取り組んでいた一事業を切り離して、2020年4月に独立した。隣人の調査やトラブル対応に特化した事業を展開する会社は珍しいという。

トナリスクの松尾大史代表(写真提供:トナリスク)

そこで松尾代表に、隣人トラブルを未然に防止するためのヒントや、トラブルが起きてしまった場合の対処法などを聞いた。

足繁く現地に通い、聞き込みを徹底

不動産購入は人生でも大きな買い物だから、「隣人ガチャ」でトラブルメーカーを引いてしまってもおいそれと簡単に引っ越せない。

トナリスクが手がける隣人調査とは、マンションや戸建て住宅などのマイホームの購入を検討する相談者に代わって、隣人の家族構成や仕事、近隣住民からの評判といった聞き込みをするもの。加えて、地域の雰囲気を調べたり、過去に近隣トラブルがあったかどうかを役所や警察に情報収集したりもする。

住民への聞き込み方法は意外にも大胆だ。

「隣の家を買おうとしている者です、とインターホンを鳴らして実際に話を聞きます。その際に、最初は地域の買い物事情など当たり障りのないことを尋ね、そこから本題に入っていきます。
例えば、相談者が子育て家庭であれば、『うちには小さい子どもがいて、うるさくするのが心配で……』といった質問をぶつけて、その反応で相手の世帯構成などを把握します。
また、『あの家は子どもの声に敏感だから気をつけたほうがいいよ』などとアドバイスをもらうこともできます。こうした対話で情報を固めていきます」

実は、聞き込みのコツは同社のYouTube「隣人トラブル予防チャンネル」などで公開している。

「ただし、全くの素人が知らない人に聞き込みをするのは、かなりしんどいと思います。そこでわれわれが代行するわけです。当然費用はかかりますが、相談者様には負担がかかることなく、情報を得られるのがメリットです」(松尾代表)

また、聞き込み調査は、平日や休日、朝晩など相手の都合に合わせる必要があるため、足繁く現地に通う必要がある。マイホームの購入検討者がそこまで時間や労力をかけるのは難しいため、トナリスクのサービスは重宝されているという。

トラブルが起きそうな家の外観

そうした隣人調査のプロから見た、引っ越し先を検討する上で注意すべきポイントをいくつか挙げてもらった。

一つは、両隣の住民同士がいがみ合っているケースである。

「家を買う土地の左隣と右隣の方に聞き込み調査をしたところ、『あいつの家の隣は絶対にやめたほうがいいよ』などとお互いがお互いの悪口を言っていました。そういった状況に挟まれた家には住みづらいでしょうから、あまりお勧めはしません」

もう一つは、家の外観だ。

「これまでの経験上、よくトラブルになっているのは、黒いカーテンをすべての部屋の窓につけて遮光している家です。当然、家の中は真っ暗ですよね。それに加えて、ドクロの人形が窓際に置いてあるなど、見た目で明らかに異様な飾りの家もありました。
あとは、ベランダがビニールシートで覆われている家も注意したほうがいいかもしれません」

大きなトラブルがなくても、依頼者の意にそぐわない場合もある。
例えば、調査で近隣住民同士の交流が活発な地域であることがわかった。だが相談者があまり周囲と関わらずに静かに生活したいタイプだった、などだ。

コロナ禍で騒音トラブルが3割以上増加

引っ越す前であれば、それらの情報を基に判断することも可能だが、既に住んでいる場合はそうはいかない。トナリスクには現に起きている隣人トラブルが持ち込まれることも多い。

中でも、「当社に寄せられる相談の大半が騒音に関するものです」と松尾代表は説明する。

実際、環境省の「騒音規制法施行状況調査」を見ても、騒音に関するトラブルは増加傾向にある。
2020年度に全国の地方公共団体が受理した騒音にかかわる苦情件数は2万804件で、前年度比の32.3%増となっている。

松尾氏は「これにはコロナ禍の影響がある」と指摘する。コロナ禍で自宅にいる時間が長くなったため、今まで聞こえなかった昼間の物音やリモートワークでの話し声が気になるという人が増えている。また夜中のYouTube配信やゲーム実況といった類の騒音も多いという。
騒音以外では、タバコの煙などの臭い(マンションの部屋の中で吸ったタバコの煙が、換気扇などから外に流れ出る)、不審者のうろつきなど、トータルで月間40件ほどの相談がある。

住民同士の勘違いがトラブルになるケースも

過去に相談された隣人トラブルの中で、松尾代表が印象的だったものを紹介してくれた。

一つは、「チラシばら撒き事件」。広告チラシがアパートの郵便ポスト付近やエントランス一帯に散乱していて、これを隣人がばら撒いているという相談がアパート住民からあった。

現地での実際の写真。大量のチラシが散乱していた(写真提供:トナリスク)

トナリスクのスタッフが状況を確認しに行くと、大量のチラシは確かにあった。しかし相談者の情報を確認するため隣人にヒアリングをすると、新たな事実が発覚した。

「相談者が隣人の郵便ポストに勝手に大量のチラシを入れていたのです。しかも他のマンションからも、わざわざチラシをかき集めてきていました。ポストを開けたときにどさどさとチラシは落ちますが、隣人は気持ち悪いから放置していただけでした」

実は、相談者が隣人に嫌がらせをしていることで、そうした事態が起きていたのである。

相談者はなぜそんな嫌がらせをしていたのか。発端は実にささいなことで、アパートの廊下の窓の開け閉めが原因だった。相談者はコロナ対策で常に換気をするため開けていたいのに、隣人が雨の日などに閉めることに腹を立てていたという。

「明らかに相談者の方が悪く、管理会社も証拠映像を持っていたので、しばらくして相談者は退去通告を受けていました」

お互いの勘違いからトラブルが勃発するケースもある。

「マンションの下の階の住民にガンガン音を鳴らされており、眠れないし、仕事も手につかずに悩んでいるという相談が来ました。実際に自宅を訪問し、1時間ほど滞在したのですが、そのときにはいっさい音が聞こえてきませんでした。今度は下の階の住民にヒアリングすると、何もやっていないのに言いがかりをつけられて困っているとのことでした」

双方の言い分などを聞いているうちに、松尾代表は「勘違い」や「思い込み」が原因だと推測する。

「家の床が軋んでパチっと音が鳴ることがありますよね。それが嫌がらせの音に聞こえてしまうことはよくあります。そうしたボタンのかけ違いから、お互いがいがみ合い、被害者にも加害者にもなってしまうのです」

当事者同士が直接対決するとケンカになりやすい

では、隣人トラブルが起きてしまった場合、どのように対処すればいいのか。松尾代表は以下のようにアドバイスする。

まずは証拠を押さえて、賃貸ならば管理会社に動いてもらうことだ。

「管理会社を動かすために、とにかく証拠を集めてくださいと言っています。何時何分に音が鳴っていて、それがどんな音なのか。できればレコーディングもして、音に関する情報をしっかりとそろえてもらいます。それを管理会社に持っていき、相談者が特定されないように、かつ相手をあまり刺激しないように、注意勧告のビラや貼り紙をお願いします」

ただし、戸建て住宅の場合だと管理会社はいない。トナリスクが代行することもあるが、もし相談者自身で行うのであれば、直接対話はしないで、匿名の丁寧な手紙を書いてポスティングするのが効果的だという。
ちょっと気になる程度の騒音であれば、この対策だけでほとんど解決するそうだ。それでも不可能であれば、引っ越しを提案することもある。

それ以上の隣人トラブルに発展してしまったら、当事者同士で解決することはほとんどないと松尾氏は断言する。

「ご自身で隣人に口頭で指摘すると、ケンカになりやすく、さらに悪化します。いきなり突撃訪問したり、警察に通報したりする人もいますが、リスクが大きいです」

隣人や近隣住民との関係性は日常生活に直結する。ストレスなく快適に暮らすためには、大ごとにならないうちに、うまく人手も借りながらトラブルを鎮火することに努めたいものだ。

取材・文/伏見学

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