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世の不条理を映し出す衝撃のバッドエンド『チャイナタウン』。“レンタル”ではなく“購入”してリピート鑑賞を

集英社オンライン / 2022年11月20日 14時1分

本業の落語のみならず、映画や音楽など幅広いカルチャーに造詣が深い21歳の落語家・桂枝之進。自身が生まれる前に公開された2001年以前の作品を“クラシック映画”と位置づけ、Z世代の視点で新たな魅力を掘り起こす。

ロマン・ポランスキー監督作『チャイナタウン』

左からモーレイ夫人を演じたフェイ・ダナウェイ、私立探偵のジェイクを演じたジャック・ニコルソン Everett Collection/アフロ

昔の作品でも見たことがなければ新作映画!

一周まわって新しく映った作品の数々をピックアップする桂枝之進クラシック映画噺、第8回となる今回は『チャイナタウン』(1974)をご紹介。

1930年代、深刻な水不足からダム建設に揺れるロサンゼルス。



私立探偵のジェイク・ギテス(ジャック・ニコルソン)のもとに、モーレイ夫人(フェイ・ダナウェイ)と名乗る人物から浮気調査の依頼がくる。

簡単な身辺調査のはずだったが、調査を続けるうちに不可解な点が増えていき、やがてロサンゼルスの水道利権を巡る巨大な闇に巻き込まれていく。

冒頭の力の抜けた様子から、徐々に社会を巻き込む闇の存在に気付いていき、ギテスの探偵魂に火がつくグラデーションは、見いてる側まで映画の世界へ導かれるよう。その設計がなんとも面白かった。

最終的に黒幕へ近づくことができるのだが、その人物は巨大な権力に守られていた。

美しさと無常さが折り重なる深い余韻

この作品が一般的な推理劇と違うのは、真相が解き明かされ、犯人がわかっても何ひとつとして問題が解決しないというところ。

ネオン煌めくチャイナタウンで巨悪と対峙するラストシーン。ここで待っているのは、救いようのない最悪のバッドエンドで思わず息を呑んだ。勧善懲悪では終わらないこの世の不条理を映し出すさまは、どこまでもリアルで皮肉に満ちているのだ。

この結末を掲げていた監督のロマン・ポランスキーと、まったく違うハッピーエンドを推奨していた脚本のロバート・タウンの間では大きな対立があったそう。

最終的に第3稿で現在の形に落ち着いたのだが、もしこれが万事解決の形なら、決して『チャイナタウン』というタイトルにはなっていなかっただろう。

主人公のギテスはこの街を見て「怠け者の街だ」と吐き捨てるのだが、このセリフを言わせるためにこの脚本を書いたのではないかと思うほどに、物語の情緒を作っている部分だと感じた。結果的に11部門でアカデミー賞にノミネートされるのだが、唯一受賞したのが脚本賞だったのも納得だ。

そんな“脚本の教科書”とも称される本作だが、嘘や偽りの多い登場人物たちにより、ストーリー展開は難解を極め、一度見ただけではすべての伏線や相関図を正確に理解するのが難しい。それでも前のめりになってしまうのは、ミステリーとしての強い求心力があるからだ。何度も見返すとおもしろいので、この作品を見るときはレンタルではなく購入をおすすめしたい。

海でひとり佇むギテスや、バーで「トムコリンズをライムで」と注文するモーレイ夫人など、絵画的な美しさを強調する“静”のシーンの数々や、1930年代を忠実に再現したというエレガントなファッションやクラシックな内装など、画作りの緻密さもこの映画の大きな見どころのひとつ。

美しさと無常さが折り重なる余韻の深い作品だった。


文/桂枝之進

『チャイナタウン』(1974)Chinatown 上映時間:2時間11分/アメリカ
ロサンゼルスの私立探偵ジェイク(ジャック・ニコルソン)は、水道局幹部モーレイの妻と名乗る女性(フェイ・ダナウェイ)から、夫の浮気調査を依頼される。身辺調査を開始したジェイクは、モーレイが浮気をしていること、そして、彼が新しいダムの建設に反対していること、町の実力者である義父のクロスと対立していることを知る。ところが、モーレイのスキャンダルはすぐに新聞に掲載され、更にモーレイ自身も何者かに殺害されてしまった。しかも最初に夫人を名乗って調査依頼してきた女は別人と判明する……。

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