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すべては「銀河鉄道999」から始まった。アニソンがヒットチャートを席巻するまで

集英社オンライン / 2022年11月19日 13時1分

昨今のヒットチャートを眺めると、アニメ関連の楽曲の多さとそれを手掛けるアーティストたちの顔ぶれの豪華さに目を見張る。かつての主人公の名前を連呼するようなアニソンが、今のようなスタイルとなるまではどんな変遷があったのだろうか。

音楽ヒットチャートに並ぶ、
ガンダム、すずめの戸締り、SPY×FAMILY、チェンソーマン

音楽配信サイト・レコチョクのデイリーシングルランキング、2022年11月14日付のラインナップを見ると、下記のように上位10曲中に7曲も、アニメ関連楽曲がランクインしていることがわかる。

2位 YOASOBI『祝福』
(TVアニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニングテーマ)
3位 RADWIMPS『すずめ (feat.十明)』


(アニメ映画「すずめの戸締まり」挿入歌)
4位 RADWIMPS『カナタハルカ』
(アニメ映画「すずめの戸締まり」主題歌)
5位 米津玄師『KICK BACK』
(TVアニメ「チェンソーマン」オープニングテーマ)
6位 yama『色彩』
(TVアニメ「SPY×FAMILY」シーズン2エンディングテーマ)
7位 BUMP OF CHICKEN『SOUVENIR』
(TVアニメ「SPY×FAMILY」シーズン2オープニングテーマ)
8位 Ado『新時代』
(NetEase Games「荒野行動×ONE PIECE FILM RED」CMソング)

YOASOBI『祝福』

11位以下にも、アニメがらみソングがずらりと並ぶ。

16位 Official髭男dism『ミックスナッツ』
(TVアニメ「SPY×FAMILY」シーズン1オープニングテーマ」)
19位 結束バンド『ギターと孤独と蒼い惑星』
(TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」劇中歌)
22位 結束バンド『青春コンプレックス』
(TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」オープニングテーマ)
24位 シュイ『君よ 気高くあれ』
(TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』エンディングテーマ)
25位 YOASOBI『The Blessing』
(TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニングテーマ)
27位 RADWIMPS『すずめの涙』
(アニメ映画「すずめの戸締まり」挿入歌)
30位 Ado『私は最強』
(アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」劇中歌)
32位 Mrs. GREEN APPLE『私は最強』
(アニメ映画「ONE PIECE FILM RED」劇中歌のセルフカバー)
33位 Aimer『残響散歌』
(TVアニメ「鬼滅の刃」遊郭編オープニングテーマ)
35位 MAISONdes『アイウエ(feat.美波/SAKURAmoti)』
(TVアニメ「うる星やつら」新作オープニングテーマ)
37位 SEKAI NO OWARI『Habit』
(映画『ホリック xxxHOLiC』の主題歌)※実写映画だが漫画原作
38位 Vaundy『CHAINSAW BLOOD』
(TVアニメ「チェンソーマン」10/12放送第1話エンディングテーマ)
46位 syudou『インザバックルーム』
(TVアニメ「チェンソーマン」11/9放送第5話エンディングテーマ)
47位 MAISONdes『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ(feat.花譜/ツミキ)』
(TVアニメ「うる星やつら」エンディングテーマ)
50位 H2O『想い出がいっぱい』
(TVアニメ「みゆき」エンディングテーマ)※H2O元メンバーが番組で歌ったことから80年代のヒット曲が急上昇中

Official髭男dism『ミックスナッツ』

トップ50曲中、アニメがらみ楽曲が実に22曲!

その状況は50位以下も続く。

51位 結束バンド『カラカラ』
(TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」エンディングテーマ)
56位 TOOBOE『錠剤』
(TVアニメ「チェンソーマン」11/2放送第4話エンディングテーマ)
57位 krage『夏の雪』
(TVアニメ「後宮の烏」エンディングテーマ)
58位 RADWIMPS『TAMAKI』
(アニメ映画「すずめの戸締まり」挿入歌)
59位 Reona『Alive』
(TVアニメ「アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE DAWN】」オープニングテーマ)、
60位 [Alexandros]『閃光』
(アニメ映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』主題歌)

TOOBOE『錠剤』

現在、アニメソングは他のどんなタイアップよりも訴求力が高いという認識が広がり、人気も知名度も当世トップクラスのビッグアーティストが起用されることが多くなっている。
その結果、ヒットチャートはアニメ関連の曲で埋め尽くされるようになっているのだ。

一流ミュージシャンの職人芸によって、
アニメの世界観を盛り上げるテーマソング

ともにこの10月にスタートしたTVアニメ、『SPY×FAMILY(シーズン2)』と『チェンソーマン』オープニングテーマの冒頭の歌詞を見てみよう。

「SPY×FAMILY」 オープニングテーマ
『SOUVENIR』
BUMP OF CHICKEN(作詞作曲・藤原基央)

“ 恐らく気付いてしまったみたい
あくびの色した毎日を
丸ごと映画の様に変える
種と仕掛けに出会えた事
仲良くなれない空の下
心はしまって鍵かけて
そんな風にどうにか生きてきた
メロディが重なった”

BUMP OF CHICKEN『SOUVENIR』

「チェンソーマン」オープニングテーマ
『KICK BACK』
米津玄師(作詞作曲・米津玄師)

“ 努力 未来 A Beautiful Star
努力 未来 A Beautiful Star
努力 未来 A Beautiful Star
努力 未来 A Beautiful Star
ランドリー今日はガラ空きでラッキーデイ
かったりい油汚れもこれでバイバイ
誰だ誰だ頭の中 呼びかける声は
あれが欲しいこれが欲しいと歌っている”

米津玄師『KICK BACK』

歌詞の断片を取り上げ、アニメの内容と照らして「あれを示唆している」「このことを言ってるに違いない」などと勝手に検証をするのは野暮なのでやらないが、どちらの曲も実に素晴らしい。
アニメのテーマソングながら登場人物の名前や行動はおろか、タイトルやシチュエーションを示唆する文言さえないのに、各作品の世界観を見事に表現している。

歌詞だけではなく曲調も、「SOUVENIR」は『SPY×FAMILY』のスタイリッシュでほのぼのしたイメージ、「KICK BACK」は『チェンソーマン』のダークでヒリヒリするようなイメージにフィーチャーするものになっているではないか。

これぞ一流ミュージシャンのなせる技。まさにこれぞ職人芸と言っていいだろう。

アニメのテーマソングが独立した楽曲としても
評価されるようになっていった経緯

テーマソングながら、歌詞になるべく直接的な表現を盛り込まず、曲の醸し出す雰囲気だけでアニメの世界観にリンクさせようといういささか難しい試みは、諸説あるが1978年放送開始のTVアニメ「銀河鉄道999」あたりから始められたのではないかと見られている。

“ 汽車は闇を抜けて 光の海へ
夢がちらばる 無限の宇宙さ
星の架け橋 渡っていこう”

“ 汽車は銀河をこえ さいはて目指す
星は宇宙の 停車駅なんだ
君を招くよ 夢の軌道が”

オープニンテーマ『銀河鉄道999』(作詞・橋本淳 作曲・平尾昌晃)は、ささきいさおと杉並児童合唱団という、従来のアニソンの王道をいくような歌い手が選ばれているし、歌詞はアニメのストーリーを婉曲ながらトレースするような内容にはなっているが、それまでの一般的なアニソンとは大きく違い、タイトルや登場人物につながる言葉を慎重に避けるとともに、主人公の目的や心意気すらも表現していない。

1979年に公開された映画版「銀河鉄道999」のために、ゴダイゴが提供した同名の主題歌も同じだ。
歌詞のサビに“The Galaxy Express 999”という言葉はあるものの、キャッチーなメロディに乗った語感の良さからオリジナル感が生まれ、たとえアニメの視聴者ではなくても楽しめる独立性の高い楽曲となっている。

「銀河鉄道999」主題歌挿入歌集

このあたりが、アニメソングのターニングポイントとなったことは間違いない。

1981年にアニメ化された「うる星やつら」のオープニングテーマ、『ラムのラブソング』(歌・松谷祐子 作詞・伊藤アキラ/小林泉美 作曲・小林泉美)も注目に値する。

“ あんまりソワソワしないで
あなたはいつでもキョロキョロ”

という歌い出しの、今でも色褪せないキュートなテクノ歌謡である。
この曲も『銀河鉄道999』の手法を踏襲し、独立した楽曲として十分に楽しめる作品に仕上がっていた。

松谷祐子『ラムのラブソング』

そして、アニメ主題歌の“イメージソング化”は80年代になるとさらに加速していく。

1983年にはTVアニメ「みゆき」のエンディングテーマだった、H2Oの『想い出がいっぱい』(作詞・阿木燿子 作曲・鈴木キサブロー)が、スマッシュヒットした。

実は、「みゆき」のオープニングテーマ『10(テン)%の雨予報』(作詞・阿木燿子 作曲・鈴木キサブロー)もH2Oの曲なのだが、エンディングの『想い出がいっぱい』と比べると、人々の記憶にあまり深く刻まれてはいない。
『10(テン)%の雨予報』もH2Oらしい流麗な良曲なのだが、サビの歌詞はオリジナルから改変され、“MIYUKI you are my angel”と、主人公の固有名詞を連呼する、言うなれば旧態依然のスタイルだった。
それよりもイメージ的だったエンディングテーマの方が支持されたのは、現代に続くアニメソングのありようを示唆する出来事だったのかもしれない。

その後は1984年の“youはshock!”なクリスタルキング『愛をとりもどせ!!』(TVアニメ「北斗の拳」オープニングテーマ 作詞・中村公晴 作曲・山下三智夫)、1985年の杏里『CAT'S EYE』(TVアニメ「CAT'S EYE」オープニングテーマ 作詞・三浦徳子 作曲・小田裕一郎)、1986年の斉藤由貴『悲しみよこんにちは』(TVアニメ「めぞん一刻」オープニングテーマ 作詞・森雪之丞 作曲・玉置浩二)、1987年の小比類巻かおる『CITY HUNTER〜愛よ消えないで〜』(TVアニメ「CITY HUNTER」オープニングテーマ 作詞・麻生圭子 作曲・大内義昭)など、アニメ作品から離れても成立する優れたJ-POPが、一流ミュージシャンから主題歌として提供されるようになっていく。

小比類巻かおる『CITY HUNTER〜愛よ消えないで〜』

1995年のTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマ、『残酷な天使のテーゼ』(歌・高橋洋子 作詞・及川眠子 作曲・佐藤英敏)によって、その路線はより確定的になるのだが、その後のことはもはやクドクドと書くまでもないだろう。

では、50年以上前のジャンプ初アニメ化作品の
テーマソングはどうだったか

さて最後に。
蛇足ではございますが。

ここは“集英社オンライン”なので、敬意を表して同社発行の漫画で初めてアニメ化された記念碑的作品、「男一匹ガキ大将」(本宮ひろ志原作「週刊少年ジャンプ」連載 1969年アニメ化)のオープニングテーマ(歌・穴倉正信 作詞・森本浩史 作曲・広瀬健次郎)の歌詞を見てみよう。

「男一匹ガキ大将 第3巻」本宮ひろ志(集英社・刊)

“ 人に出来ない デッカイことを
俺はやるんだ やりぬくぞ
人生は勝負だぜ
意地があるなら 泣きごというな
見せてやれ ど根性
男一匹ガキ大将”

あれ?
「男一匹ガキ大将」とは、男気あるガキ大将の主人公がケンカで子分を増やし、ついには日本中の不良を従える総番に登りつめて日本を動かす男となる物語で、現代の基準に照らせば、コンプラ的にすべてが間違っているような作品だ。

その世界観を端的に表現したテーマ曲を引き合いに出し、現代のアニソンとの大きな違いを示して本稿の結びにしようと思ったのだが、意外や意外。
もちろん、半世紀以上前の作品なので、表現にはいろいろとおかしなところもあるが、一つ一つの言葉を現代風に置き換えていけば、もしかしたら「ONE PIECE」や「鬼滅の刃」の世界観にもつながるのではないだろうか。

やっぱジャンプってぶれていないんだなあ、と改めて感心させられる結果となり、本稿の結論の方がブレブレになってしまったが、まあいいでしょう。

お後がよろしいようで。

文/佐藤誠二朗

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