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ネットで大不評の宮城県「孫休暇」は本当にイケてない制度なのか?

集英社オンライン / 2022年11月27日 11時1分

宮城県の村井嘉浩知事が「孫休暇」を取得し、県の職員を対象に制度化することを発表。ネット上では否定的な意見が多くあがっているが、実はすでに導入している民間企業もあり、利用者からは好評の声も多い。「孫休暇」は本当にイケてない制度なのか、考えてみたい。

「孫の誕生で休暇を取る」制度は、アリ?

宮城県の村井嘉浩知事は10月3日の定例会見で、今年9月に生まれた自身の2人目の孫の世話をすることを目的に、計3日間の「孫休暇」を取得することを発表。2023年1月から、県職員も対象とした制度として導入する方針を明らかにした。

共働き世帯の増加もあり、「祖父母も積極的に孫の育児に携わっていくことが、子育て世代のサポートにつながる」と考えてのことだそう。定年年齢の引き上げにより、在職中に孫が生まれるケースが増えることも想定した。



公務員を対象とした孫休暇の取得・導入は全国でも初めてだが、一部の民間企業では、すでに同様の制度を取り入れているところもある。

たとえば、東邦銀行(福島県)の「イクまご休暇」(2015年から)、サタケ(広島県)の「イクじい・イクばあ休暇」(2016年から)などだ。

「孫の誕生で祖父母が休暇を取る」制度は今後、広がっていくのだろうか。

「父親が休みやすくするほうが先」なのでは?

孫休暇について、ネット上では以下のような反対意見が多く見受けられた。

「祖父母よりも、父親が休みやすくするほうが先だと思う」
「制度をつくらなくても、必要に応じて有給を使えば済む話」
「独身の人や孫がいない人のための休暇もほしい」
「親(義親)がまともでない場合は迷惑でしかない」
「産後のしんどいときに、何もしない実父(義父)に来られても困る」

「子どもの父親が、確実に休暇を取得できるようにするほうが先決」という視点は確かにあるだろう。今年10月から「産後パパ育休」制度が施行されたが、休みを取りづらい男性もまだ多い。

有給休暇で事足りるのでは、という意見も一理ある。「数ヶ月単位で休む必要はないのだから、すでに付与されている休暇を充てればよい」という考え方だ。

取得対象でない人にとっては、やはり“不公平感”も拭えない。また、親子間の関係性が良好でない人にとってはむしろ不要な制度だ、という声もあがっている。

「子育てや家事にあまり関与してこなかった世代の男性が休暇を取得しても、戦力にならないのでは?」という見方もある。

「ただ孫の顔を見に行くために制度を使う人が出てくるのでは?」という声も……

「苦労を知った」。孫休暇を実際に利用した人の声

一方で、実際に民間企業で孫休暇を取得した人たちからは肯定的な声も多い。

制度を利用したある女性は、「第三子が産まれることになり、上の子たちの園への送迎や食事の支度などに人手が必要な状況だった。休暇を取得できたおかげで、娘夫婦の手助けができてよかった」と述べている。

別の男性は、「家事・育児のサポートは想像以上に大変だったが、日頃の苦労を少しでも身を以て知ることができた」という感想を持つ。また、「会社に制度があったからこそ、休むことに罪悪感を持ちにくく、ありがたかった」という女性の声もあった。

孫が生まれたときの祖父母の役割は「新生児のお世話」よりも、産後しばらくはままならない料理や洗濯・買い物などの家事、上の子の世話などを担ってもらうことのほうが実際には多く、そのほうが助けになるものだ。

「サポートしてほしい・したい」という双方の意見が合致していれば、数日間会社を休んで娘(息子)夫婦の家庭を手助けできる制度のメリットは大きい。

「上の世代が休む」ことが生む好循環

「夫が休暇を取れない」「上の子がいて里帰りは難しい」「産後の体調が優れない」などのケースではとくに、親に孫休暇を取得してもらう恩恵がありそうだ。

女性ならばまだしも、男性が取得するとなると「休みを取るだけで、結局何もせず終わるのでは?」という懸念の声はあるし、残念ながらそういう人もいるかもしれない。

その一方で、孫休暇を取得して家事・育児の手伝いを少しでも経験することで視野が広がり、その後の人生観や働き方によい影響をもたらすきっかけとなる場合もあるのではないだろうか。

孫休暇を通じて「上の世代が休む」経験をすることにより、現役の子育て中の従業員への理解が進む側面も期待できそうだ。

また、これから孫休暇が浸透すれば、子育てと仕事を両立している女性に将来孫が産まれたときには、休暇を取ってサポートしやすい風土が醸成されている可能性も高い。

孫休暇の導入で、結果として子育て世代が働きやすくなる可能性も

「孫休暇」自体が問題なのではない

この制度、独身者や子どもがいない人からすれば、「子育て世代への支援が進むなか、孫が産まれる人まで優遇するのか」「顔も知らない他人の孫のために、こちらの仕事が増えたらイヤだ」と感じ、孫休暇に反対したくなることもあるだろう。

しかし、問題の根本は「孫休暇がいいか悪いか」ではなく、特定の人ばかりに負荷がかかる・人手不足・多すぎる業務量といった「職場環境」にあるのではないだろうか。

誰かが休んでも仕事が回る体制を整えておいたり、普段から業務の効率化を進めたり、柔軟な勤務体系などが整備されていれば、孫休暇で数日不在になる従業員がいてもそこまで問題は出ないだろう。

理想的なのは、従業員全員に「特別休暇」を付与することかもしれない。有給休暇とは別に「どんな理由で使ってもよい休暇」を数日分付与すれば、孫の誕生の際に休む人がいても文句は出ないはずだ。

孫休暇が導入されるメリットは確実にある。一方で、当事者でない人たちに負担がかかるような職場環境である限り、難色を示す人はやはりいるだろう。

価値観や働き方も多様化してきた令和の時代。孫休暇の是非について考えるのも大切だが、まずは「すべての人が働きやすい職場環境や制度づくり」が進むことこそが必要といえるのではないだろうか。

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