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「後半のような戦いなら、どんな相手でも戦える」伊東純也も胸を張ったドイツ戦勝利の意義

集英社オンライン / 2022年11月26日 13時1分

W杯初戦で歴史的勝利をあげた森保ジャパン。日本代表の選手たちに大きな自信を与えたこの勝利が、単なる記録以上に意義深いものに感じられるのは、それがドイツから挙げたものであったからだ。

ドイツ戦「衝撃の番狂わせ」の意義

W杯ドイツ戦での歴史的勝利に「後半のような戦いなら、どんな相手でも戦える」と語った伊東純也

マンガ「キャプテン翼」で、主人公・大空翼の終生のライバルとして描かれる若林源三は、小学校卒業後に西ドイツ(当時)へと渡り、ハンブルガーSVに加入。彼の地で研鑽を積み、成長を遂げている。

バイエルン・ミュンヘンでもなく、ボルシア・ドルトムントでもなく、ハンブルガーSVとは若林くんもずいぶん地味な選択したものだが、ハンブルガーSVは1983年にUEFAチャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)を制し、ヨーロッパ王者にもなった名門クラブ。マンガが描かれた当時の時代背景が影響していたことは間違いない。



今でこそ、日本ではスペインのラ・リーガや、イングランドのプレミアリーグが人気だが、1980年代以前にさかのぼると、日本で最も有名なヨーロッパのリーグは、西ドイツのブンデスリーガだったのではないだろうか。

南米といえば、ブラジル。ヨーロッパといえば、西ドイツ。そんな時代が確かにあった。
キャプテン翼のなかで、翼くんがサンパウロへ、若林くんがハンブルグへと渡っていることは、その証拠だろう。

実際、日本サッカーはドイツから大きな影響を受けてきた。

「日本サッカーの父」と称されるデットマール・クラマー氏が、ドイツから来日したのは1960年のこと。4年後に控えた東京五輪へ向けた日本代表強化のため、日本サッカー協会から指導者として迎え入れられたのだ。

その後、東京五輪でベスト8、続くメキシコ五輪で銅メダルと、日本代表が右肩上がりで強くなっていくなかでクラマー氏が果たした役割は、伝説的とさえ表現していいほどに大きかった。

また、Jリーグ初代チェアマンである川淵三郎氏は、日本代表選手としてドイツへ遠征した際、「スポーツシューレ」(国内各地にある総合スポーツ施設)に広がる何面もの芝生のピッチを目の当たりにし、強い衝撃を受けたという。

地域密着を掲げ、今年30年目を迎えたJリーグの理念もまた、ドイツに学んだものだと言ってもいいのかもしれない。

W杯では日本代表初の逆転勝利


さて、少々前置きが長くなったが、日本代表の歴史的勝利である。

現在ワールドカップに出場している日本代表が、グループリーグ初戦でドイツを2-1と下すという衝撃の番狂わせを演じた。

しかも、圧倒的な劣勢が長く続くなか、先制点を許しながらの逆転勝ちは、ハラハラドキドキの試合展開も含めて極上のエンターテインメントだった。

日本代表は4年前の前回大会までにワールドカップで5勝を挙げているが、逆転勝利はこれが初めて。また、ワールドカップ優勝経験国を下すのも、初めてのことである。

とはいえ、この勝利が単なる記録以上に意義深いものに感じられるのは、それがドイツから挙げたものであったからだ。

冒頭にも記したように、日本代表は、というより、日本サッカーはドイツから多くの学びを得て、ここまで成長してきた。

そして現在、日本代表メンバー26人のなかには、キャプテンの吉田麻也をはじめ、遠藤航、鎌田大地ら、ドイツのクラブに所属する選手が8人も選ばれている。所属クラブの国別では最多の人数だ。

日本がドイツを知り、ドイツから学ぶ。その関係は、クラマー氏の来日から半世紀以上経過した今、一歩進んだ形で続いている。

ドイツ戦前日には、日本代表の森保一監督もこんなことを話している。

「日本サッカーにとって、クラマーさんは偉大な指導者。東京五輪、メキシコ五輪で日本サッカーの発展に貢献していただいた。その他にも、すばらしい指導者、選手がドイツから日本に来てくれた。ドイツのみなさんには感謝を申し上げたい。

ワールドカップでチャンピオンになったことのあるドイツは、常に学びの手本となる存在だった。それは今も変わらない。ドイツから学びながら、日本らしく、日本のよさを持って、世界に追いつき追い越せで戦っている。明日の試合も今のベストをぶつけられるよう、戦いに挑めればと思う」

「師」への感謝を込めた恩返し

試合は前半からドイツが主導権を握る形で進んでいた。防戦一方の日本は、我慢の展開を長く強いられた。

「(ドイツを)リスペクトしすぎた」

本来は攻撃が持ち味の選手ながら、守備に追われた伊東純也は、前半の戦いをそう振り返る。
だが、日本はどうにか前半を1失点でしのぐと、後半なかばからは怒涛の反撃。判官びいきで盛り上がる声援にも背中を押され、粘る日本は試合終盤に2点を奪って試合をひっくり返した。

「後半のような戦いなら、どんな相手でも戦える」

伊東はそう語り、胸を張った。

ドイツから学びながら、日本らしく、日本のよさを持って、世界に追いつき、追い越せ――。
まさに指揮官の言葉を体現するかのような勝利は、長年教えを受けた師への感謝を込めた恩返しにもなったはずだ。

7年前に亡くなったクラマー氏も、きっと喜んでくれているに違いない。

取材・文/浅田真樹 写真/AFLO

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