この年の上半期(1~6月号)の表紙、下半期と比べてみると、おや?と思われないだろうか。極端なアップにトリミングした写真、Rだけを白抜きにしたロゴ。見出しの文字は小さく、数も抑え気味だ。どうやらこの時期、「ロードショー」はクオリティマガジン風を狙ってみたらしい。大人の読者獲得を試みたのだろうか。
しかし…はかばかしい成果は上がらなかったのか、7月号からはこれまでどおり、アイドル風ポートレートににぎやかな惹句が躍る表紙に戻っている。
それもそのはず、1993年は子供観客が熱狂した『ジュラシック・パーク』(1993)の年だ。マイクル・クライトンの原作をもとに、ヒットメーカーのスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した同作は、リアルすぎる恐竜が世界中の観客の度肝を抜いた。
それまでは一部でしか使われることがなかったコンピューター・グラフィックスが、ハリウッド映画に欠かせないツールになったのもこの作品がきっかけである。
もっとも、『ジュラシック・パーク』に登場する大部分の恐竜はアニマトロニクスを使用しており、CGを使用したシーンは全体のうち7分程度しかない。あれから30年近く経過し、テクノロジーが飛躍的な進歩を遂げたにもかかわらず、同作の恐竜がそれほど古びて見えないのは、こうした工夫の賜物といえる。