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過去最高売上982憶円に。「ザ・ノース・フェイス」を運営するゴールドウインが恵比寿に展開する関東最大級の体験型店舗の展望とは

集英社オンライン / 2022年12月3日 13時1分

看板ブランド「THE NORTH FACE」(ザ・ノース・フェイス、以下ノースフェイス)で知られるスポーツアパレルメーカー大手の「GOLDWIN(ゴールドウイン)」は2022年3月期の連結業績では過去最高の売上高982億円を記録し、さらに2022年4月~9月期の第2四半期でも売上高は過去最高の453億円(前年対比118.6%)を計上した。業績絶好調の理由や新業態出店の狙いについて、常務取締役事業本部長を務める森光氏に話を聞いた。

「ブランドを陳腐化させない」ことで信頼感を醸成

2022年11月、ノースフェイスはキャンプ特化型の新業態「THE NORTH FACE CAMP」を東京・恵比寿にある複合商業施設・恵比寿ガーデンプレイスに出店させた。同店含め、GOLDWINの体験型店舗3店も同時オープンし、全体で総売場面積300坪を誇る関東最大規模となっている。


「THE NORTH FACE CAMP」@恵比寿ガーデンプレイス

勢いが衰えることなく、同社が見事な躍進を続けている理由を森氏に伺うと、「インバウンド需要がなくなった代わりに国内需要が伸長し、さらにはアウトドア全般の人口が増えたことが大きな要因のひとつに挙げられる」と話す。

「コロナ禍以降、キャンプブームの隆盛もさることながら、あらゆるアウトドア活動に関わる人々が増え、我々が提供するアウトドア用品や関連商品のニーズがより高まったのが、堅調にビジネスを維持できている理由だと考えています」

加えて、同社の堅調なビジネスを下支えするノースフェイスのブランドの安心感やロゴに対する信頼感の強さも、事業成長を促進する一因となっている。

「老若男女問わず、多くのお客様がノースフェイスのロゴを見たときに想起するブランドの価値や信頼性の高さも、好調の理由に挙げられます。ただ、我々が常に大事にしているのは『ブランドを陳腐化させない』ことです。

山登りに何度となく挑戦する登山家やさまざまなキャンプ場に通うキャンパー、あるいはトレンドに敏感なファッションラバーなど、コアなユーザーからも『ノースフェイスっていいもの作っているよね。かっこいいよね』と言ってもらえるよう、信念を持って商品の企画・開発していくことを忘れないよう心がけています」

キャンプ特化の大型店舗を恵比寿に出した理由

ゴールドウインが11月に恵比寿にオープンした体験型店舗3店は、関東最大規模となる300坪の売り場面積を有しており、中でも快進撃を続けるノースフェイスの新業態「THE NORTH FACE CAMP」は、取り扱うキャンプギアの数も展開している店舗の中で最大級の品揃えを誇っている。

ノースフェイスの商品に加えて、外部仕入れのキャンプ用品も充実している

同店舗を出店させた狙いには「ノースフェイスが提案するキャンプの世界観や、実際にテントを張る体験を通じて販売訴求することで、キャンプ領域の拡大を図るため」と森氏は語る。

「ノースフェイスにおけるキャンプギアは、今でこそブームも相まって注目されるようになりましたが、従前はそこまでたくさん売れるものではありませんでした。キャンプギアの中でも主力商品の一角を担う球体型ドームテント『ジオドーム4』は、日本企画の商品として2018年から発売したのです。球体というデザイン性のみならず、風に強い構造や耐久性の高さ、持ち運びしやすい設計などの高い機能性が特徴的でした。コロナ禍でキャンプ需要が高まり、ノースフェイスのキャンプ用品全体へのニーズが高まったのだと思います」

『ジオドーム4』は居住空間としての快適性も考慮して設計されている

「こうした主力商品のテントに加え、キャンプライフを送る上で最適な寝袋や椅子などのアウトドアファニチャーの拡張性を意識したキャンプ特化型の店舗を構えることで、ノースフェイスの提案するキャンプの楽しさや魅力を伝えていきたい。そのような思いから、THE NORTH FACE CAMPの出店に至りました」(森氏)

恵比寿ガーデンプレイス周辺には、レジデンス型のマンションや住宅が立ち並び、ファミリー層が多く住まうエリアだ。

また、ノースフェイスの路面店が点在する原宿・渋谷エリアにも隣接し、近距離商圏を意識した店舗を展開し、ファミリーユースやキャンプラバーを取り込む出店戦略と言えるだろう。

ノースフェイス以外のブランドも出店。相乗効果を狙う

他店舗との違いや商品ラインナップで意識している点については「キャンプビギナーからコアなキャンパーまで、幅広い客層のニーズに応えられるようなキャンプギアやアクセサリーなどを取り揃えている」と森氏は説明する。

「ノースフェイスのテントやタープ、椅子などのキャンプギアはもちろん、焚き火台やランタン、食器、ソーラーバッテリーなど他ブランドの仕入れ商品も展開することで、『人々の冒険を後押しする』というノースフェイス提唱のキャンプスタイルをお客様に体験いただけるよう意識しています。そして空間演出にもこだわっており、アメリカのキャンプ場を彷彿とさせるキャンプトレーラーを配し、リアルなキャンプシーンを想像できるような空間づくりを行うことで、ブランドの世界観を感じていただけるように工夫を凝らしています」

広大な売り場面積が実際のキャンプの開放感を具現化している

さらには、商品購入前にスタッフのレクチャーのもと、テント・タープの設営体験や有料レンタルすることも可能となっており、キャンプエントリー層に向けた手堅いサービスを充実させている。

こうした取り組みはGOLDWINが目指す“体験型ビジネス”を踏襲しており、キャンプの楽しさを「言葉」ではなく「感覚」で理解してもらう上で、非常に重要なことだ。

だからこそ、ノースフェイスの業容拡大に特化せず、キッズ商品を横断的に扱う新業態「PLAY EARTH KIDS」や心身のコンディションを整えるアクティブウェア等を扱う「NEUTRALWORKS.」を同時にオープンさせ、3つのブランドが相乗効果を発揮するシームレスな空間を創造したのだろう。

購買層の違う別ブランドも展開している

「ノースフェイスだけだと、訴求できるお客様が限定されてしまうため、展開するブランドの選択肢を増やすことで、多種多様なお客様にお店へ来ていただけるように留意しました。ザ・ノース・フェイス キャンプは男性のお客様が多く、PLAY EARTH KIDSはファミリー/子供向け、そしてNEUTRALWORKS.は女性のファンが多く、それぞれ趣向の異なる商品を販売していくことにより、ライフスタイルの多様化に対応していきたいと考えています」

企業価値を高めるために注力する「コト事業」

また、生活者の消費志向が「モノ」から「コト」へとシフトしているなか、GOLDWINとしても企業価値を高めるべく、コト事業にも注力していくそうだ。

「多角化経営を目指すわけではありませんが、今の時代は単にモノを売っているだけでは支持されません。このブランドはどんな理念や考えを持ってものづくりをしているのか、ブランドとして社会課題をどのように解決していくのか。といった企業の姿勢が問われていると感じています。

当社では 「PLAY EARTH」(地球と遊ぶ)というコンセプトを掲げ、国立公園のツアーや自然観察、環境保全イベントの開催など、自然との関わり合いを深めるコト体験をこれまでも提供してきました。恵比寿ガーデンプレイスの店舗では、『PLAY EARTH ADVENTURE』という新たなコンシェルジュサービスを設け、さらにコト体験の充実を図っていければと思っています」

森氏は今後の展望について、「弊社のブランドをより強化し、新たなマーケティングや提案を通して、事業成長につなげていきたい」とし、次のように抱負を語った。

「ノースフェイスで言えば、ユーザーの裾野が広まり、認知度が高まっているとはいえ、まだまだリーチできていないお客様も多いと感じています。キャンプギアも拡張しつつ、ノースフェイスとしてやる理由が明確にできるものであれば、新しい提案を積極的に取り入れながら、ブランドの成長に寄与していきたいです」

取材・文/古田島大介 写真提供/ゴールドウイン

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