1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

高橋留美子が「大胆に変えてもいいよ」と後押し。令和版アニメ『うる星やつら』のこだわりとは

集英社オンライン / 2022年12月6日 17時1分

2022年10月13日(木)より、フジテレビ系の深夜アニメ放送枠“ノイタミナ”で放送開始したTVアニメ『うる星やつら』。令和の今、再びアニメ化するにあたって意識したことや、4クールという放送期間に挑んだ理由とは。

漫画家・高橋留美子のデビュー作『うる星やつら』。1981年から約5年間にわたり放送された同作の初代アニメシリーズは、昭和後期のマンガ・アニメ文化に多大なる影響を与えた作品の1つだ。そんな『うる星やつら』が令和の今、再びアニメ化されるに至ったのはなぜなのか。

放送中のTVアニメ『うる星やつら』のアニメ化立ち上げに携わった尾崎紀子氏と『うる星やつら』アニメ化時点での担当編集者・森脇健人氏(小学館)、現在の担当編集者・岡本吏莉氏(小学館)に制作の裏側を聞いた。


©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

ラムちゃんは知っているけど
『うる星やつら』は知らない人におもしろさを

――『うる星やつら』の完全新作アニメ化が決まった経緯を教えてください。

尾崎紀子(以下、尾崎) 小学館100周年という節目のタイミングが重なったことで実現しました。2019年の春先に「『うる星やつら』をアニメ化するチャンスがあるけど、どうしますか?」と、フジテレビのアニメ制作部に話がありました。

――アニメ化が決まった当時の担当編集者・森脇さんは、それを聞いてどう思いましたか?

森脇健人(以下、森脇) ラムちゃんを知っている人は、世代を問わずたくさんいます。一方で『うる星やつら』という、作品そのもののおもしろさを知らない人が多いことにモヤモヤを感じていたんです。だから「こんなおもしろい作品を、再度アニメ化でできるなんて!」と嬉しかったです。

――高橋先生は、どう反応されてらっしゃいましたか?

森脇 すごく大騒ぎするわけでもなく、静かに喜んでいたように見えましたね。これまでに数々の作品が映像化されてきた方だからか、ホームランを打っても三振でも平常心を保っているイチローのようだなと。一流の方は違うなと思いました(笑)。

岡本吏莉(以下、岡本) 私はアニメの制作が進んでいる途中で先生の担当編集を森脇から受け継いだのですが、高橋先生はスタッフ・キャスト陣が決まっていくたびに「素晴らしい!」と喜んでました。「キャストさんも言うことないし、主題歌もテンポがよくていい。最高です」と。

©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

「大胆に変えていい」
高橋留美子の一言に込められた思い

――昭和の作品を今の時代に合わせて表現する必要もあったかと思います。その上で意識したことはありますか?

森脇 高橋先生は「アニメ化するなら若い子たちに見てほしい」と強く思っていたようで「今の人たちにおもしろいと思ってもらえるなら、大胆に変えてもいいよ」とおっしゃっていました。いい意味で原作準拠の昭和テイストなものにしてもいいし、今の放送倫理に則っていないシーンはどんどん変えてもいいと。

尾崎 そうおっしゃっていただいたのは、本当にありがたかったです。シナリオ化する上で、今の視聴者が笑えないような表現は工夫すべきだと考えました。初代の放送終了から約35年経って、昔はギャグとして扱えていたことが、今の社会常識に即していなかったり、海外の視聴者が冷ややかに感じてしまう可能性もあると思ったからです。

とはいえ、行動原理を変えてキャラクターの個性が失われるのはもったいない。だから、着地点は変えずに経緯を変えたり、流れで見たら気づかれないくらいに細かい変更を加えながら、どんな人が見ても楽しめるような形にすることを全話通じて意識しています。

森脇 キャラクター1人とっても、すごく気を遣っていただいてますよね。特にラムちゃんに関しては、高橋先生が連載当初から保ち続けていた“かわいくて上品”なラインを汲み取った上で、キュートでポップな今っぽさを加えて仕上げていただけたと喜んでおられました。

©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

「いつもとは違う」特別感を演出するための宣伝手法

――近年のTVアニメシリーズでは、珍しい4クールという放送期間に決めた理由はなぜですか?

尾崎 周年企画に当てるなら一気にドーンとやりたいと思いました。でも全部をアニメ化するのには何年もかかってしまうし、連載中のアニメ化ではないアドバンテージもあるということで、4クールでの傑作選にすることに決めたんです。

――とはいえ、一気に4クールではなく分割4クール(2022年10月〜2023年3月で2クール放送)の形を取っていますよね。2クール放送後に「第2期放送決定」と打ち出すこともできたと思うのですが、最初に「4クールやります!」と言い切ったのにはどんな意図があったのでしょうか。

尾崎 「周年記念のお祭りは永遠ではありません。だからこそ気合いを入れて楽しいものにするよ! スタンバイしておいてね!」という決意表明です。これは「寅年」であるご縁もあって元旦にアニメ化決定を解禁したことや、前もって第1クールに放送する全サブタイトルが載ったティザー動画をアップしたことなどにも言えるのですが、とにかく普段とは違うことをしたかったんです。

――2022年1月1日付けの産経新聞に掲載された全面広告は大きな話題になりましたよね。

尾崎 髙橋先生の新作「M A O」の連載中である『週刊少年サンデー』での解禁という選択もあった中、小学館さんから了承をいただけてありがたかったです。

森脇 最近は印刷所に回して配本する段階で、ネット上にリーク情報がアップされることもあり、本誌での宣伝手法をあまり取らないようにしているんです。なので、新聞での情報解禁は全く問題なかったですね。

尾崎 新聞での情報解禁もそうですが(キャラクターデザインを担当している)浅野直之さん描き下ろしのキャラクターイラストとキャスト写真のリンクビジュアルへの反響も大きかったです。Twitterフォロワー数も想定の倍以上を獲得することができました。しのぶと面堂ら他キャラクターのリンクビジュアルを追加したのも、この反響の大きさが後押ししました。

――一方、初代アニメシリーズであたる役を演じた古川登志夫さん(今作はあたる父役)、ラム役の平野 文さん(今作はラム母役)の出演は、アニメ放送開始の直前に解禁したのは、なぜでしょう?

尾崎 アニメ化決定の発表をした段階で、様々なキャスト予想の声などが出てくるよりは、あたるとラムのキャスト発表は解禁と同日にしました。それだけ製作陣は新キャストのお二人を自信を持って紹介できると思っていました。
実は、このタイミングで古川さん、平野さんのご出演もご承諾頂いていたのですが、そちらについてはメインの新キャストが出揃ってた後の更なる嬉しいサプライズとして、後日発表することにしました。

アニメ作品の仕事を新規でお受けすることがあまり多くない戸田(恵子、あたる母役)さんが「『うる星やつら』なら」と髙橋(秀弥)監督のオファーを承諾してくださったこともあり、豪華すぎるあたるとラムの父母のキャスト4名は一気に発表することにしました。

――最後に、注目してほしいポイントを教えてください。

森脇 キャラクターがとても魅力的なところですかね。特にあたるがカッコいいんですよ。原作だとスケベで軽薄、タフでおもしろいやつですけど、アニメで見たら「こいつカッコいい」と再発見できるようにリブートされていると思います。神谷さんの声も絶妙で……感動しました。
余談ですが、高橋先生の描くキャラで一番バレンタインにチョコをもらったのは犬夜叉でも殺生丸でもなく、あたるなんだそうですよ。

一同 意外!(笑)

岡本 言われてみれば、作中でもなんだかんだモテていますしね(笑)。ちなみに高橋先生も「アニメのあたるはすごくハンサムだ」とおっしゃっていたので、原作とは、また違う魅力があるのかもしれません。

©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

尾崎 監督陣は、あたるに対して「ネガキャンにならない程度にどこまで表現するか」とご苦労されていました。でも苦労するということは主役の証ですから。高橋先生も「主人公なんだから、いろんな災難を食らいなさい」とおっしゃっていましたし(笑)。

岡本 あたるがカッコいいのはもちろん、動くラムちゃんは最強にかわいいなと思いました。クルクル回っているシーンなんて、何度も巻き戻して見たくなります(笑)。髪の毛のグラデーションもアニメならではだなと。

尾崎 原作のラムちゃんの髪色が固定の1色で塗られているわけではなかったので、新アニメ化でどう表現できるかは、何回もトライアンドエラーをされていたそうで、岡本さんのコメントは監督やスタッフのみなさんとても喜ばれると思います。

©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

森脇 アニメを見てキャラクターの魅力を再発見できる部分がすごく多いので、ぜひ注目して見てもらえたらと思います。

岡本 それから今作を見て『うる星やつら』のおもしろさが、今の時代でも通じるということを改めてすごいなと思いました。ラブコメという普遍的な題材の強さでもあると思いますが、今、世に出ているラブコメ作品とは違う関係性が描かれているのが『うる星やつら』なんですよね。
今作をキッカケに改めてあたるとラムの関係性を振り返ってもらいながら、新規の方たちに1周まわった新しいラブコメの形を知ってほしいです。

©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

©高橋留美子・小学館/アニメ「うる星やつら」製作委員会

取材・文/阿部裕華

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください