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世界でたった8カ所。クルーたちの憧れの地・マクドナルド「ハンバーガー大学」の講義を受けてみた

集英社オンライン / 2022年12月7日 12時1分

マクドナルドが運営する教育機関「ハンバーガー大学」。ここでは人材育成を目的に、日々さまざまなカリキュラムが開講されている。そこではどのようなことが教えられているのか、実際に講義を体験してみた。

マクドナルドの「教育の場」

東京・新宿にあるビルの38階。そこには、よく知るテーブルとイス、内装デザインが一式用意されている。ここはマクドナルドの最新の店舗を再現した場所で、「ハンバーガー大学」のコミュニケーションスペースだ。

ハンバーガー大学とは、世界的ハンバーガーチェーンのマクドナルドが設置する、企業内大学のこと。ただし、単なる企業の研修施設とは一線を画する、クルーたちの「憧れの場」だという。

謎に包まれたここ、ハンバーガー大学では、どんなカリキュラムが提供されているのか。今回は同大学に潜入、マネージャーの吉田真友子さんに話を聞き、授業の一部を体験させてもらった。


ハンバーガー大学内に設置されたコミュニケーションスペース

クルーたちが「憧れる」ワケ

今やマクドナルドの店舗は、世界約100カ国以上に展開されている。そして、店舗運営に必要なトレーニングセンターは各国に存在している。しかし、ハンバーガー大学は世界でたった8カ国にしかない。そして、その一つが東京にある。

ハンバーガー大学があるのはシカゴの本部キャンパスに加えて、ロンドン、シドニー、ミュンヘン、サンパウロ、ヨハネスブルク、上海、東京。ハンバーガー大学がない国の従業員は、近隣の存在する国に行って学ぶ。

ハンバーガー大学には、主に店長候補や店長、コンサルタント、マネージャーなどが学びにやってくる。

ハンバーガー大学のキャンパス

ハンバーガー大学は授業だけはなく、マクドナルドの理念を伝える学習ツールなども開発しており、それゆえここはクルーたち(従業員含む)の憧れの場だという。

ちなみに日本のハンバーガー大学の歴史はこの8カ国の中でも古く、日本にマクドナルドの第一号店がオープンした1971年7月よりも1カ月ほど早い同6月に開校している。現在は社会情勢に合わせて、授業のオンライン化も進んでいるそうだ。

日本では1971年に開校。当時は日本マクドナルド創業者の藤田田氏によって直接講義されていた

「私たちはブランドの使命として『美味しさとFeel-Goodなモーメントを、いつでもどこでもすべての人に』を掲げています。これが全クルーに浸透し、再現することができるようになることが、ハンバーガー大学の目標です」(吉田さん)

講師は学長、吉田さんを含めて10人。吉田さんは新卒で入社してから複数店舗で経験をつみ、店長を就任後ハンバーガー大学に異動。その後、営業部門で複数店舗のコンサルティングやフランチャイズオーナーのビジネスサポートを経験。再びハンバーガー大学へ戻り、今に至るという。

日本マクドナルド・ハンバーガー大学マネージャーの吉田真友子さん

競い合うように手が挙がる

ハンバーガー大学で学ぶのは、基本的に飲食店の経営方法とリーダーシップについてだが、各クルーのレイヤー(≒職位)に合わせて、複数のクラスが用意されている。

たとえば、リーダーとしてのマインドセットやモチベーション維持、部下へのフィードバックやコーチング、タスク委譲の方法について学ぶクラスや、コーチングが難しい場合のカウンセリングの方法や、店舗オペレーションの概要を学ぶクラスもある。

またリーダーシッププレゼンスの増し方、リーダーとしての感情のマネジメント、また店長を対象に「偉大な飲食店を導く者」としてのコーチングや、店舗ビジョンの設定へとステップアップしていく。

今回は特別に、クラスを1つ体験させてもらった。

従来はハンバーガー大学内にある講義ルームにて対面で開かれていたが、現時点ではすべてオンラインに。店長候補たちが集められ、グループディスカッションでマネジメントを学ぶ。ビデオ会議ツールの名前の横にはそれぞれの店舗が添えられ、その地名は関東以外にも、北海道や岐阜などさまざまだ。

現在はビデオ会議ツールを使ってオンラインで受講する

講義中、「◯◯についてどう思いますか?」と講師がクエスチョンを投げかけると、受講者たちから競い合うように手が挙がる。一般的な企業研修とは、熱気がまるで違う…!

そんな中、「部下からマネジメントについて相談される」というテーマの模擬1on1で、印象的な場面があった。

一見、和やかに部下役の相手から悩みを聞き出しているように見えた上司役。そんな場面を見て、吉田さんがポツリと「あ、もっと部下役の方が話したくなるように、上司役が傾聴できるといいですね」とつぶやいた。

補足すると、この授業では、部下役の悩みへの解決策を、部下役自身に考えさせ、部下役から引き出すことを学んでいたのだが、上司役はリードが上手だったゆえに、自ら解決策を示してしまったのだ。

ここは大学。当然、ハッとさせられる学びがあるということだ。

まるで「甲子園」のAJCC

各種カリキュラムだけでなく、ハンバーガー大学が開催する「ALL JAPAN CREW CONTEST」(以下、AJCC)も、ハンバーガー大学を憧れの場たらしめる取り組みの一つだ。

AJCCは、日本マクドナルドが1977年から開催している技能コンテスト。約20万人の店舗クルー(アルバイトが対象)の技術とサービスの向上、モチベーションの向上を図るために開催されている。

年に一度開催されるマクドナルドの技能コンテスト「ALL JAPAN CREW CONTEST」

競い合うのは「アッセンブラー」「ポテトパーソン」「デリバリーオーダーテイカー」「グリルストッカー」などの種目。かいつまんで説明すれば、たとえば「いかに美しいハンバーガーを作るか」といったポイントで審査される。

クルーの所属店舗で行われる「店内戦」を経て、「法人/直営ミニマーケット戦」「ミニブロック戦」「地区本部代表戦」「全国戦」と転戦。全国戦では約50名程度で競い合い、日本の頂点を決定することになる。

2021年は限定公開のYouTubeライブで授賞式が行われた。その様子を特別に視聴させてもらうと、ノミネートされたクルーがそれぞれ、各店舗の控室などで待機。背景にはまるで甲子園出場校を応援するかのような飾り付けがなされ、祈るように発表を待つ姿があった。

優勝者が発表されると、画面外から店舗の仲間が飛び込んできて抱き合って喜ぶ。甲子園にたとえたことが言い過ぎではないくらい、店舗やクルーにとっては人生の一大イベントであることが窺えた。

これは前述したようにアルバイト向けのイベントだが、まさに吉田さんが言うように、ブランドの使命を、アルバイトを含む全クルーに浸透させるための試みであるとも言える。

日本では、年間約1.5万人がハンバーガー大学のコースを受講しているそう。世界中の誰もが知るメガブランドは、このような異例の規模といえる従業員教育機関により、長く維持されているのだ。

キャンバス内に設置されたタブレットでは、店舗レジの操作や商品の調理手順などが学べる

文/あまのなお

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