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恩師だけが知る“三笘伝説”。「8歳で『ゲーゲンプレス』を実行していた」<4人のW杯戦士を輩出した「さぎぬまSC」代表の回想録>

集英社オンライン / 2022年12月1日 12時1分

カタールW杯日本代表にもっとも多くの選手を送り出したサッカー少年団が、神奈川県川崎市に存在する。その名も「さぎぬまSC」。17期生の権田修一、25期生の板倉滉、26期生の三笘薫、27期生の田中碧を輩出した同クラブ代表の澤田秀治氏に、少年時代の彼らの秘話を語ってもらった。本記事では三笘薫(ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC)編をお届けする。

小2の春に見せた、“華麗なる攻守の切り替え”

「今から17年前も前に、現代サッカーの基本となるようなプレーを小学2年生が見せていた」と聞いて、信じられる人が果たしてどれだけいるだろうか?

三笘は、8歳のときにすでに「ゲーゲンプレッシング」を見せていた――。



そんな伝説がさぎぬまSCには残っている。なお、「ゲーゲンプレッシング」はドイツ語で、英語では「カウンタープレッシング」と訳される。守備に転じたあと、相手からボールを奪い返して再び攻撃に移るために“即座に”プレスをかける動きを指す。現代サッカーでは基本となるアクションだ。

しかし、小学生のサッカーを描写する際に「団子サッカー」という言葉がしばしば用いられることからもわかるように、この年代ではみんながボールの周りに集まってしまうことが多い。小学校低学年の子であれば、その傾向はなおさら強いのだが……。

三笘の「ゲーゲンプレッシング伝説」は本当なのだろうか? 今から17年も前のことなのに、さぎぬまSCの澤田代表はハッキリと覚えている。

「あれは薫が小学2年生のとき、川崎市の春季サッカー大会という公式戦の準決勝でした。当時のチームには薫と同じくらい上手なFWの選手がいました。多くの試合では、そのFWの子がドリブルで持ち込んでいってゴールを決め、それでチームも勝ち上がっていくようなかたちでした。

そのため、薫はそのFWの子がドリブルで持ち上がっていく3mから5mくらい後ろにつくようにしていたのです。そして、そのFWの子がボールを奪われたら、薫が相手からボールを奪い返しに行き、そこから一気にシュートまで持っていく。逆に、そこですぐに奪い返せないとわかったら、今度はいち早く自陣に戻って、守りだしていたんですよ」

WBを難なくこなす“サッカーIQ”の高さ

三笘は、日本代表きっての理論派として知られている。川崎フロンターレのU-18に所属していた高校3年生のときにプロへの昇格を打診されたのだが、当時はプロでやっていくだけの実力はついていないと自ら判断し、筑波大学へ進学した経歴の持ち主だ。それは当時でも異例と言える決断だった。

ただ、大学でしっかりと力をつけて、古巣の川崎フロンターレにプロ選手として舞い戻ると、大活躍して日本代表に上り詰めた。なお、大学時代に書いた卒業論文のタイトルは「サッカーの1対1場面における攻撃側の情報処理に関する研究」だという。
日本サッカー界を振り返ってみると、ドリブルが上手な選手といえば、天性の才能に恵まれているタイプや感覚派と言われる選手が多かった。

しかし、三笘は違う。昨シーズンはベルギーで、今シーズンはイングランドで活躍しているが、世界で通用するドリブラーとして認められつつあるのは、三笘が感覚だけに頼るのではなく、脳を使ってプレーをできるからだろう。自分の能力を冷静に分析し、(ときにはそれを言語化することで)課題を理解して、自らのプレーに反映することのできる理論派なのだ。

もっとも、冷静にチーム力を分析して、自分に必要なプレーがどのようなものかを考え、実行に移す小学生など普通ではない。澤田代表が断言する。

「当時の薫をみて、『小学2年生でこんなことができる子なんて、今までいなかったよね!』と我々は驚いていました。ものすごくドリブルが上手い子にはたくさん出会いましたけど、攻守の切り替えの重要性をあの年齢で理解し、ボールを奪われたらすぐに奪い返しにいくような子など見たことがありませんでした。とても冷静に状況判断できていたということでしょうし、そういう意味で、彼はあの頃から本当にすごい子でしたね」

歴史的勝利をあげたドイツ戦で、日本代表では初めてWBのポジションを任されながらもしっかりと結果を残せたのは、小学生にしてゲーゲンプレッシングを実行できた“サッカーIQ”の高さと無関係ではなかったのだ。


取材・文/ミムラユウスケ 写真/Getty Images

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