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〈オレオレ詐欺消防士(23)が逮捕〉災害弱者救済用の名簿を悪用? 中野区長を激怒させたのは、祖父思いの元高校球児だった

集英社オンライン / 2022年12月6日 17時56分

特殊詐欺グループの「受け子」として、高齢女性から現金やキャッシュカードをだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕された消防士が、役所から提供を受けた災害弱者救済用の名簿を悪用してターゲットを絞り込んでいた可能性があることが「集英社オンライン」の取材でわかった。

この“火消し”、消火活動どころか不祥事の火に油を注いでしまったようで、その炎は広がるばかりだ。

石神井警察署

「大炎上」の火元は東京消防庁野方消防署(中野区)。同署の消防士、一戸赳児(いちのへ・きゅうじ)容疑者(23)が先月24日、警視庁石神井署に詐欺容疑で逮捕された。
事件の概要は、詐欺グループが今年8月、何者かと共謀し練馬区の80代女性宅に電話し、女性の弟になりすますなどして「仕事で失敗して会社に損失が出た。至急400万円必要だ」と言葉巧みに誘導、現金110万円とキャッシュカード2枚をだまし取った疑い。一戸容疑者は「弟の同僚の息子」を装い、練馬区内の路上で女性と待ち合わせし、現金などを受け取る「受け子」役だった。調べに対し、「SNS(ネット交流サービス)の書き込みを見て応募した。報酬がほしかった」と容疑を認めているという。



ところが、家宅捜索時に一戸容疑者の自宅から、中野区が消防署に提供した「見守り対象者名簿」が見つかった。一戸容疑者から詐欺グループに名簿が渡っている可能性もあり、同区と消防庁は6日午前、「消防署による個人情報の漏洩に伴う特殊詐欺の注意喚起」を急きょ発表した。

中野区HPより

消防関係者によるとこの名簿は、要介護支援認定や精神障害者手帳の交付を受けている人などの社会的弱者を対象にした個人情報を満載した名簿で、災害時の救助に役立てる目的で消防に任意で提供していたもの。

関係者は取材に対し、「火災時などに迅速に対応ができるように作られたもので、実際にこれまでも効果を上げてきた。特に火災の増える冬季は有効で、中野区はこの取り組みを早くから行ってきたことが自慢だっただけに、余計に悔しい。区長も身内から弓を打たれた気分で激怒している」と肩をおとした。

祖母は記者の問いかけに…

名簿には、氏名、住所、年齢、性別、支援者の有無など個人情報が集約されており、掲載人数は千数百人にも及ぶ。中野区は今後、名簿の対象者に謝罪文を発送するとともにコールセンターを設置して対応するという。

中野区役所

一戸容疑者は青森県で育った。県立高校時代は野球部員として活躍し、3年夏の県大会一回戦に「8番・右翼」で出場し。4打数2安打3打点と大当たりでコールド勝ちに貢献した。同大会の直前に、毎年試合を見にきてくれていた祖父(享年74)を亡くしてからは練習に参加できず打撃の調子も落としていたが、試合当日は体のキレを取り戻し大活躍。「おじいちゃんが見ていてくれたのかな」とインタビューに応えるなどお爺ちゃん孝行の一面を見せていた。

青森で暮らす一戸容疑者の祖母は、記者の問いかけに肩を落とした。

「本当に亡くなった夫(祖父)思いの優しい子だったんです。上京して消防士になってから連絡もとれていない。何でこんなことになってしまったのか…。私もまったくわからない。申し訳ないのですが…」

天国の祖父は何を思うのかー。

取材・撮影・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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