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“マッチングアプリ沼”“ジャニーズアイドル沼”……なぜ人は沼という底なしの快楽から抜け出せなくなるのか? 沼にはまる人の特徴とは?

集英社オンライン / 2022年12月13日 15時1分

いまや定着した「沼にはまる」という言葉。テレビ番組のタイトルにも使われるなど、すっかり市民権を得ている。はまることで、達成感、高揚感、幸福感を得られる沼もあれば、ひたすら推しへの愛を貫き、その結果身の破滅へと追い込まれる沼もある。どんな人たちが沼にはまり、そこから脱け出せくなるのか?『沼にはまる人々』(ポプラ新書)の著者で、500人以上の沼びとたちに取材したライターの沢木文さんに聞いてみた。

沼って一体なんだ?

–––––ここ数年「沼にはまる」という言葉をよく耳にします。そもそも「沼」って何なんですか?

何かに夢中になり、はまってしまい抜け出せなくなることを指しますが、これだけでは今までの“オタク”と大差ないと思います。むしろその偏愛ぶりを隠さず、誇らしいとさえ思っているのが、沼にはまった状態です。



–––––確かに“オタク”というと、かつてはどこか暗く自分の趣味をこっそり楽しむイメージでしたが、それが変わってきたんですか?

例えば『宝塚歌劇団を観てヅカ沼にはまりました』『婚活沼にはまっています』『昨日からあの俳優に沼です』というように、はまっている人はどこかキラキラとした雰囲気をまとい、少々自慢げに自分のことを語る傾向があるんです。

–––––キラキラですか!? 何かにはまっていることは恥ずかしくない、むしろカッコイイと思うようになったということでしょうか?

2010年に経済産業省に“クール・ジャパン室”が設置され、アニメ、ゲームを含む、日本のサブカルチャーにスポットが当たり、潮目が変わったんですよ。オタクがカッコイイものになり、自分がどれだけ対象に愛が深いかを語るようになったんです。「沼」という言葉もちょうどその頃(2010年頃)から見られるようになりました。

口コミ力が高く、共感を得やすい女性は要注意⁉︎

–––––沼にはまりやすいタイプってありますか?

まずそこそこ勉強ができる人。ある程度の学力がある人は、努力が身について体系化できるともっと深い知識を得たいと、さらに対象を掘り下げたくなる傾向があるので、はまりやすいですね。

あとは、コンプレックスを持っている人や、現実の自分を受け入れることができないタイプなどもはまります。

例えば、“ホスト沼”にはまる女性は、やはりチヤホヤされたことがない方が多いです。これまで味わったことがない特別な状況(接待サービス下)に置かれると、どうしてももう一度それを経験したいって思っちゃいますよね。

普段から注目されている人は、何か特別なことをされても動じないんですよ。例えば、運動や勉強で言えば、学校のクラスで2割がエリート、7割は普通、残り1割が落ちこぼれという構成だとすると、その7割の中で1番凡庸な人がホストクラブに行くとはまると思います。

–––––男女だと、どちらがはまりやすいでしょうか?

女性でしょうかね。女性は口コミ力が高く、共感を得やすいので、SNSで同じ沼にはまっている人たちと仲間になりますね。

人間は仲間がいると序列が発生するので、よりお金をかけた、より回数をこなした、より理解が深いということを争うようになって、どんどん沼にはまっていくんじゃないでしょうか。

はまっていい沼と悪い沼

–––––人生に幸福をもたらす良い沼ってどんなものでしょうか?

はまってよかったなと思えるのは、仕事につながった人ですね。“ラーメン沼”から、お店を始める方は少なくないですし……。例えば、服が大好きで“服沼”から、パーソナルスタイリストになった人は、すごいなと思いました。探求心から、自分の技術を磨いて、それを仕事として成立させているのは素敵ですね。

–––––逆に、はまるのが怖い悪い沼ってありますか?

本人のためにならないという点で、単純に浪費することしか拡張性(将来性)がないような沼は避けたいですね。例えば、推しに課金するとか、ゲームのガチャを回すとか、ディズニーランドに何回も行くとか。いわば他人の作った集金システムに入っている限りは、自分のところに何も返って来ないんですよ。(お金を)吐き出し続けるだけなんで。

なぜ抜け出せないのか?

–––––沼にズッポリはまっている人は、なぜ抜け出せないんでしょうか?

仕事がうまくいってなかったり、夢中になる仕事がない人が沼から抜け出せない傾向にあるかもしれません。誰しも20代で一度は仕事で失敗して、大恥をかいたりするじゃないですか。でも、そこから立ち上がる経験をしたり、問題を解決することで、ドーパミンが出て、意欲へとつながる幸福感を会得できるんですよ。

でも、そういったことをやらずに逃げてしまうと、仕事が面白くないまま終わってしまう。そうなると依存できる何か、愛せるもの、あるいは自分を愛してくれるものを探すんです。それが抜け出せない原因です。

また、沼って、お金さえあれば、また行けちゃうんですよね(笑)。だから抜け出しにくい。逆に、はまっている対象に近寄ることができなければ、忘れることはできる。例えば、アイドルファンはアイドルが引退すれば、その“押し沼”からはすぐに抜け出せます。もう会えないのだからそうせざるを得ない。

失恋もだいたいそのくらいで立ち直るじゃないですか(笑)。人間の細胞って入れ替わるのがだいたい3ヵ月くらいなので、その間一切それに触れなければ抜け出せると思います。

–––––そういう人は仕事だけでなく、やはり人間関係にも困ってそうですね……。

実は沼から抜け出せない人は、表面上、人間関係はうまくやっています。今はちょっとでも怒ったり、機嫌悪くすると、ハブられたり(無視されたり)しちゃいますよね。そこは空気を読む。日常生活では当たり障りなく過ごしています。“素の顔”と“外の顔”で使い分けているんでしょうね。

–––––沼にはまるにあたって気をつけておくことはありますか?

基本的に自分の中で楽しければOKですが、とにかくお金には気をつけて欲しいですね。“マッチングアプリ沼”や“ホスト沼”は、ネットワークビジネスに絡んでくることもあるので注意してください。

それから相手にいい顔をしないことです。“コスメ沼”にはまっていた女性は、お気にいりのBA(ビューティーアドバイザー、デパートの美容部員)さんを成績トップにしたいと、興味もない、無駄なコスメ商品を大量に買っていました。化粧品を愛することと、相手にいい顔をすることは別のことです。ついつい自分の気持ちを勘違いして、本来の動機を見失わないように気をつけたいものです。

取材・文/集英社オンライン編集部

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