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会見でフリー記者を排除。「世田谷モデル」を提唱した保坂展人区長、区政丸投げで心は「国政復帰」の愚

集英社オンライン / 2022年12月10日 17時1分

2022年10月、保坂展人 世田谷区長の記者会見において区職員がフリーランス記者を組織的に排除する事件が発生した。交渉の末、翌11月の会見に参加し、保坂区長を自ら追及したジャーナリストの犬飼淳氏が顛末をレポートする。

会見からフリーランス記者を排除する世田谷区

「いつでも、どこでも、何度でも」PCR検査を受けられる「世田谷モデル」の提唱を始め、自治体の裁量が大きい感染症対策で評価を高めた首長の一人である保坂展人世田谷区長。



しかし、2022年10月、保坂区長自身がフリーランス記者出身でありながら、区長記者会見(基本的に月次開催)からフリー記者を不当に排除する事件を引き起こした。しかもこの件で保坂区長が頭を下げて謝罪した11月の会見後も、会見を主催する世田谷区 広報広聴課は依然、フリー記者を排除するなど「二枚舌」対応を続けている。



まずは経緯を時系列に沿って紹介する。

9月27日〜10月23日

9月27日、世田谷区の「ある重大な問題」を取材するためにフリー記者の於保清見氏が世田谷区広報広聴課に10月度の区長記者会見参加を申し込むが、断られる。これ以降、同じくフリー記者 の寺澤有氏と共に参加交渉を続けるが、区は一貫して以下の説明を続けて参加拒否の姿勢を貫いた。

・「感染症対策」と「会場の大きさ」の問題で、参加者は影響力の大きい大手メディア記者に限定

・中継映像を視聴すれば区長の発言は分かるのに、なぜ会見参加に拘るのか理解できない

区職員は記者会見を自らに都合の良い内容を一方的に発信する「広報」として捉え、区民の知る権利を守るための「報道」との違いすら理解していないことが顕在化した。


10月24日(会見当日)

前日(10月23日)になっても区職員は参加を拒否する明確な理由を示せないため、於保氏と寺澤氏は会見に参加するため、開始30分前に現地訪問する旨を事前に区職員に伝え、約束通りに訪問。しかし、会見を主催する広報広聴課は職員総出で2名を排除。この際、会見室の大きさと席数に十分な余裕があることを寺澤氏らは確認し、区職員が主張してきた「会場の大きさの問題」は嘘と露呈。

*会見室の大きさ、職員がフリー記者2名を排除する様子は寺澤氏が自ら撮影し、翌25日にYoutubeで3本に分けて公開

10月25日

寺澤氏に対して、区職員(秘書課)から謝罪の電話があり、保坂区長の伝言(「昨日は不快な思いをさせて申し訳ない」「フリーランスの会見参加は検討する」)が伝えられる。


10月26日〜11月20日

保坂区長が明確に謝罪の意思を示した後にもかかわらず、区職員(広報広聴課)は「二枚舌」と判断せざるを得ない以下の対応を続ける。

・寺澤氏がYoutubeで公開した排除映像 全3本に対して、広報広聴課 大道力氏が「プライバシー侵害」を理由に削除申請。→この映像に「プライバシー侵害」に当たる内容はなく、もし侵害するとしても「報道・取材の自由」「表現の自由」が優先されるため現在(12月3日時点)もYoutubeは削除に応じていない

・寺澤氏から情報共有を受けた筆者も次回会見に自ら参加すべく10月31日に広報広聴課に電話するも、これまでの経緯を完全無視した説明(「感染症対策」と「会場の大きさ」の問題でフリー記者は参加不可)がなされる→筆者がこれまでの経緯を知っていることを明かして保坂区長謝罪との矛盾を指摘すると、区職員は観念して渋々と開催案内の連絡を承諾

・11月の会見は「開催案内連絡から先着10名のみ受付」という方針を採りながら、公平性を担保できていない事実が複数発覚(フリー記者の中でも開催案内のメール受信時刻にバラつきがある、大手メディアはフリー記者よりも早く開催案内を受け取っていた疑いあり、「定員オーバー」を理由に参加を断られた記者よりも遅く申し込んだ記者が参加を認められる、等)。

*10月までの経緯の詳細は、筆者がtheletter「犬飼淳のニュースレター」で公開した「フリー記者出身の保坂 世田谷区長が会見からフリー記者を排除(1)」を参照。また、11月の会見開催案内の詳細は、同様に「フリー記者出身の保坂 世田谷区長が会見からフリー記者を排除(2)」を参照


11月21日(記者会見当日)
前回排除された2名(於保氏、寺澤氏)に加えて、今回、新たに参加を申し込んだ筆者を含むフリー記者4名が会見に参加。筆者と寺澤氏が会見からのフリー記者排除の認識を保坂区長に直接質問。

ようやく参加できた会見で見えた保坂区長の実像

保坂区長は11月の会見でフリー記者排除について筆者や寺澤氏に問われると、「今後はフリーランスだからという理由で会見に入れないことが二度とないように徹底したい」「そういう対応がきちんと伝えられなかったことは私の責任」等と述べて、頭を下げて謝罪。

しかし、これまでの経緯、当日の質疑内容、筆者が360度カメラで撮影した会見室の実態(下記のYouTube動画参照)を踏まえると、この問題を本気で改善する意思があるのか疑わしいと言わざるを得ない。

*外部配信サイト等で動画を再生できない場合は筆者のYoutubeチャンネル「犬飼淳」で視聴可能

<会見映像の主な内容>
0分37秒〜6分54秒:筆者が「フリー記者の会見排除」「質問 事前提出の要求」等を質問
8分47秒〜11分51秒:フリー於保清見氏が「区史編纂事業の著作権侵害、ハラスメント」を質問
11分52秒〜20分10秒:フリー寺澤有氏が「フリー記者の会見排除」「区長の職務放棄」「国政復帰の考え」等を質問

筆者は会見前に世田谷区役所を可能な範囲で下見し、感染対策と定員増を両立できる広い会場(定員60名超の「ブライトホール」というイベントスペース)が第3庁舎に存在することを確認している。

会見場所を変えるだけで定員を増やせる事実を筆者が指摘すると、保坂区長からは「記者会見の寸前まで様々な調べ物などしているため、区長室もある現行の第1庁舎が望ましい」という趣旨の曖昧な答えしか返ってこなかった。しかし、第1庁舎と第3庁舎の建物は道路を挟んで向かい側に位置しており、徒歩30秒程度で移動できるほどの至近距離である。

これらを鑑みるに、やはり世田谷区は記者人数を制限するためにコロナ対策を悪用したと判断せざるを得ない。現に、会見終了後に区職員(広報広聴課)に会見場をブライトホールに変更できない技術的・物理的理由は存在するのか改めて確認したが、明確な回答はなかった。

さらに、経緯で紹介した通り、保坂区長がフリー記者排除について頭を下げてまで謝罪して再発防止の徹底を宣言した会見においても、実際は職員によるフリー記者 差別(先着10名の開催連絡の連絡時刻が一斉ではない 等)を続けていた。

この事実を保坂区長も認識していたならば謝罪は真っ赤な嘘であり、認識していないのであれば職員が区長の謝罪すらも台無しにしたと言える。

また、保坂区長は過去に首相会見の質問の事前提出による予定調和な質疑を繰り返し批判しながら、フリー記者が参加することになった11月の会見からは質問の事前提出を要求。

この矛盾を会見で筆者が指摘すると、保坂区長は「時間を無駄にしないため、問題に答えられる管理職を用意するため」と回答。

しかし、これは自らが批判した首相会見にも当てはまる話であり、国政を厳しく批判してきた一方で自らには甘い保坂区長の姿勢が浮き彫りになった。

*11月会見の質疑詳細は、筆者がtheletter「犬飼淳のニュースレター」で公開した「保坂区長の謝罪すらも台無しにした世田谷区職員の二枚舌対応」を参照

国政に物申す一方、本業の区政は職員に丸投げ?

就任11年目を迎える保坂区長の世田谷区政では、これ以外にも様々な問題が起きている。一例として、区史編纂事業では執筆者に著作権譲渡や人格権不行使を強要し、その過程でパワーハラスメントも発生。

10月時点で区議会でも取り上げられるほどの大問題に発展しており、これこそがフリー於保氏が最初に会見への参加申込をした理由でもある。

ようやく会見に参加できた11月の会見で於保氏はこの問題の認識を保坂区長に問い質すも、「トラブルが起きたとは聞いているが、問題を具体的に指摘して頂かないと答えられない。預りとしたい」と衝撃的な回答。区議会で取り上げられるほどの大問題を区長がまるで認識していない実態が露呈した。


当日に筆者が会見室で撮影した360度写真をご覧頂くと、中央(区長演台の正面)の記者席は10名に限定された一方、右側には回答を補助する職員に12席以上が用意されている。

実際、保坂区長は会見中に度々回答を職員に丸投げ。さらに壁際や窓際にも区職員(広報広聴課、秘書課 等)が約10名も待機。他の一般的な会見と比べても、記者の少なさ(10名)と職員の多さ(記者の倍以上)は明らかに異常である。

就任から11年が経過し、来年で3期目の任期が切れる保坂区長は、会見でフリー寺澤氏に国政復帰の考えを問われると完全否定することはなく、可能性に含みを持たせた。現に、保坂区長のTwitter での発信内容を見ると、連日のように国政に物申す姿を確認できる。

その一方で、自らの本業である区政は疎かに。もはや心ここにあらず、といった状態なのではないか。

文/犬飼淳

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