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「この枠がダメになれば終わり」――『M-1』制作局ABCテレビが『M-1』よりも長く続けている“深夜バラエティ”とは?

集英社オンライン / 2022年12月19日 12時1分

大阪・朝日放送テレビ(ABCテレビ)が、80年代から放送している深夜バラエティレーベル「ナイトinナイト」。松本人志の『探偵!ナイトスクープ』や、千鳥の『相席食堂』など現在、5番組が放送中だ。『M-1グランプリ』の制作局でもあるABCが目指す関西発バラエティの未来とは?

関西芸人が憧れるバラエティ「ナイトinナイト」とは

M-1グランプリ、キングオブコント、THE W……2000年代初頭から始まった、テレビ局が主催(または共催)する「賞レース」への注目度は、2020年代に入ってからますます高まっている。お笑い芸人にとって、王者になること、もしくは決勝へ進出することはひとつのステータスになり、その後の躍進が約束される言っても過言ではない。一方で、YouTubeやTikTokなど、スマホ世代をターゲットにした複数の視聴メディアが台頭したことにより、テレビを通さずとも人気を獲得・維持している芸人が多数存在しているのも事実だ。



そんな「賞レース」とテレビ以外のメディアにスポットが集まる中で、“テレビ発の、芸人主体のバラエティ番組”というスタイルを守り続け、関西で長年、親しまれている番組枠がある。ABCテレビが夜11時台に制作・放送している「ナイトinナイト」である。

「ナイトinナイト」のロゴ。各番組に共通して使われる

1980年代に、月~木の帯番組として始動した「ナイトinナイト」。やがて各番組が独立して制作されるようになり、『クイズ!紳助くん』(94~11)や、『八方の楽屋ニュース』(86~98)、『ナンバ壱番館』(99~04)などの人気番組を生み出した。ちなみに、1988年にスタートし、現在も放送されている名物バラエティ『探偵!ナイトスクープ』は、開始当初から長らく「ナイトinナイト」枠ではなかったものの、2016年に合流。現在は月~金の5番組が同枠で放送されている。

【ナイトinナイト番組紹介①】『探偵!ナイトスクープ』(毎週金曜)/「ナイトinナイト」枠というよりも、関西ローカルバラエティの中で怪物的な人気を誇る長寿番組。視聴者の疑問や解決してもらいたい悩みを、探偵たちが調査・解決していく。2019年11月末、西田敏行の勇退に伴い、松本人志(ダウンタウン)が局長を引き継いだ。ちなみにナイトスクープのナイトは騎士を意味する「knight」

現在、放送されている番組は、『なるみ・岡村の過ぎるTV』(月曜日)、『相席食堂』(火曜日)、『やすとものいたって真剣です』(木曜日)、『探偵!ナイトスクープ』(金曜日)に、この11月からスタートしたかまいたちがホストを務める『これ余談なんですけど・・・』(水曜日)を加えた5番組。関西ローカルでありながら、吉本興業が誇る第一線の芸人たちが勢ぞろいしていることからも、力の入れようがうかがえる。

「ナイトinナイト」の5番組はそれぞれライバル

【ナイトinナイト番組紹介②】『なるみ・岡村の過ぎるTV』(毎週月曜)/ナインティナイン・岡村隆史と、なるみが関西の●●過ぎるスポットや人物を紹介していく。岡村がブレイクダンスを披露したり、なるみと一緒に買い物ロケに行ったりと、リラックスした姿が見られる。岡村が一般人との結婚を発表した直後、予定を変更して「祝!岡村隆史結婚スペシャル!」を放送した

TVerやGYAO!での配信が開始され、全国どこからでも番組が視聴できるようになった時代にあって、テレビ発のローカルバラエティだからできることとは何か――。今回は、「ナイトinナイト」枠の番組を制作するプロデューサーに、番組に懸ける想いや、賞レースや放送メディアの細分化による番組や制作体制の「変化」について聞いた。

「やっぱり会社の顔、中核ですね。視聴率や営業セールス的なことを考えても、この枠がダメになったら(局が)終わってしまうかもしれない。そういう意味で常に結果を出しつつ、一方で面白いことをやり続けないといけないだろうなと」

こう話してくれたのは、現在は『過ぎるTV』のプロデューサーを務めるABCテレビの下山航平氏。かつては同局のスポーツ部で5年ほど勤務し、阪神タイガースの番記者や、高校野球応援番組『熱闘甲子園』の制作などに携わった。その後、バラエティを制作する制作部に異動し、『今ちゃんの「実は…」』(08~22)(ナイトinナイト枠)や、松本人志が関西でレギュラーを持つことで話題となったロケ番組『松本家の休日』(14~21)の担当を経て、現職に。さらに『ABCお笑いグランプリ』や『M-1グランプリ』といった賞レースの制作にも関与するなど、まさにABCテレビにおけるバラエティの中核を担うポジションだ。

下山航平氏。現在のABCテレビのバラエティ番組、賞レースを牽引するプロデューサーだ

だが、北海道出身の下山氏が関西発のバラエティに触れたのは大阪の大学に進学した後。「ナイトinナイト」のことも知らなかった。

「地元が北海道で、周りに芸人になりたいという人も皆無でした。『めちゃイケ』世代なので人並みにバラエティ番組には触れていましたが、そもそもスポーツ部志望だったので、芸人にも詳しくなかったですし、まさか自分がバラエティを制作する立場になって、岡村さんや、松本さんの番組を制作することになるとは思っていませんでした」

「ナイトinナイト」は、現在は独立した5番組を包括するレーベルとして使われている。番組にはそれぞれプロデューサーも宣伝担当もついており、枠としてのつながりは緩やかなものだ。それでも各番組は影響し合っているという。

「プロデューサーごとに考え方が違うと思いますが、僕は各番組できちんと色分けしたものをやっていこうという感覚がありますね。最終的に『ナイトinナイト』という横並びで視聴者から判断されるので、そこは意識しています。なので、他の番組は仲間というよりも、ライバルという感覚が近い。例えば、“火曜日があのネタをやっているのだったら、こっちは別のネタにしよう”みたいなことはあります」

若者に伝わるスピード感がバラエティにも必要

下山氏が手掛ける『過ぎるTV』は、なるみとナインティナイン・岡村隆史が司会を務める番組で、来年で放送10周年を迎える。「ナイトinナイト」枠の中ではもっとも関西色の強い番組で、関西エリアの街やグルメ、人をディープに紹介していく企画が多い。なかでも、ベテラン漫才師、ティーアップ・長谷川宏の個性的なファッショニスタぶりに密着した「オシャレ過ぎる長谷兄コレクション」は、関西人に愛される企画となっている。

『過ぎるTV』12月19日放送回より。ゲストも関西の大御所ベテラン芸人から若手まで多彩。

「確かに『過ぎるTV』は、いちばん関西のことを意識していて、関西の人に見てもらいたいという思いで、大阪でも注目されている岸和田(「だんじり」で有名な大阪府泉州地方の街)や堺の特集をしています。なので、全国に配信しているTVerやGYAO!ではどうしても再生数が伸びない。
でも、この番組は全国に浅く広く、という方向性ではないですし、敢えて広げず、むしろターゲットを狭め続けています(笑)。それができるのも、『相席食堂』のような配信に強いコンテンツがあるから。だからといって、みんながみんな『相席食堂』と同じことをしていたらダメだと思うので」

【ナイトinナイト番組紹介③】『相席食堂』(毎週火曜23:17~)/千鳥のふたりが、ゲストによる旅ロケ(VTR)に対し「ちょっと待てぃ‼」とツッコミを入れていくバラエティ。超有名人から一般的には無名のミュージシャンまで、ゲストが幅広いのが特徴。全国で人気が高く、配信メディア「TVer」のTVer アワード特別賞を2年連続受賞

一方、テレビを持たない若者が増えていく中で、視聴者層の拡大と共に、演者にとっても「出たい」と思われる番組の制作がひとつの課題だと語る。「ナイトinナイト」としてテレビバラエティの“らしさ”を保ちながら、どのように若い世代を取り込んでいくか――賞レースの制作も担当する下山氏にとっても、その最適解を探している段階と言える。

「『M-1』もそうですが、賞レースがめちゃくちゃ盛り上がっている状況なのは間違いないです。ただ、YouTubeでいくらでも自分で発信できる時代なので、賞レースで人気を獲得した芸人さんが、いつまでテレビに出たい、ロケに出たいと言ってくれるかわからない。その受け皿として、僕たちのバラエティがちゃんと応えられるかは問われていると思います。

というのも、YouTubeやTikTokのような、テンポが早くてパッと見でわかるコンテンツに比べると、テレビは明らかに説明くさいメディアなんです。それがテレビの良さでもあり、役割でもあるのですが、説明するところはしつつも、若者にも見てもらえるテンポ感、スピード感。それを取り入れたバラエティを作るのが今後の目標ですね」

取材・文/森樹 写真/朝日放送テレビ

番組情報

なるみ・岡村の過ぎるTV 毎週月曜夜11時17分~



相席食堂 毎週火曜夜11時17分~



これ余談なんですけど・・・ 毎週水曜夜11時17分~



やすとものいたって真剣です 毎週木曜夜11時17分~



探偵!ナイトスクープ 毎週金曜夜11時17分~

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