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『M-1』で生まれたスターを番組の顔に――「ナイトinナイト」プロデューサ―が抱く使命感

集英社オンライン / 2022年12月19日 12時1分

朝日放送テレビ(ABCテレビ)の深夜バラエティ「ナイトinナイト」が、TVer、GYAO!などの配信メディアにより、全国で視聴できるようになった。関西ローカルらしいディープさをキープしながら、全国に、そして若い世代に届けるための施策とは。

各番組がひとつの国のようなイメージだった

関西地方における深夜バラエティの牙城と言える「ナイトinナイト」。MCやメイン出演者こそ全国区の芸人が務めているが、各番組ともロケVTRをメインにした企画が多く、これから伸びる次世代スター、駆け出しの新人たちにとっての登竜門的存在ともなっている。


新たに「ナイトinナイト」枠でスタートした『これ余談なんですけど・・・』の放送第一回目で、かまいたち・濱家は「来るとこまで来たなという感じ。大阪で上り詰めた人しかやらないから」と、伝統の枠で番組が持てる感慨を述べていたが、芸人たちにとっても、やはり「憧れの場所」として存在している。

【ナイトinナイト番組紹介④】『これ余談なんですけど…』(毎週水曜)/2021年に半年間放送されたのち、今年11月から「ナイトinナイト」枠で復活を果たしたトークバラエティ。ホストのかまいたちがゲストたちと共に、「余談」を繋いでいく。「ナイトinナイト」枠では唯一の東京収録

今回インタビューに登場いただいたのは、2003年にABCに入社した鈴木洋平プロデューサー。途中、ラジオの制作に異動した時期もあったものの(その時期に帯番組「よなよな…」を立ち上げ、ラジオスターとしてのダイアンを発掘したことでも知られる)、制作部にて数々のバラエティを制作し、複数の「ナイトinナイト」枠にも参加してきた。

「キャリア的には『ごきげん!ブランニュ』(01~16)のADからはじまって、『M-1グランプリ』の制作にも携わりながら、レギュラーとしては『ビーバップ!ハイヒール』(05~20)や、『探偵!ナイトスクープ』(88~)にも参加していました。それからラジオに異動したのち、テレビの世界に戻ってきてから『過ぎるTV』(13~)、そして11月まで『いたって真剣です』(20~)のプロデュースをしていたので、局の中でも「ナイトinナイト」に関わっている方だと思います」

鈴木洋平氏。バラエティ制作、賞レース制作の現場から関西の芸人たちと密に接してきた

長らく「ナイトinナイト」の制作に関わってきたことで、その時代における各番組の関係性の変化も実感しているという鈴木氏。当初はその枠へのプレッシャーは感じることはなかったというが、キャリアを重ねるにつれて、また他局の制作者との交流が増えるにつれて、よりその重要性を意識するようになっていった。

「僕が入社してADからディレクターをはじめたころは、各番組がひとつの国みたいなイメージで、“まったく違うことをやるんだ”とバチバチしている感じは強かったですね。でも、今はそこまでライバルっぽくはないというか、どちらかというと協力しようという体制になってきていると思います。ですので、ラジオから戻ってきた最初の頃は『ナイトinナイト』だから、みたいな枠組みはあまり意識していなかったですね。他局の人と話していると“あの時間にあれができるのはいいよね”と言われて“確かに”、と。あの時間でしっかりとお笑い、バラエティを制作できるのは、伝統の枠が続いているからでしょうね」

ここ数年で激変した企画の見せ方

海原やすよ ともこが司会を務める『いたって真剣です』は、人気芸人をスタジオに呼び、笑いや賞レースについて真剣にトークするスタイルが関西で人気となり、世に知られるようになった。なんばグランド花月の「トリ」も務めるやすとものふたりだから引き出せる芸人たちの本音は、やがて全国のお笑いファンの心をも掴んでいった。

「やすともさんはMCでありながら、グッと漫才師としての顔というか、熱が入っていく瞬間があるんです。それが、ゲストが普段話さないような真剣トークのきっかけになることも多くて。同じ芸人としての立場から気持ちでぶつかっていくのが、他のMCにはない唯一無二の魅力だと思います。現場でも、収録というよりは濃厚なトークライブを見ている感覚に近いですね。今はVTRの時間も増えていますが、やっぱりトークが盛り上がれば番組は面白くなります。なので、そのトークを引き出すVTRやゲストを考えるのが制作陣の腕の見せ所だと思っています」

【ナイトinナイト番組紹介⑤】『やすとものいたって真剣です』(毎週木曜)/関西では不動の人気を誇る海原やすよ ともこがホストを務めるバラエティ。芸人たちが熱く話す真剣トークや、芸人たちの趣味ややりたいことを掘り下げたロケVTRがメインとなっている

長く「ナイトinナイト」に携わる鈴木氏だが、途中、7年間ラジオの制作に異動していたこともあり、その間にバラエティ番組の制作における変化も感じたという。第7世代の台頭などによって芸人への注目度が高まったこと、そして全国への番組配信が開始されたことによって、企画の立て方も変わっていったそうだ。

「ラジオに異動する前、●●と●●のトーク番組、みたいな企画を出しても、“これは企画じゃない。芸人さんのイベントやん”と難色を示されることが多かったんです。今考えると、単に企画書が面白くなかっただけなのですが(笑)。

以前、ディレクターとして入っていた『ビーバップ!ハイヒール』は、カシコブレーンと呼ばれるゲストの方の著書を読んで、それを要約して再現VTRを作るという大変、手の込んだ構成でしたし、『ごきげん!ブランニュ』も、芸人にあそこまでやらせるのか、と思うくらい、あくまで番組が主体の構成になっていて。今も基本は変わらないですが、これだけ視聴メディアも増えて、いろんなコンテンツがあふれる中で存在感を出すには、以前よりはわかりやすさを重視した企画が求められているような感じはありますね」

ABCらしさをどうやって未来に繋げていくか

12月22日放送の「いたって真剣です」より。やすともの話術が、ゲストの魅力を巧みに引き出す

現在は芸人が独自で行うYouTube配信や劇場でのイベントなど、コンテンツを放送・配信するチャンネルも増加している。その中でテレビ番組だからできることを考えたとき、やはり鈴木氏は“わかりやすさ”であると解説する。

「難しいものを簡単に、わかりやすく示していくのがテレビであると僕は教わってきました。YouTubeは、そうした説明よりもテンポや感覚を重視する編集なので、僕らが時代と合っているのかはわかりませんが……そこはまだ捨てられないというか(笑)。あとは、何かを紹介したいとか、この面白さを伝えたいという熱ですよね。その熱が高ければ高いほどわかりやすく伝えようとするじゃないですか。
もちろん、U49(49歳以下)のように、狙っているターゲット(視聴者層)はあるのですが、狙ってもなかなか……そこは何か面白いものがあるとか、面白い人がいるというのを深く伝えるべきなんだろうなと思います」

テレビというメディアが果たしてきた役割は報道、エンタメ、アートなど幅広く、その中でメインにしろサブにしろ、カルチャーが進化・熟成してきたのは事実である。時代は変わり、テレビに求められているものも大きく変化している状況だが、鈴木氏は“ABCらしさ”や、『M-1グランプリ』を制作する局としての資産や土壌を活かした番組を制作していくべきだと語る。

「テレビ自体が過渡期の中で、『ナイトinナイト』が全国でも見られているというのは、これまでABCが培ってきた“らしさ”が残っているからだと思います。長寿番組である『探偵!ナイトスクープ』はその最たるものですし、『ナイトinナイト』枠の過去の番組にレギュラーで出演していた千鳥さんややすともさんが冠番組を持つだけの人気と知名度を得たわけです。つまり、自分たちが面白いと思う芸人さんを信じて、お互いに信頼を築いていくという、とんでもなく時間が掛かる作業を愚直に続けていくことが、結果、ABCのカルチャーになって、視聴者の皆さんにも「ABCぽいなあ」と思ってもらっているんだと思います。
『M-1グランプリ』や『ABCお笑いグランプリ』といった賞レースも、結果的にその大きなサイクルのひとつになっていて。いい結果を残し続けたかまいたちさんがこうして冠に戻ってきました。そういう良い循環を次の世代に繋げていくことが、僕らの今後の使命なのかなと感じています」

取材・文/森樹 写真/朝日放送テレビ


番組情報

なるみ・岡村の過ぎるTV 毎週月曜夜11時17分~



相席食堂 毎週火曜夜11時17分~



これ余談なんですけど・・・ 毎週水曜夜11時17分~



やすとものいたって真剣です 毎週木曜夜11時17分~



探偵!ナイトスクープ 毎週金曜夜11時17分~

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