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《渋谷の夜、変革の年》若者の遊び方が劇的に変わっている…大型クラブ続々閉店で「ひとつの時代の終わり」【2022年 渋谷・ニュース5選】

集英社オンライン / 2022年12月23日 19時1分

再開発が進み、新たな街へと変貌を続ける渋谷。一方で都市の景観が変わっても「文化の発信地」として求心力を持つ渋谷には変わらずに多くの若者が集う。2022年も渋谷ではさまざまな出来事があった。ウクライナデモ、ハプニングバー摘発、通り魔事件、大型クラブ閉店、ハロウィンW杯の熱狂……。渋谷界隈で20年以上にわたってクラブやバーを運営する株式会社グローバル・ハーツの齋藤直希氏に「今年の渋谷と、これからの渋谷」を訊いた。

以前にも増して路上でたむろする若者が増えた

コロナ禍も3年目に突入し、いわばウィズコロナのライフスタイルが定着しつつあるなか、ナイトタイムエコノミー(夜の経済活動)も復調してきた感がある。また、2022年10月半ば以降からは外国人の日本への入国制限が緩和され、インバウンド需要の復活も期待できるような状況だ。



こうしたなか、今年1年の渋谷におけるナイトシーンを齋藤氏に振り返ってもらうと、「『ひとつの時代の終わり』という言葉に集約されます」ときっぱり言う。

「2022年初めには新木場ageHa(アゲハ)、西麻布alife(エーライフ)、そして9月に弊社が運営していた渋谷のSOUND MUSEUM VISION(以下、ビジョン)とContact(以下、コンタクト)がクローズしました。クラブ業界を牽引してきた大箱が次々と閉店した2022年は、まさに『ひとつの時代が終わった』と言い表せると思います」

それだけでなく、コロナ前と比べて、週末の夜に若い世代がクラブへ足を運ばなくなってきているという。

では、クラブへ行かないかわりに渋谷ではどのような“夜遊び”が主流になっているのか。

齋藤氏は「コンビニ前や公園、路上などでお酒を飲みながら談笑し、たむろしている姿をよく見るようになった」と話す。

「私たちの立場からすると、そこに集まる若者の中にはスケーターやラッパー、DJ、ダンサーといった次世代のストリートカルチャーを生み出す人もいると思うと、単純に『ダメです』とは言いづらく、非常に難しく感じています。
騒音や迷惑行為などに至った場合は、警察や行政などが介入して事を収めますが、“渋谷らしさ”と“大人としてのマナー”が相反する状況に困惑するばかりです」

2022年に世間を賑わせた渋谷の出来事

こうした夜の顔の変化はもとより、世間を賑わせた出来事が、今年も渋谷では相次いで起こった。

ここからは順を追って、その出来事をハイライトしていきたい。

【① ウクライナデモ(2022年2月)】

2月に発生したロシアによるウクライナへの軍事侵攻。

軍事介入に対する反対の意を示そうと、世界各地で抗議デモが勃発するなか、日本でも渋谷ハチ公前で全国に先がけて、ウクライナ人による大規模デモが行われた。

雑然とした渋谷の雰囲気だからこそ、何かを主張するアクションを起こしやすい場所でもあるわけだが、声を強めて「主張した者勝ち」になりすぎても、秩序が保てないだろう。

それでも、渋谷という街で発信することのインパクトは大きく、社会的意義を問うアクションだったことは間違いない。

【② ハプニングバー摘発(2022年5月)】

5月には渋谷の老舗ハプニングバー「眠れる森の美女」が摘発された。

違法にならないように法の目をくぐり、営業を続けてきた同店に、警察の捜査のメスが入ったことには大きな衝撃が走った。15年間も営業を続けていた老舗の閉店に、常連客からは突然の閉鎖を惜しむ声が上がった。

渋谷区としては、2016年に改正風営法を施行して以来、ナイトエンターテインメントの健全化や治安の維持に努めている。

適法に則った店舗運営は、今後もより一層求められるだろう。

【③ 神泉・中3少女通り魔事件(2022年8月)】

夏頃には、神泉エリアで中学生による母娘への刺傷事件が発生した。
埼玉県在住の女子中学生がわざわざ渋谷まで来て起こした事件として世間の注目を集めた。

実は、齋藤氏がコンタクトでマネージャーを務めていた際、同店のスタッフが現場に遭遇していたという。渋谷ではこうした凶悪犯罪が頻繁に起こるのだろうか。

「ふだん渋谷で働いているなかで、特に怖さを感じることはないですね。渋谷はいい意味でも、受容的で寛容さがある街だと思っているので、私自身は渋谷を離れようとは考えていません」

DEV LARGE追悼イベントを越える行列

【④ 大型クラブの相次ぐ閉店(2022年9月)】

道玄坂の大型クラブ「ビジョン」や「コンタクト」の閉店も、渋谷のナイトカルチャーにおいてセンセーショナルなニュースだった。

ビジョンの最終営業日に行われた“ラストダンス”では、道玄坂にあるユニクロ横まで行列ができ、名残を惜しもうと集まるクラバーが絶えなかった。

その一方で、「ラストダンスを上回る、ビジョン史上最も行列ができたイベントがある」と齋藤氏は言う。

「2022年8月に開催したHIP HOP系イベント『STEREO WAVE』では、ビジョンでの開催が最後だったということもあり、PUNPEE、BIM、BAD HOPという豪華ゲストが名を連ね、盛大に行われました。ビジョンでのライブを一目見ようと、大勢のお客様が来場され、一時は渋谷駅前のビックカメラ前まで長蛇の列ができていたと聞いています」

【⑤ 3年ぶりのハロウィン(2022年10月)】

毎年、世間から注目を集める渋谷ハロウィン。
今年は実に3年ぶりの行動制限なしとなったわけだが、同時期に行われていたW杯の際にも多くの人出で賑わっていた

こうした状況下で、齋藤氏はクラブ運営者としての立場から、次のような見解を示す。

「以前はハロウィンといえば、クラブの“繁忙期”だったわけですが、渋谷の街中でハロウィンが盛り上がりを見せ始めた頃から、クラブには入らずにコスプレや仮装をして街を練り歩く人が飛躍的に増えたと感じています。
ハロウィンらしいお祭り気分を味わったり、路上でナンパしたりする光景を見るのは、クラブを運営する側からすると、少しさみしい気持ちになってしまいますね」

渋谷の街中は言ってしまえば無法地帯でもある。迷惑行為やハプニングが起きても、取り締まる警察が気づかなければ、見過ごされてしまう。

他方で、クラブの中にはルールがあり、何かハラスメントが起きればスタッフがすぐに仲裁へ入ることができる。

「グローバル・ハーツでは、困っている人がいれば話を聞いたり、迷惑行為を行う相手に対して注意したりするという『ステートメント』を出していて、トラブルの際には適切な対処を行っています。

街中で盛り上がり、日ごろのストレスを発散することもいいことだと思いますが、モラルを保って最低限のルールを守ることが大切なのではないでしょうか」

創ってきた夜のカルチャーを絶やしたくなかった

時代とともに目まぐるしく変化する渋谷の夜。そんななか、ひとつの吉報が舞い込んだ。

惜しまれつつも、9月に閉店したビジョンの後を継ぐ新たなクラブ「ENTER」が、12月15日に渋谷の神宮前にオープンした。

新店舗を出店する背景について、齋藤氏はこのように話す。

「長年、さまざまなイベントを通してアーティストの活躍やフックアップを支援し、世界へと出ていけるようなクラブカルチャーを創ってきた自負もあり、なんとかこの流れを絶やさずにできないものか。箱の大小問わず、ビジョン、コンタクトの閉店から間を置くことなく、クラブをオープンさせたいと考えていました。

ビジョンのような規模の広さはありませんが、引き続き大規模クラブをオープンする道は模索しつつ、まずはENTERで新たなカルチャーを育んでいきたいです」

ENTERが構えられる神宮前周辺には、スケーターなどのストリートキッズが集う場所が点在している。さらに原宿と渋谷を結ぶ明治通り沿いの立地のため、Z世代がパフォーマンスを披露できる場を提供していくという。

「今の若い世代って、音楽もジャンルレスで楽しんでいる。なので、DJも好きな音楽をかけて、ENTERでしか味わえない空間づくりを意識しながら、クラブを盛り上げていきたいですね。
ここで経験を積んだ若手のアーティストが、近い将来出すであろう大箱でも活躍できるような循環が生み出せればいいなと思っています」

2023年の渋谷のナイトカルチャーは「変化の年」

最後にこれからの渋谷、2023年の展望について齋藤氏へ聞くと「変化の年」だと語る。

「先にも言いましたが、2022年はクラブ業界におけるひとつの時代が幕を閉じた年でした。そういう意味でも2023年は、また新しい“変化”が少しずつ生まれてくる。そう捉えています。
インバウンドが復活し、訪日外国人に受け入れられるナイトシーンを創出することはもちろん、次世代を担う10~20代が、どうナイトカルチャーを受け入れ、それを広めていってもらえるか。

これを考えることが、とても大事になると考えています。
ENTERに集まってくる若い世代が、この先5年後、10年後に花開くことを見越し、これまで育んできたナイトカルチャーを途切れさせず、クラブ従事者としてシーンを活性化できるよう尽力していきたいと思っています」

取材・文/古田島大介

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