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一瞬キラリと光っては消えていく若き才能たち。アリシア・シルヴァーストーン、ブラッド・レンフロ… この年、そんなスターが多いのはなぜか?

集英社オンライン / 2022年12月21日 12時1分

若くして名声を手にしたスターには、出演作の選択ミスや、健康上の理由、はたまた単に運がなくて消えていく人たちも多い。いっぽうで、努力の果てに栄冠を手にするブラッド・ピットのような俳優も。

覚えていますか、アリシア・シルヴァーストーン

1996年の表紙メンバーは、超大物をのぞくと今ではほぼ見かけなくなったスターが多い。5月号のクリスチャン・スレーター(『ブロークン・アロー』1996)、6月号のサマンサ・マシス(同)、8月号のヴァネッサ・ウィリアムス(『イレイザー』1996)…。そして、2度も表紙を飾ったふたりが印象深い。

まずは、アリシア・シルヴァーストーンだ。16歳のときにロックバンド、エアロスミスのミュージックビデオ「Cryin’」に登場し、ティーンアイドルとしての地位を確立。その後もエアロスミスのMVに出演を続け、その1本「Crazy」ではヴォーカル、スティーヴン・タイラーの実娘で、のちに『アルマゲドン』(1997)などで大ブレイクするリヴ・タイラーと共演している。



女優としては『ダリアン』(1993)を経て、学園コメディ『クルーレス』(1995)でブレイク。カリフォルニア育ちの健康的な美貌に恵まれた彼女に、「ロードショー」編集部はかなり早い時期から目をつけていた。ゆうばり国際映画祭で来日すれば北海道まで取材に飛び、しっかり信用を得る。以後、来日のたびに特別に撮影時間を確保、「ロードショー」表紙の写真は、すべて撮り下ろしだという。

カメラマン亀井重郎氏の写真は、アリシア本人もお気に入りだった
©ロードショー1996年9月号/集英社

だが、『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997)のバットガール役をピークに、キャリアは下降してしまう(この駄作は、主演のジョージ・クルーニーや悪役のアーノルド・シュワルツェネッガーなどすべての出演者にとって汚点となっている)。

シルヴァーストーンは、『クルーレス』で獲得した名声を生かして自身の製作会社を立ちあげるなど、出演作を自ら開発していた。それでも、次のヒットを生み出すことができなかったのはなぜか? 単純に選択眼がなかったのか? 当時ハリウッドに蔓延していたエイジズムの犠牲? ただし、もうひとりに比べれば、今でもTVシリーズなどで女優として活動を続けているから、シルヴァーストーンはまだいいほうだ。

消えてしまったもうひとりのスターとは、ブラッド・レンフロだ。ジョン・グリシャム原作の法廷サスペンス『依頼人』(1994)で、物語の鍵となる目撃者の少年役に大抜擢。11歳でのデビューである。ちなみに、このときのキャスティング・ディレクターは、『ターミネーター2』(1991)でエドワード・ファーロングを発掘した伝説の目利きである。

遅咲きのブラッド・ピット、出世の理由は

その後、レンフロは『マイ・フレンド・フォーエバー』(1995)『スリーパーズ』(1996)ーー本作ではブラッド・ピットが演じるキャラクターの子供時代を演じていたーーと、着実に活躍の幅を広げていく。才能と美貌と可能性に恵まれたレンフロだが、若くして名声を手にした子役によくあるように、ドラッグで道を踏み外してしまう。逮捕や療養施設入りを繰り返し、2005年に過剰摂取でこの世を去ってしまった。25歳だった。

将来を嘱望されていながら残念なことになったブラッド・レンフロ
©ロードショー1996年11月号/集英社

1996年に最多3回表紙を飾ったのは、ご存じブラッド・ピットである。『セブン』(1995)が公開され、ついに名実共にトップ俳優となった。さきほどアリシア・シルヴァーストーンやブラッド・レンフロの失速を嘆いてみたものの、逆に言うと、いまでもハリウッドのトップでいるピットのほうが異常なのかもしれない。

ブラッド・ピットにとって幸運だったのは、比較的遅咲きだったことだ。1963年生まれの彼が注目を集めたのは、30歳前後になってから。それまで売れない俳優として辛酸をなめてきた彼が、巡ってきたチャンスをみすみす無駄にするような真似をするはずがない。

さらにツイていたのは、気鋭の映画監督とパートナー関係を築くことができたことだ。『セブン』は、ミュージックビデオの鬼才と呼ばれつつも、監督デビュー作『エイリアン3』(1992)で大失敗したデヴィッド・フィンチャー監督の第2作だった。野心作に出演したいピットと、映画化を実現できる主演俳優が欲しいフィンチャー監督の思惑が一致し、本作が実現。その後、『ファイト・クラブ』(1999)『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)でもタッグを組むことになる。

さらにさらに、フィンチャー監督を通じてスティーヴン・ソダーバーグ監督とも懇意になり、『オーシャンズ』シリーズのレギュラーとなる。ハリウッドの王道映画に出演しながらも、個性派監督との仕事を重視していることは、『12モンキーズ』(テリー・ギリアム監督/1995)から『スナッチ』(ガイ・リッチー監督/2000)、『バベル』(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督/2006)、『バーン・アフター・リーディング』(コーエン兄弟監督/2008)、『イングロリアス・バスターズ』(クエンティン・タランティーノ監督/2009)、『ツリー・オブ・ライフ』(テレンス・マリック監督/2011)といった出演作を見れば、一目瞭然である。

◆表紙リスト◆
1月号/サンドラ・ブロック 2月号/ブラッド・レンフロ※初登場 3月号/アリシア・シルヴァーストーン 4月号/ブラッド・ピット 5月号/ジョン・トラボルタ&クリスチャン・スレーター※両名とも初登場 6月号/サマンサ・マシス※初登場 7月号/レオナルド・ディカプリオ 8月号/アーノルド・シュワルツェネッガー&ヴァネッサ・ウィリアムス※後者のみ初登場 9月号/アリシア・シルヴァーストーン 10月号/ブラッド・ピット 11月号/ブラッド・レンフロ 12月号/ブラッド・ピット
表紙クレジット ©ロードショー1996年/集英社

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