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昭和期バブルとは異なる今の「不動産バブル」。2023年「円安」「価格」「金利」はズバリどうなる?

集英社オンライン / 2022年12月24日 13時1分

不動産価格の高騰、進む円安、上昇も懸念される住宅ローン金利……マイホームの買い時は一体いつになるのだろうか? 気になる2023年の不動産市況について、ホームインスペクション(住宅診断) 業界実績No.1の株式会社さくら事務所会長で不動産コンサルタントの長嶋修氏に取材した。

2022年も不動産価格は高騰し続けた

出典:国土交通省

「東京五輪が終われば価格は下がる」
「コロナ禍で不動産価格は暴落する」


これまで不動産市況について様々な予測がされてきたが、蓋を開けてみれば2022年も不動産価格は高騰基調。新築マンション価格は、もはや一般的な給与所得者には手が届かない水準にまで達した。コロナ禍でも下がることのない不動産価格。その理由について、長嶋氏は次のように考察する。



「コロナ禍で、住まいを見直す人が増えた。加えて、ウッドショックやウクライナ情勢による資材高騰や住宅設備が入ってこない状況も、価格高騰に拍車をかけた」

円安がもたらす「市場の二極化」

10月には「1ドル=150円」という歴史的な円安を記録したが、これも不動産価格の高騰に影響しているのだろうか?

「円安によって日本の不動産の魅力は高まったが、それによって海外マネーが流入したのは局所的。円安になる前から、安く、安定している日本の不動産の魅力は大きかった。海外のファンド系マネーは、すでに2020年後半から日本の不動産市場に入ってきている。もちろん、円安によってそれが加速したことは十分考えられる」

日本でも不動産価格は高騰しているが、それでも他の先進国と比較すれば格安だ。加えて、コロナの影響が少なく、インフレ傾向も小さい日本の不動産の魅力は上がっている。とはいえ、外国人が日本の不動産を購入する理由は投資。
購入エリアは、東京はもちろん2025年の万博開催で注目されている大阪、外国人に人気の高い京都、あるいはリゾート地や地方都市の利便性の高いエリアなどに限定されることが予想される。

長嶋氏は、円安によって日本の不動産市場の“二極化”がさらに進むと懸念する。

「不動産価格が高騰しているとはいえ、全ての不動産が上がっているわけではない。新築マンションは、利便性が高いエリアに供給が集中しているからこそ高騰しているのであり、中古物件の高騰も局所的。地方の空き家の価格が上がったなんてことは聞かない。円安でさらに高級物件や都市部の物件の価格が上がることで、市場の二極化はさらに進むだろう」

昭和期バブルとは異なる今の「不動産バブル」

さらに長嶋は下図のような三極化が進むと予想している。

「厳密にいえば“三極化”。日本の不動産は『価格が維持・あるいは上昇する地域』『下落を続ける地域』『限りなく無価値・あるいはマイナスの地域』の三極化が進んでいる。そして、価格が維持されるエリア、あるいは上昇するエリアはほんの一部。つまり、大半の不動産は今後、価格が下落していくものと考えられる」

昨今の不動産価格高騰は「バブル」と称されることもあるが、昭和期のバブルとは様相が異なる。
2021年の新築マンション価格はバブル期を超え、高騰してもなお売れ行き好調といわれているが、2000年には全国で18万戸以上だった新築マンションの供給数も、10年後の2010年には半減以下の9万戸弱、コロナ前の2019年には約7万戸まで減少。現在の日本の土地総額は約1,000兆円だが、これもバブル期の半分ほどだという。

「昭和のバブル期も、全ての人が高額な不動産を購入できたわけではない。買えない人は、都市近郊エリアや郊外にまで手を伸ばして購入していた。だからこそ、全国的に不動産価格が上がった。しかし、今は高騰する物件は限定的。加えて、住宅ローンの金利も当時とは大きく異なる」

賃金が上がらない“失われた30年”を経た今、バブル期を上回る価格の新築マンションを購入できる理由は、歴史的な低金利にある。バブル期の住宅ローン金利は、7%以上。それに比べ、今は0.3%、0.4%で住宅ローンが借り入れできるうえに、住宅ローン控除で0.7%が戻ってくる。平均価格がバブル期を超えたからといって、今は当時の状況と全く異なるのだ。

2023年、金利上昇で市場の三極化はますます進む?

長らく金融緩和政策を維持してきた日本だが、2022年には米国と日本の金利差に起因する住宅ローン固定金利の上昇が見られた。2023年4月には、異次元緩和“黒田バズーカ”を仕掛けた張本人でもある日本銀行の黒田東彦(くろだ・はるひこ)総裁が任期終了を迎える。

金融政策の転換が見られれば、“史上最低”ともいえる水準を維持していた住宅ローンの変動金利も上がる可能性がある。金利上昇もまた、日本の不動産市場の三極化を進めるものだと長嶋氏は考える。

「金利が上がれば、不動産価格は下落するのが自然の摂理。しかし、全ての不動産が同様の下がり方をするのではなく、ここでも三極化が見られるはずだ。つまり、価格を維持する不動産、金利の影響を小さく受ける不動産、大きく影響を受ける不動産に分かれるだろう」

金利はどれほど上がるのか?

金融政策の転換が見られたとしても、長嶋氏は、米国のような急激な利上げや住宅ローン金利の上昇は見られないと推察する。

「日本銀行は、金利を上げたくても上げられない状況にある。日銀は大量の国債を抱えており、金利を上げすぎると債務超過に陥ってしまう。ざっくりとした試算だが、日本の金利上昇のラインは2%ほどが限度だと考える」

マイホームの買い時はいつか?

高騰している不動産価格を横目に、マイホームの買い時を見極めている方も多いのではないだろうか。2023年、金利が上がるとすれば、価格が下がる不動産も出てくるはずだ。
現金で購入する人なら、価格が下がれば買い時だといえるだろう。しかし、多くの人は住宅ローンを組んでマイホームを購入する。
金利上昇局面かつ不動産価格が下落局面にあるときの不動産の買い方について、長嶋氏はこう助言する。

「どれほど金利が上がって、どれほど不動産価格が下がるかは、蓋を開けてみないことにはわからない。エリアによっても変わってくる。大事なのは、将来を見据えて月々の返済が無理のない範囲に抑えられるかどうか。今は、自分で住宅ローンシミュレーションができる時代。

借入時点の返済額および金利が上がったときの返済額、あるいは同じ返済額で金利が上がったときの借入額をシミュレーションして予算を決める。資産価値が維持できるかも気にするべきではあるが、マイホームに関しては家族の都合や将来が優先されるのではないだろうか」

不動産市場は、転換期を迎えている。市場の三極化が進むと考えられる2023年には、国際情勢や市況とともに、購入したいエリアの動向、そして家族の希望や将来設計など、ミクロな視点も持って買い時や買い方を検討するべきだろう。

取材・文/亀梨奈美

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