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大谷翔平はMLBで104年ぶりとなる二桁勝利、二桁本塁打をなぜ、達成できたのか? エンゼルス番記者が語る舞台裏

集英社オンライン / 2022年12月22日 18時1分

今年、MLBでは104年ぶりとなる二桁勝利、二桁本塁打を達成したエンゼルスの大谷翔平。この大偉業はいかに成し遂げられたのか? エンゼルスの番記者で『SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』の著者でもあるジェフ・フレッチャー氏が、その舞台裏を明かす。

「2019年9月に行った左膝の手術がキーだった」

――2018年のルーキーイヤーから大谷翔平選手を取材しているフレッチャーさんですが、ジャーナリストとして率直に感じる彼の魅力はどこでしょうか。

言うまでもなく、彼のプレーそのものが圧倒的で歴史的だということです。だって、このような偉大な記録を残した選手は、この100年間ひとりもいなかったわけですからね。



私は幸いにも球場の記者席の最前列でその様子を取材し、彼について書くことができる。ジャーナリスト冥利に尽きるというか、名誉なことだと思っています

――エンゼルスに入団当初は二刀流に関し懐疑的な意見もありました。フレッチャーさんとしてはどのような見解だったのですか。

正直、2018年シーズン前のスプリングトレーニング時点の印象では、投打ともにメジャーのレベルには達していませんでした。正直、これはちょっと厳しいのでは、といった見立てでしたが、球団は『もうちょっと待ってほしい。彼は絶対にできるから』と私たちに言いつづけていたんです。

今思えばこの球団の大谷に対する信頼は正しいものでした。そして大谷はデビューすると、最初の1週間でピッチャーとして初勝利を挙げ、ホームランを3本放ちました。これで私は完全に彼への見方を変えましたね

――しかしその後、二刀流をやりつつもトミー・ジョン手術や左膝の手術もあり、2020年シーズン終わりまで真の実力を発揮できずにいましたね。

2020年の終わりの地点で、ひょっとしたらこれで終わりではないかと思いもしましたし、また『メジャーでやっていくのならば打者に専念すべきだ』という意見がアメリカでは大半でした。

ただ私としては2021年にもう1度だけチャンスを与えるべきだと考えていました。もしこれでチャンスを掴めなければ、本当に大谷のメジャーでの選手生活は終わるだろう、と。

――そして誰もが驚愕した2021年、MVPを獲得する活躍はもちろん、二刀流としてMLBの歴史に名を刻む偉業を成し遂げました。

本当に信じがたいことでした。この活躍は2019年9月に行った左膝の手術が鍵になっていると私は考えているんです。術後の2020年シーズンはコロナ禍もあっていまいちでしたが、膝の負傷が完全に癒えたことにより、オフから2021年にかけ、彼がやりたかった下半身のトレーニングを集中してできるようになりました。

それに付随して体全体のコンディションも高まっていった。あとメジャー4年目ということもあり、経験を重ねながらメンタルの面でも追いつくことができました。神様に与えられた「肉体的な資質」プラス「心理的な強さ」の組み合わせが大谷の躍進のポイントだったと思います。

サイ・ヤング賞獲得の条件は「中4日」

メジャー取材歴24年で、米野球殿堂入りを決める投票資格も持つジェフ・フレッチャー氏。2013年よりエンゼルスを担当し、大谷の取材に関してはMLBルーキーイヤーから4年間にわたって密着取材

――さて今シーズン、前年の大活躍もあり期待度は高かったと思うのですが、フレッチャーさんとしては、なにか懸念材料はありましたか。

大谷本人はまた同じような成績を残せると自信満々な様子でしたが、メジャーの歴史上、2021年のような投打ともに活躍をした選手は誰もいないわけです。それを2年連続でやるというのは、正直あり得ないと思っていました。しかし大谷はこの予想を見事に裏切ってくれたんです。

――とくにピッチングに関しては15勝9敗、防御率2.33と前年を大きく上回りました。

明らかなのは、まずコントロールがよくなったことです。2021年の大谷は、100マイル(約160キロ)を超えるストレートを投げてはいたものの、コントロールが悪くフォアボールを与え、また被弾することも少なからずありました。

しかし今季はフォアボールが減り、ピッチャーとしての成長を感じました。あとはスライダーの質が向上し、有効なボールになっていましたね。

――変化球と言えば8月のマリナーズ戦からツーシーム(シンカー)を投げるようになりました。

ツーシームを投げた数自体はそれほど多くなかったと思うのですが、要所要所で非常に効果的だったと思います。そもそもシーズン中に新しい球種を加えピッチングをすること自体、信じられないことです。

また大谷はストレートと腕の振りが変わらず変化球を投げられるので、左右対になるツーシームとスライダーの存在は、バッターから見ればやっかいだったと思いますね。

――また顕著だったのがスコアリングポジションにランナーを置いた状態での被打率が低かったことです。

まさにおっしゃる通りですね。得点圏での被打率は昨年も低い数字でしたが、ピンチの場面での強さは、彼がメジャーに来てから伸びた部分だと思います。

一番大事なときのために力を貯めておくというか、試合全体を見てピッチングをマネジメントできる能力は、彼に新しく備わってきた部分だと思いますね。いずれにせよ投球に関しては、今年のほうが去年よりも圧倒的に良かったです。

――例えば今後、ピッチャーとして最高の栄誉であるサイ・ヤング賞を大谷選手が受賞するにためには、なにが必要になりますか。

まずは投球回数を増やすことですね。今年は中5日で登板していましたが、これを中4日で続けることができれば、確実にサイ・ヤング賞に近づくと思います。

明らかに薄くなったホームランへの意識の変化

――ではバッティングですが今季は打率.273、160安打、36本塁打。ホームランの数は昨年(46本)よりも少なくなりましたが、打率は昨年(257)よりも上がり、全体的に確実性が増した印象です。

2022年の特徴として言えるのは、シーズンを通して好調を維持できたということです。2021年は8月から9月にかけ不調な時期がありましたからね。またホームランの数が減りましたが、昨年はホームランを打とうという意識が非常に強かったんです。それで強振し過ぎて三振を喫したり、凡打で打率を下げることがありました。

一方、今年はホームランへの意識を強く持たなかったことで、シーズンを通して調子を維持できたという見方もできます。またチームメイトのマイク・トラウトが復帰したというのも大きかった。

昨年まで大谷ひとりに掛かっていたプレッシャーがトラウトという大打者が存在したおかげで分散され、気持の部分でも楽に打席に立つことができたと思いますね。

――なるほど。大谷選手のバッティングにおける最大の特徴はどこだと思いますか。

振ったときの力感がないことでしょうね。脱力したスイングに見えるのに、逆方向に強く大きな打球が打てる。私は毎日見て感じるのですが、他の人ができないことを彼は軽々とクリアしてしまう印象があります。本当にスペシャルワンの選手だと思いますね。

取材・構成/石塚隆 撮影/村上庄吾 写真/AFLO

SHOーTIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男

ジェフ・フレッチャー (著), タカ大丸 (翻訳)

2022年7月12日

1980円(税込)

384ページ

ISBN:

978-4198654979

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