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【1億総投資社会へ】予想以上に大盤振る舞いのNISA改正で、老後2000万円問題も余裕でクリアか

集英社オンライン / 2022年12月26日 14時1分

2003年に金融庁が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げて20年が経過。2024年から改正される新NISAでは、本当にそんな世界が実現するかもしれない、と思うほどインパクトの大きな改正が行われようとしている。現行の制度とどう変わるのか解説する。

現行の制度は煩雑だったが、新NISAはシンプルに

本来、投資で得た利益には20%(復興増税除く)が課税されますが、NISA制度を活用した場合、それが非課税になります。現在、NISAには「一般NISA」、「つみたてNISA」、「ジュニアNISA」の3種類があります。

ジュニアNISAとは子供の名義で投資できるNISA制度で、2023年に終了することが決まっています。成人している人は、これまでは「一般NISA」か「つみたてNISA」のどちらかを選択し利用する必要がありましたが、これらは1本化されることが決まりました。



現行制度では、どちらも年間に投資できる金額や非課税期間の違いなどがあり、自分の経済状況に合わせて選ぶことができるのですが、これが初心者にとっては難しく感じることが多く、ハードルになっていました。

筆者もファイナンシャルプランナーとして相談者に解説する機会が多くありますが、一度で完全に理解できる人はほとんどおらず、煩雑な制度というのが正直な感想です。

金融庁もその点は指摘しており、今回2024年度から改正される新NISAでは、その煩雑さは少し解消されています。

どう改正されるかは一つずつ解説しますが、概要は上記の図の通りです。
一言で言えば、NISA制度は1本化され、非課税で投資できる金額が現状の倍以上に増えるということです。

年間投資枠は最大360万円

まず現行制度では、NISA制度で購入した投資信託などを非課税で運用できる期間は一般NISAでは5年、つみたてNISAは20年と期間の定めがありました。しかし、新NISAでは運用できる期間の制約はなくなりました。

また現行制度は投資できる期間にも定めがありました。例えば、つみたてNISAの場合であれば2042年までとなっていたため、早く制度を利用しないともったいないとの不安も生じる制度でした。

出典「金融庁 つみたてNISAの概要」

しかし、新NISAでは期間の終わりがなくなったため、ライフステージに合わせて、投資したいときに投資するということができるようになります。

余談ですが、一時的な措置などがそうでなくなること(恒常的)を恒久化といいます。そのため、ニュースなどではNISA制度が恒久化へ、と表現されます。

次に投資できる金額ですが、年間360万円まで投資することができるようになります。つみたてNISAをすでに利用されている方は、そのままシンプルに年間360万円まで上限が増えると思ってください。

2024年より「一般NISA」と「つみたてNISA」が1本化されることにより、この360万円の枠のうち、従来のつみたてNISAに当たる部分が120万円、一般NISAに当たる部分が240万円となります。この一般NISAに当たる部分は成長投資枠と呼ばれています。

なぜこの枠があるのかというと、つみたてNISAで買えるのは投資信託のみですが、一般NISAでは株式を買うことができたからです。

新NISAでは一本化されるため、つみたてNISAで買えていた投資信託は成長投資枠でも購入でき、360万円の枠を全て投資信託で購入できます。しかし、株式で個別銘柄などを買いたい人の場合は、その上限が240万円になるということです。

ちなみに高レバレッジ型は成長投資枠で購入できないとのことですので、一部で人気のレバナスなどはNISA制度では購入不可となる見込みです。

富裕層優遇批判への対策

続いて生涯投資枠の1,800万円についてですが、これはNISA制度で投資できる金額の上限です。これは時価ではなく簿価ですので、買付金額の上限です。これがなければ、富裕層の税金逃れだという批判が生まれるため、上限があると思っておくといいでしょう。

事実、一人当たり1,800万円の枠がありますので、夫婦であれば3,600万円。さらにiDeCoなどもありますので、老後準備としては十分すぎる金額です。

つみたて投資の場合、「126の法則」を利用すればおおよそ何年で元本が2倍になるかを計算することができます。仮に6%の運用益が期待できる場合、126÷6で計算して出た21という数字が2倍になる年数ということになります。

つまり、6%の運用益が期待できる商品に積立投資すればおおよそ21年近くで元利合計が元本の2倍になるということです。そう考えれば、フル活用できる人はいわゆる老後資金2,000万円問題も余裕でクリアできるはずです。

一般庶民と呼ばれる人が、老後に向けて元本だけで1,800万円も拠出できるかは疑問ですが、個人投資家としてはこれ以上ないほどの税優遇措置です。

また、この生涯投資枠には現行のNISA制度で投資している金額は含まれません。もし、2018年からつみたてNISAで毎年40万円投資していた人であれば、2018年〜2023年の6年間の合計240万円に加えて、2024年以降にNISA制度で最大1,800万円を利用できます。

金融増税が視野に入っているのかも!?

正直、今回の改正は予想していないほどの大盤振る舞いでした。なぜなら、これほどの非課税枠を用意すると、一般的な所得の人は投資で得た所得に対する税金を払うことはなくなると思われるからです。

令和3年度の家計調査の金融資産保有額を見ても、全世帯の中央値は700万円、金融資産を保有していない世帯も含めると金融資産保有額の中央値は300万円です。よほどの高所得者でない限り、枠が足りないとは思わないでしょう。

一部の投資インフルエンサーは足りないと不満を言っていますが、そもそも彼らは投資をしなくても老後不安など持たない所得層の人です。一般的な所得層であれば、生涯投資枠を使い切ることもないでしょう。

筆者自身、生涯投資枠1,800万円をフル活用できる人は、いわゆる老後2,000万円問題とは縁のない人だと思っています。

今回のNISA改正と一緒に富裕層への課税強化も税制大綱に記載されており、今後所得が高い人には、より負担をお願いする社会になると想像できます。
仮に投資で得る利益についても増税されるとなった時でも、NISA制度を活用している一般的な所得層にはほぼ無縁ですし、反対意見が多く出にくいのではないでしょうか。

将来の税制がどうなるかは不透明ですが、現状、NISAについては2024年からよい方向へと改正されることは決まったわけですので、投資をしたことがない人もこれを機に興味を持ち、少しずつ無理のない金額から投資を始めるいい機会だといえます。


文/井上ヨウスケ

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