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【漫画あり】紅白出場から32年、今も再結成が望まれる「たま」。元メンバー石川浩司は「もともと商業的に売れると思ってやったバンドじゃないんで…」。漫画も話題に

集英社オンライン / 2022年12月31日 9時1分

「このマンガがすごい! 2023」にランクインした漫画『「たま」という船に乗っていた さよなら人類編』(双葉社)。その原作者で『さよなら人類』の大ヒットでその名を世に知らしめたバンド「たま」のドラム、石川浩司さんに楽しい昔ばなしと現在をお聞きした。(後編)

さくらももことの思い出

――「たま」としてツアーで全国をまわるようなこともあったと思うんですけど、そういう時のことで覚えていることはありますか?

もともと友達から始まってバンドになってるから、ライブが終わって、スタッフの人たちと打ち上げをして、特にホールをまわる場合はスタッフも大勢いたんですけど、だいたいスタッフさんも次の日が早いんで一次会で終わって。2次会はメンバー4人だけになって赤ちょうちんの飲み屋に行って飲んでるっていうことが多かったですね。



――もともと飲み友達でもあるわけですもんね。

あと、知久(寿焼)君はやらないんですけど、他の3人は麻雀が好きだったんで、そこにもう一人スタッフから麻雀仲間を呼んで、徹夜で麻雀して、移動のバスの中で寝てツアーをまわるということはありましたね。

――ライブの後に徹夜で麻雀って、本当の仲良しですね。「たま」というと、さくらももこさんがすごく「たま」ファンで、エッセイにも名前を出されたりしていた記憶があるのですが、さくらさんとの思い出などはありますか?

普通に友達だったんで、うちの夫婦と、さくらももこさんの当時の夫婦で、お互いの家に泊まりに行ったりとかしてました。

――さくらさんはどんな方でしたか?

一番近いのは泉ピン子さんですね(笑) 本当におしゃべりが止まらなくて、結構仕事が忙しくて寝てないはずなのにずっとしゃべって、すごいパワーだなと思いましたね。ちびまる子ちゃんが大人になったらっていうそのままで。
結構健康オタクだったから、まさか自分たちより早く亡くなるとは思わなかったですね。

バンド名は「ゴミ」「松葉くずし」!?

――石川さんが「たま」での活動を通じて好きなアルバムとか曲ってありますか?

あんまり嫌いな曲はそもそも入れないというか。それぞれが曲を作って、リハーサルの時に「たまの新曲発表会」みたいな感じでお互いの曲を持ち寄るんですけど、曲によっては「これはたまでやる感じじゃないかな」っていうのがそれぞれにあって、でもそれぞれソロ活動も並行してやっていたので「これはソロでやるわ」っていう取捨選択はありましたけどね。

――なるほど。

ライブに関しては、柳原は声がいいし、「たま」は基本的にコーラスグループみたいなところもあったので、4人時代の方がコーラスも厚くなるんで、そこはよかったと思います。
でも、アルバムに関しては、むしろそこから3人になった時の方が、4人の時はメジャーレーベルで締め切りがはっきりしてたから「もう少し練って作りたいな」って思っても「この日までにレコーディングを終わらせないと」っていうのがあったんです。

だけど、それ以降は自分たちのレーベルでインディーズという形でやっていたので、とことん作れたので、3人時代のアルバムの方が自分たちではよくできてると思うんですけどね。『いなくていい人』ってアルバムとか『東京フルーツ』とか。

――どちらも音作りにすごく凝っていた印象があります。

でも、たまファンの人でもだいたいは「『さんだる』買いました」とかが多くて、3人時代の「地球レコード」(3人時代の「たま」の作品を今も販売しているレーベル)になってからのアルバムも持っている人はガクッと減るんですよね。
ぜひそういう人たちに3人時代のアルバムをぜひ聴いてもらいたいですね。

――その一方で「しょぼたま」っていうアコースティックでシンプルな構成のバージョンもあったり、3人時代のたまも大好きです。漫画の中では「たま」というバンド名が決まるくだりも印象的でした。

バンド名を考えようっていうことで「ゴミ」とか「松葉くずし」とか色々考えたんですけど、ちょっとパンクバンドっぽいなと思って。
とにかく、略語が嫌いだったんですよ。長い名前のバンドって絶対略されるじゃないですか。サザンオールスターズだって、フルで言う人はあまりいなくて、たいがい「サザン」って言う。二文字の「たま」なら略されないなって。

YouTubeのおかげで世代を超えて知ってもらえる

――これ以上シンプルなバンド名もそうそうないですもんね。

あと、バンド名で音楽性がわかるような、「なんとかブルースバンド」ならブルースやってるんだなとか、そういうのじゃなくて、バンド名だけじゃどういうジャンルかわからないのにしたいっていうのもあって、名前としてしか意味のない言葉にしようと。
そこら辺に歩いている猫を、名前知らなくても適当に「たま、たま」と呼んだりする、その「たま」でいいんじゃないかって(笑)

――犬でいうポチみたいな、漠然とした名前ということですよね。

あと、「たま」っていう言葉は非常に色々なところで使われていて、先ほど通ってきた蕎麦屋さんでも(取材場所の近くに「たまの里」という蕎麦屋があった)、ひらがなの「たま」は色々なところで使われてるんですよ。それを見るたびごとに僕らのことを思い出してくれる(笑)。
なんでしたっけ、あの映像の中に……ああ、サブリミナル効果!

――なるほど、あちこちで「たま」を思い出すと。当時、「たま」という名前は僕ら小学生ファンの間でも議論の的になっていてあれはつまり球体で、「地球」を意味しているんじゃないかとか言っていました。

この間、イベントでお笑いの「どぶろっく」とご一緒して、楽屋で一緒だったんですけど、あの人たちは下ネタばっかりやってますけど、「僕ら昔、『玉』っていうバンドやってましてねー」と言ったら、「ネタにさせてもらってます」って言ってました(笑)

――「たま」には本当に色々な意味がありますもんね。ちなみに今回の漫画化によっての反響はあったりしますか?

それは結構ありますね。まったく僕らのことを知らなくて漫画を読んで、「今もメンバーの人が活動してるんだ」って知って僕らのライブに来てくれたり。親が買った漫画を子どもが読んでYouTubeで検索して「たま」の曲を聴いたり。そういうパターンも多いんですよ。

――なるほど、漫画から入って「たま」を知るという。

僕らのことをリアルタイムで知ってる人はだいたい45歳以上とかなので、イカ天だって30年以上前ですから。
でも、結構、10代、20代の人もライブに来てくれて、「何で知ったの?」って聞くと、だいたい親が持ってたか、「変なバンド好きなら聞いてみろ」って誰かに教わって、YouTubeとかで聴いたらハマったとか(笑)

家庭用ビデオ世代からYouTube世代へ

――検索すればすぐ聴けるわけですもんね。

それも非常にタイミングがよくて、ちょうど僕らがイカ天に出た頃に家庭用ビデオが普及し始めたんで。僕らより前の世代のバンドってほとんど映像に撮られてないんですよ。よっぽど大きなライブとかだとテレビで撮られてるかもしれないけど、手軽には撮られてないから、YouTubeにもアップされないので知られることがあんまりないっていう。

そのタイミングもよかったなと思いますね。まあYouTubeのって基本違法アップロードだから自分で宣伝はしないですけど、実際は結構それのおかげでっていうのもあって。

――これからも新たな聴き手が増えていきそうですね。

やってる当時は見栄えから奇をてらってるだけに見られたり、コミックバンドみたいな受け取られ方も多かったけど、最近は音楽を聴いてファンになってくれるから、若い人の方がより音楽を理解してくれていると思います。

――「たま」の音楽は若い人たちに影響を与え続けてますよね。この前、「団地ノ宮」というバンドのアルバムを買って、ネットにアップされていたインタビューを読んだんですけど、すごく「たま」が好きだと語っていらして、石川さんと一緒にバンドもやっているんですよね? あの方たちもすごく若いと思うのですが。

そうですね。彼女たちは姉妹でやっているんですけど、当然イカ天の頃はまだ生まれていなくて、お母さんがCDを持っていてそれでハマったと言っていたかな。

――新しい世代にも影響を与えているという。その「団地ノ宮」と石川さんの「ホワイトズ」というユニットも楽しみです。ライブもやる予定なんですか?

そうそう。この前もやる予定だったんですけど、その時は僕が体調不良で欠席してしまって。ライブの時は僕が上は白いランニングで、下はベージュの半ズボンで、真っ白の靴下を履いて、あの人たちも全部真っ白の衣装で、それで「ホワイトズです」っていう(笑)

「たま」再結成の可能性は…!?

――そういう風に「たま」以外でも石川さんはすごくたくさんのグループで活動していますよね。それは自分の中に色々なモードがあって使い分けている感じなんですか?

そうです。だから、自分が楽しめることが色んな方向にあるので、「パスカルズ」は基本インストバンドだから演奏に集中するし、ソロでギターの弾き語りをする時もあるんですけど、その時は歌なんで、歌う部分はソロでやって、演奏は「パスカルズ」でやって、もっとロックバンドっぽいのがあったりとか、それぞれの楽しみ方でやってるので、色々あるというか。

――「たま」の解散はファンだった自分としてはショックでしたけど、石川さんの中ではいろいろあるモードの一つということなんですね。

そうですね。結局、知久くんとは「パスカルズ」で一緒なんで「たま」が解散しても未だにやってますし、10代の時に出会って還暦過ぎてまさか40年以上もやるなんてね(笑)。

――野暮な質問なのですが、「たま」の再結成みたいなことは……

それはないですね。それはもうね、今さら面倒くさいというか(笑)。柳原(陽一郎)は結構、自分のソロを確立したいというのがありまして、決意を固めてソロ活動をするから「たま」を脱退したっていうのもあって、やっぱり色々なところで「知久くんと一緒にやってよ」「石川さんとやってよ」とか言われるらしいんです。

だけど、一回やっちゃうと他からも声がかかってキリがないっていう話も噂で聞いて、それで他のメンバーと絡むようなことは基本的にはやってないっていうのがあると思うんですけど、残りの3人は、「たま」が解散してからたぶん5、6回以上は一緒にやってますね。

――それは貴重な機会ですね。

それは、知り合いがイベントを企画して「まず3人のソロをそれぞれやってください」と。で、「気が向いたら3人でセッションしてください」と言うんです。で、気が向くんで(笑)。
3人でセッションというか、セッションという名前の実質的には「たま」の再結成みたいな。そういう瞬間的な再結成はあるんです。

「すごろく旅行」、「空き缶収集」「袋麺の袋収集」

――そうなんですね! その場に居合わせたかったです。

ちゃんとした再結成は色々と事務的なことも面倒くさいんでやらないんですけど、イベントで一緒だったら今後もセッションはやるかなっていう。つい先々週も、新宿ロフトで「水中、それは苦しい」っていうバンドの企画イベントで、僕と知久くんがソロでそれぞれ呼ばれたのがあったんですけど、僕のソロの後半は、知久くんと「水中、それは苦しい」のメンバーが混ざって「たま」時代の曲をやってました。

――じゃあ、今後もそういうことはあり得ると。「たま」の話とは別ですが、石川さんは「すごろく旅行」(サイコロを振って行き先を決める、石川さんが生み出した旅の方法)とか、空き缶やインスタントラーメンの袋の収集とか、音楽以外にも面白いことをされてますよね。

どれも全部遊びでやってたことで。でも遊びでやってることをなんとかお金にできないかって画策はしますけどね。「たま」だって商業的に売れると思ってやったわけじゃないですし。

――最近は何かしてますか?

新しいのはないけど、前からやってることは継続してますね。空き缶の収集もそうだし、インスタントラーメンの袋も未だにまだ。独身時代は一日一食は食べてたんですけどね。結婚してからはさすがに毎日は食べてないですけど、地方に行ったらそこのインスタントラーメンを買って。

――コレクションが本になったりもしていますもんね。

そうですね。空き缶もそうです。空き缶のために都心から離れた町に住んでるようなもんですからね。

――それはどういうことですか?

場所を取るわけですよ。だから、まるまる一部屋が缶(笑)。そうすると結構広いところに住まないといけないから都心だと高くて、郊外の方になる。

――空き缶のための部屋を考えてこの辺りにお住まいなんですね。それがなければ……。

そうそう、もう少し都心にいける。だってライブは新宿とか下北沢が多いし、うちの妻も西荻窪でお店(石川さんの奥さんは「ニヒル牛」という雑貨店を営んでいる)をやってるんで、そこに毎日通ってるから、もうちょっと都心の方が便利なんだけど。

部屋中ギッシリ3万缶の空き缶

――奥さんからの苦情はなかったですか?

多少は……。でも妻と付き合うより前に缶集めを先にしてたんで、「こっちが先だから」って(笑)

――ちなみに、現在どれぐらいの数ですか?

3万缶はあると思いますよ。

――3万缶! それは一部屋が埋まる感じなんですか?

天井まで、ドアが開くギリギリまでびっしり、だからもう奥に入ってるのは取れないんです、全部を外に出さないと。

――それは圧巻でしょうね。見てみたいです。

昔はテレビに出たりしたこともあったんですけど、今は出せないんです。出すならちゃんと予算を組んで、体育館にトラックで運ぶくらいにしない限り無理で、「ちょっと100缶だけ見せて」っていうのができないんです。

――それはすごそう。

完全に天井まで届いてるから電気もつけられないし(笑)。博物館を作れたらいいんだけど。

――いつかその収集の成果を見られるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました!

「このマンガがすごい!2023(宝島社)」にランクインするなど、注目を集めている『「たま」という船に乗っていた さよなら人類編』。
連載は現在も続いており、続刊も刊行される予定とのこと。この漫画を読んで「たま」を知ったという人も、古くからのファンも、ぜひ、石川浩司さんをはじめ、各メンバーのソロ活動をチェックしてみて欲しい!

『このマンガがすごい! 2023』にランクインの注目漫画!

「「たま」という船に乗っていたさよなら人類編」漫画を読む(すべての画像を見るをクリック)

©石川浩司・原田高夕己/双葉社2021

取材・文/スズキナオ 撮影/南阿沙美

『「たま」という船に乗っていた さよなら人類編』(双葉社)

原作:石川浩司 漫画:原田高夕己

2022年7月21日

1430円(税込)

単行本(ソフトカバー) 256ページ

ISBN:

978-4-575-31715-2

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