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かつての「女性首相候補」も今は昔…高市早苗と稲田朋美。”ぼっち”ふたりの「寂しい年越し」

集英社オンライン / 2022年12月26日 9時1分

互いに保守政治家であり、かつては「女性首相候補」と呼ばれた高市早苗と稲田朋美。岸田政権が増税の方針を掲げたことで、対照的な立ち位置が浮きぼりになったふたりだが、なにやら奇妙な共通点もあるようで……。

高市氏の“ひとり立ち”を望んでいた安倍元首相

増税への反発と支持、保守への迎合とリベラルへの接近、安倍政治の継承と決別――。

防衛費増額の財源について、岸田政権が増税の方針を掲げたことで、安倍晋三元首相の寵愛を受けてきた2人の政治家の対照的な立ち位置が浮きぼりになった。その2人とは、高市早苗経済安全保障相と、稲田朋美元防衛相である。

「防衛費の安定財源を確保するため、岸田文雄首相が2027年度に向けて約1兆円の増税を段階的に行う方針を打ちだすと、高市氏はツイッターに〈賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解出来ません〉と投稿して公然と批判した。



一方、稲田氏は記者たちの囲み取材に応じるかたちで『増税を避けるべきではない。安定しない財源は無責任だ』と話し、岸田氏の方針に賛意を示しました」(全国紙政治部記者)

共に保守政治家を自認し、首相への意欲も隠さない2人。高市氏は2011年まで、稲田氏は初当選から現在まで清和会(現在の安倍派)に所属し、安倍氏に引きたてられたことで政界における足場を築いたことも共通する。

「総理総裁として安倍氏が率いる政権で、高市氏は沖縄・北方担当相や総務相を歴任し、自民党においても四役の1つである政調会長に女性で初めて就きました。一方の稲田氏も、安倍氏によって行政改革担当相や防衛相に抜擢されたほか、高市氏から引き継ぐかたちで政調会長も経験しています」(同前)

政界において華やかな経歴を誇る2人だが、最近の政局で存在感が際立っていたのは高市氏だった。2021年9月の自民党総裁選に出馬すると、100票あまりの国会議員票を獲得。

当初、本命視されていた河野太郎衆院議員の国会議員票を大きく上回ったことから、党内外で驚きをもって受けとめられた。

「総裁選で、高市さんを全面支援したのが安倍さんでした。安倍さんは本気で『高市を総理にする』と言い、その迫力に周囲も圧倒された。高市さんは、パーティー券の売上などを派閥に納める慣行を嫌って、清和会を飛び出したと言われていますが、そのことで清和会のボスである森喜朗さんとは距離があった。

安倍さんはその森さんも説得して、清和会をあげて高市さんを支える態勢を整えたのです。その反面、安倍さんの存在なしで、高市さんが総理総裁を射止めることもあり得ない」(清和会関係者)

総裁選後、高市氏の〝ひとり立ち〟を促すため、安倍氏は高市氏に1つの指示を出したという。

高市氏が清和会に送った“メッセージ”

「安倍さんは『高市さん、勉強会をつくって仲間を集めなければいけないよ』と言っていた。志を同じくする仲間との結束を図り、次期総裁選に向けて準備をしろということです。

それを受けて高市さんも、保守系無派閥の国会議員を中心に声をかけて回ったようですが、1年以上経った現在も勉強会は実現していない。自らの人望のなさに、安倍さんに『なかなかうまくいかない』とこぼしていたといいます」(同前)

出身派閥である清和会では今も強い“高市アレルギー”が残ると言われるが……

今回の増税への対応についても、こうした経緯を踏まえると別の見方ができる。防衛費の増額にあたり、当面の財源に関して、生前の安倍氏は、増税ではなく国債で賄うべきだと主張していたことはよく知られている。

「高市氏が示した増税への懸念は、清和会へのメッセージのように聞こえました。安倍さんが亡くなった後、清和会を継ぐ次のリーダーは未だ決まっていない。そんな清和会に向けて、高市さんとしては『安倍さんの遺志を継いでいるのは自分だ』とアピールしたかったのではないか。彼らの支持がなければ、次の総裁選に出馬することなどできませんから」(自民党関係者)

その一方、高市氏は水面下でこんな動きもしていたという。

「高市さんは、ツイッターで岸田政権の増税方針を批判した後も、官邸側とやりとりはしていて、対外的にどんな発言をするか調整をしていたようなのです。

12月13日の会見で高市さんは『(増税批判について)間違ったことを申しあげていない。罷免されるなら仕方ない』とまで言っているが、岸田さんはこうした発言を意に介していない。

つまり増税反対を巡る一連の高市発言は、官邸も了承済みだったとみられているのです」(同前)

稲田氏は“脱保守”で岸田首相に接近

安倍氏の政治信念の〝継承〟を目論む高市氏に対して、ここ数年、安倍氏や保守派との〝決別〟を指摘されてきたのが稲田氏である。

なかでも稲田氏と保守派の著しい乖離を招いたとみられるのが、2021年の通常国会で、稲田氏が、性的少数者に対する偏見の解消を狙った「LGBT理解増進法案」を提出しようとした一連の過程である。

このところリベラル色を強める稲田氏だが、永田町での存在感はすっかり薄くなったようで……

「法案は、与野党の合意のもとで進める議員立法をめざしたのですが、国会上程後の審議日程を十分確保できない見通しであることなどを理由に、自民党内の手続きをクリアできなかった。

その後、当時の下村博文政調会長が記者たちのかこみ取材に応じた際に『安倍さんが反対しているから、法案を通すのは絶対に無理だ』と舞台裏を明かしています」(別の政治部記者)

法案をめぐる安倍氏の圧力はほかにもあった。産経新聞の論説委員が、署名入りのコラムで、法案の国会提出をめざす稲田氏のことを〈(保守からリベラルに)宗旨変えした〉と批判。すると、稲田氏はこのコラムを自身のツイッターでとりあげ、反論したのである。

「この論説委員は、著名な安倍シンパの1人です。後日、稲田氏のツイッターを見たのか、安倍氏から稲田氏に連絡があり、『(論説委員を)敵に回すと怖いぞ』と、自身の信念を貫こうとした稲田氏の対応を暗にとがめたといいます」(同前)

高市氏が存在感を高めた2021年9月の総裁選では、稲田氏も出馬を模索していた。しかし、安倍氏や保守派との間に距離ができていた稲田氏は、20人の推薦人が集まらずに出馬を断念。

総裁選前に、生い立ちや政治信念をまとめた著作を出版して、その著作を手に自ら議員会館の事務所を回ったが、支持は広がらなかったという。

高市、稲田両氏の悲しい共通点

今回、岸田政権が打ちだした増税方針に賛同した稲田氏。「彼女は従来から財政政策に関しては規律を重視する立場で、今回の発言もブレてはいない」(永田町関係者)という見方がある一方、こんな指摘もある。

「稲田氏は1年で防衛大臣を辞任した後、当時の二階俊博幹事長に近づくことで、筆頭副幹事長にしてもらったと聞きます。そのことを踏まえると、今回の岸田首相の方針に沿った発言も、別の意図があるのではないかと疑ってしまう。

岸田氏が総理総裁をめざして各地方に個人後援会を立ち上げていた2018年、(稲田氏の地元の)福井県にも個人後援会を設立しています。そのことを知った稲田氏は『私も総裁を狙っているのに、私のお膝元に後援会をつくるなんて』と憤慨していた。

岸田首相の後援会は今もあって、仮に稲田氏が総裁選に出馬すれば大きな足かせになるのに、もう、そのことは忘れてしまったのでしょうか」(自民党福井県連関係者)

お互いに保守政治家であり、将来の首相の座を狙っていることのほかに、高市、稲田両氏にはもう1つの共通点がある。

「それは、2人とも、近くで懸命に支えてくれる仲間がいないことです」(前出と別の自民党関係者)

ポスト岸田の動きが活発化しそうな2023年。2人がその有力候補となるために、のり越えなければいけないハードルはまだまだある。


取材・文/集英社オンラインニュース班 写真/小川裕夫 共同通信社

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