引き続き、小川奈緒さんのインタビューをお届けします。
執筆活動に加えて、音声メディア「Voicy」の配信、自宅を使ったワークショップ『Table Talk Gathering』の開催など、忙しい日々を過ごす小川さん。今回の取材は小川さんのご自宅で行いましたが、慌ただしい日常を感じさせないほど清々しい空気に満ちていました。毎日の掃除、ルーティンのヨガ。ヘルシーで前向きな要素しかない小川さんですが、「実は根っこは“陰キャ”なんですよね」と明かしてくれました。後半では、小川さんの幼少期から暗黒の高校時代を救った音楽、出産を経て千葉へUターンした時の思いを振り返ります。また、娘さんの中学受験を経て変化した考え方についても語ってくれました。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む)
地元に帰るのは、希望に溢れていたわけではなかった。小川奈緒さんがUターンして「すこやかな暮らし」を手に入れるまで【私のウェルネスを探して 小川奈緒さん 後編】
集英社オンライン / 2022年12月28日 14時1分
自分のことを労わる時間、自分のことを大切にする時間は、きっと誰かを大切にする時間につながるはず。いつも忙しいあなたには、カラダとココロのウェルネス情報が必要です。いち早く気づいたキーパーソンのインタビュー集。
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7人家族それぞれが好きなことに没頭していた幼少期
小川さんは、千葉県出身。三姉兄の末っ子として生まれ、祖父母が一緒に住む7人家族で育ちました。父親は堅実なサラリーマン、母親はパートから正社員に昇進したキャリアウーマン。共働きの両親は忙しかったので、家を整える担当はきれい好きな祖父母だったと言います。
「父の従兄弟が建築家で、その方が設計した、今思えばモダンなつくりの家に住んでいました。その家を、祖父母がせっせと掃除してピカピカにしていたんですよね。小学生の頃、帰った家が“ピカピカで気持ちいいな”と感じていたことは、今の私の価値観に影響していると思います」
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7人家族それぞれが好きなことに没頭する。家族でありながら、個々で奮闘している様子に、小川さんは「楽しいことは自分から探しに行かないと見つからない」と感じていたそう。家族はみんなスポーツ好きで体育会系だったそうですが、小川さんは、読書や日記を書くのが好きなタイプ。異色の個性も家族は尊重してくれ、文系女子まっしぐらに成長していきます。
「ファッションが好きで小学校高学年には、雑誌『Olive』『mc Sister』を読んでいました。5歳上の姉の影響もあったと思いますが、まわりの子が『りぼん』を読んでいる中、私は家に帰るとファッション雑誌を読んでいましたから。中学生になる頃には、原宿にもよく遊びに行っていましたね」
根っ子はどちらかと言うと“陰キャ”。暗黒の高校時代
中学2年生までバスケットボール部に所属しますが、高校時代は部活に所属しませんでした。小川さんが“暗黒時代”と振り返るのが、この高校時代です。
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「中学校の担任の先生に滑り止めとして勧められた女子校に行くことになったのですが、仏教系の学校で校則がとにかく厳しくて。当時の高校生といえば、『ラルフ・ローレン』のセーターにチェックのミニスカートで闊歩する子が多い中、わたしは『線香色』と揶揄される色のブレザーとジャンパースカートで。ファッション好きだったのに、これはつらいな、と。友達はもちろんいましたが、心の中では早くこの3年が終わってほしいと思っていました」
当時の様子を、小川さんのお母さんは「手をつけられない感じ」「反抗期だった」と言っているそう。今でも「キラキラした人」「輝いている人」として扱われそうになると、「自分のキャラじゃない、と思ってしまう」という小川さん。そんな気持ちになるのは「この高校時代の経験が後を引いているのでは」と言います。
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「子どものころから一人で文章を書くのが好きだったし、多分、根っこはどちらかといえば“陰キャ”(陰気なキャラクター)なんですよね。女子高生らしい、他の子たちが経験するようなキャッキャした学生時代を過ごせなかったから、千葉の田舎で“くすぶっていた”という表現がぴったりだったと思います」
文章力を武器に大学入学、編集者としてキャリアを積む
そんな暗黒時代を支えたのが音楽でした。音楽雑誌『rockin’ on』を熟読し、高校時代を通してイギリスのロックバンド、ザ・スミス、そしてU2にハマり、ヘッドフォンで音楽を聴いて歌詞を覚えていたそう。女子校が肌に合わないと感じていたことから、大学は共学の4大に入りたいと思うように。高校2年から予備校に入り、大学は晴れて、早稲田大学の第一文学部に入学します。
「小論文が得意だったんです。他の大学もいろいろ受けたんですが落ちて、結果的には国語を武器に大学に入った感じです。大学に入ってみたら、趣味を通じた友人ができ、とても楽しかったです」
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大学卒業後は、編集者としてのキャリアをスタート。ファッション誌などを手がけ、29歳でフリーランスに。34歳で結婚、36歳で娘さんを出産します。そして38歳で実家のある千葉へ引っ越します。現在の小川さんの活動を考えると、千葉への引越し、古い日本家屋の一軒家を手に入れたことが転機になったとも言えます。
ファッションの仕事から執筆にシフトする覚悟を決める
「千葉に帰ってくるのは、希望に溢れていたわけではないんですよ。以前住んでいた世田谷だと家賃の負担が大きく、子育てと仕事の両立もむずかしかった。戻ってくれば、実家も頼れるから子育てをしながら働きやすくなる。前に住んでいた家も好きだったので、その時からすでに家好きというベースはあり、それを発展させられる家、土台になる家を探して、この家を見つけたんです。そして、いい建築家と出会えて納得のいくリノベーションができたことで、この家がもっと好きになれたと思っています」
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小川さんの最新著書『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)の終盤に綴られているエピソードが印象的でした。千葉に引っ越してから、とあるブランドの展示会に足を運んだ帰り道、憧れの先輩や懐かしい仲間に会えて楽しかったはずなのに、どこか心がむずむずし、体にじんましんが出てしまったという話です。
「その時はファッションの仕事を減らして、著書の執筆にシフトしていこうとしている時でした。でもまだ著作も少なかったですし、毎年1冊本を出すという目標を達成できない年もあって、結果を出せていない不安や、やっぱりファッションの仕事もやったほうがいいのかもと迷いがありました。でも、その一件で、“自分がいる場所はそっちじゃない”“居場所はこっちなんだ”と決まったようにも思います。
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当時は、毎回自分から企画を持ち込んで出版していたんです。すごく求められていたわけでもなく、自分がやりたいことをやっていただけ。出した本もそれほどヒットするわけでもなく、次の本の声がかかるわけでもなくて、自分が選んだ道に自信がもてないわりに肩には力が入っている状態だったと思います」
娘の中学受験と更年期らしき不調を経て、仕事観が変化
仕事観を変えるきっかけになったのは、娘さんの中学受験。小学4年の半ばからの2年半、毎日修行のように娘さんの受験勉強に並走してきた時間が終わりました。その間にも本を2冊出せたことは奇跡でもあり「自分がやりたいことができているありがたさ」を痛感したとか。受験勉強期間は、ストレスと睡眠不足でずっと耳がふさがっているような「更年期かもしれない」と思う不調にも見舞われ、その時に改めて、健康であることのありがたさにも気づいたと言います。
現在娘さんは中学2年生に。著書の中では、自分でお昼ご飯を作ったり、と積極的な一面を見せてくれていますが、「言わなきゃやってくれないんです(笑)。もっと自立してほしいですね」と苦笑いします。
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今取り組んでいることのひとつが、過去のブログの再編集です。自身のブログで書いていたもの、子育てメディアのブログで書いていたもの。それを編集し直し、新たに読めるような形でリリースしていく長期のプロジェクトだそう。(12/23にリリースが決定。詳細はHPへ https://www.tabletalk.store/)
「この活動も“読みたいです”というリクエストからやってみようと動き出したもの。50代って、いろいろなことがまとまりだす年齢ではあります。だけど、いい意味でこだわりがなくなった今、特に目標などは決めず、新しい風が入ってきたらそれに合わせて柔軟にやっていくだけかなと思っています」
小川奈緒さんに聞きました
心と身体のウェルネスのためにしていること
ヨガと良い睡眠
「心と体、どちらにもつながることですがヨガと良い睡眠を取ることに気をつけています。
ヨガをやり始めたのは32歳なので18年続けています。スタジオやレッスンに通っていた時期もありましたが、近年は自宅レッスン、自宅トレーニングです。『リーンボディ』というフィットネス動画配信サービスのヨガプログラムを、その日の体調に合わせてやるほか、実は2023年はRYT200というヨガインストラクターの資格取得にも挑戦します。その講座の受講も含めて、ヨガは朝やるのが基本。深呼吸すると、心が落ち着くのもいいですね。
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睡眠は、起きた時に疲れが取れて元気になっていることがベスト。長年眠りの浅さに悩まされてきましたが、アイマスクを導入するようになったら、とてもよく眠れるようになって。今愛用しているものは、内側がシルク素材で、コットンのちょうどいい重さがあって、目に心地よくフィットします。耳にかけられるので睡眠中にずれることもなく使いやすいです。就寝は毎日11時ごろ、起きるのは5時半です。睡眠を1日のスタートと考えるようになってから、より大切にするようになりました」
インタビュー前編はこちら!
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撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子
外部リンク
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