セイコーマートがコンビニ部門で顧客満足度1位を独走できるワケ。創業時からブレない「店舗数拡大より、他がマネできないことを」
集英社オンライン / 2022年12月29日 12時1分
北海道内を中心に展開するセイコーマートが、11度目の顧客満足度1位を獲得した。大手チェーンに比べると店舗数は圧倒的に少ないが、国内のコンビニエンスストアチェーンにおいて最も長い半世紀の歴史を持ち、利用者に愛され続けている。人気の理由を探った。
「他がマネできないこと」が競争力に
日本生産性本部サービス産業生産性協議会が2009年度より発表している顧客満足度指数調査のコンビニエンスストア部門で、7年連続11度目の顧客満足企業1位に選出されたセイコーマート。
12万人以上の利用者からの回答をもとにした日本最大級の顧客満足度調査だ。他部門の1位企業では全国や東京を中心に展開する大手が名を連ねている中、セイコーマートは北海道と茨城県、埼玉県のみで展開するローカルチェーン。店舗数は約1200店と大手チェーンの10分の1にも満たない。その強みとはいったい何なのか。
セイコーマートを展開するセコマ渉外部の佐々木威知(たけとも)さんは、「創業時より店舗数の拡大で競争しようとは考えていなかった」と話す。
「当社で考えている競争力とはあくまでも、特徴づくり。他がマネできないようなものを持っていることが重要だと考えています」
北海道で生まれ育った筆者にとっては、セイコーマートは非常に身近な存在だ。
それもそのはず、道内179市町村のうち173に店舗があり、人口カバー率は99%以上。離島の店舗へは毎日船で商品を運ぶ。2018年、北海道胆振東部地震の際にも営業を続けて「神対応」として話題となったが、明らかに採算が取れないと思われる過疎地へも出店するなど、地域密着の地元企業である。
セイコーマートの前身は酒販店。1960年代後半から70年代前半にかけて、日本ではスーパーマーケットチェーンが著しく成長した。卸売業として取引先である個人商店が減っていくと予想した創業者が、取引先をどう存続させるかと考えた末、活路を見出したのが当時アメリカにあったコンビニエンスストア業態だった。
そして1971年、見よう見まねでコンビニ1号店を開店させた。現在の国内最大手のセブンイレブンより3年早かった。
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1971年、札幌市北区にオープンした1号店
実は沖縄にもセコマ商品が並んでいる
<ここにあるおいしさを、お手ごろに>の企業理念は、創業時から今も変わらないのだと佐々木さんは説明する。
「よいものをできるだけ安い価格で提供するという展開を考えていくと、チェーンビジネスだけでなく、効率よく安く商品を運ぶ方法や、地域の原材料を仕入れていいものをどうつくるかを事業領域に組み込む必要があります。ですから、自社物流で、食品メーカーとして道内21カ所に工場を持っています」
セイコーマートの特色であるオリジナル商品の発売は1995年。豊かな食料資源を活かした北海道だからこそできる商品開発に力を注いできた。
国内大手では、ローソンが1975年に無調整牛乳をオリジナル商品として発売し先頭を切るが、その他大手の開発は2000年代に入ってからである。
「生き残るために我々自身の商品をつくり、オリジナル商品があるから当店を利用するというお客様をつくっていかなくてはならないと考えました。美味しい・美味しくない、安い・高いではなく、なぜこの商品をつくり、それによって何を提供するのか。リテールブランドの基礎となる考え方をずいぶんと学びました」
発売当初はナショナルブランドが圧倒的に優位であり、どんな商品を発売しても苦戦を強いられた。しかし、素材にこだわった商品を愚直に出し続けた結果、徐々に客が理解を示し、わざわざオリジナル商品を買うためにセイコーマートを選んでくれるようになった。
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生産から仕入れ、製造、物流、小売までを手掛ける独自のサプライチェーンを築き上げたセイコーマートは、事業の柱を小売・物流・メーカーの3本にするため、2016年に社名をセイコーマートからセコマに変更した。
「(社名の変更は)極論から言うと、コンビニがなくても各事業が成立するようにしなければならない、という考えからです」と佐々木さんは言う。
実際、オリジナル商品は全国各地で販売しており、300以上の取引先がある。沖縄県でもセイコーマートの商品が並んでいる。北海道というブランド力も活きているという。
理念からブレないことを重要視
50周年を迎えた昨年は、ユニクロとエコバッグを制作し、発売直後から売り切れた店が続出。また、『セイコーマート FANBOOK』(宝島社)が発売され、SNSを中心に話題を集めた。
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ユニクロとコラボしたエコバッグ
どちらも先方から声をかけられ、実現したことだという。今後コラボレーションの予定はあるかと問うと「そういうのは出会いだと思っているので」と意外な答えが返ってきた。
「お客様に注目してもらうためにコラボする、とはあまり考えないんです。我々の考えに反するわけではないですが、コラボが理念とぴったり合致するかと聞かれると決してそうではない。もちろんあってもいいとは思いますが、それが通常になると我々の考えからはズレていってしまうんです」
近年よく目にする有名店監修の商品などとは一線を画す。話題づくりのためのコラボレーションを自ら仕掛けることは、確かに独自性とは違う文脈の話である。
「あれもこれもやるのではなく、ベースとなる考え方からブレないように。我々自身で研究を重ね、失敗しながら商品をつくり出していくことが大事なんです」
地域と真摯に向き合い、企業のアイデンティティーを突き詰めた結果の積み重ねが、密度の高いファンを生み続けている。
後編では、出来立ての弁当や惣菜で人気の「ホットシェフ」の歴史をひも解いていく。
取材・文/高山かおり
写真提供/セコマ
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