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大人気のセコマ「ホットシェフ」の意外な誕生秘話。「失敗してもバレないように」こっそり始まり、今や店の“顔”になるまで

集英社オンライン / 2022年12月29日 12時1分

北海道発のセイコーマートは2022年で創業51年目。実は、現存する国内のコンビニチェーンで最も古い歴史を持つ。顧客満足度調査(JCSI)で1位に選ばれるなど、ファンが多いローカルチェーンで、中でも店内調理の「ホットシェフ」をはじめとしたオリジナル商品がお客の心をつかんでいる。人気商品の歴史からセイコーマートが支持される理由をひも解いていく。

ホットシェフは小さな田舎町から始まった

セイコーマートは店舗売上2000億円に向け、コロナ禍以降20カ月以上連続で増収を続けている。

その追い風となっているのが、メーカー事業だ。1994年、店内調理で惣菜や弁当を提供する「ホットシェフ」併設の店づくりをスタートさせると、翌年にはオリジナル商品の販売を開始。以来、食品メーカーとしての顔を併せ持ち、徐々にその規模を拡大させながらファンを増やしてきた。



北海道出身の筆者もホットシェフを愛用している。店内の厨房で炊いた米でつくる大きめのおにぎりや、カツ丼、豚丼、ホクホク食感のフライドポテト、店で粉付けして揚げるフライドチキンなど、出来立てが並ぶ温かいショーケースは、まるで弁当屋のようだ。

出来立ての食品が並ぶホットシェフ

今では高い支持を得ているホットシェフだが、当初は苦難の連続だったという。

1994年12月、十勝の足寄(あしょろ)町内の店にひっそりと設置されたのがそもそもの始まりである。当時の足寄町の人口は約1万人、国道に面しているので比較的利用客は多いものの、都市部からかなり距離はあり、「失敗してもバレないように」と選んだという。なんとも消極的なスタートだ。

アメリカのコンビニエンスストア業態を参考に1号店を開店したセイコーマートは、1980年代後半から現地に足を運び研究を重ねていた。

アメリカでは当時より店内調理のピザ、サンドウィッチ、ホットドッグなどが提供されていたという。

「すごく美味しくて、それを目当てにお客さんが来店するんです。ガソリンスタンド併設のコンビニに給油の間に立ち寄り、コーラと出来立てのピザを買って車内で食べながら移動する。そういう光景を見た創業者が日本の店でも出来立てを提供したいという夢を持っていました」

こう語るのは、セイコーマートを展開するセコマ渉外部の佐々木威知さん。

「日本で店内調理しても何が売れるか全くわからない。じゃあとりあえず何でもやってみようということで、最初は麺類やみそ汁を出したりもしましたね。チャレンジして失敗して、またチャレンジする。その繰り返しでした」

子どもがおつかいで買ってくれる商品に

温かい商品を提供できるのは魅力だが、店にとっては負担となることも、苦労した理由のひとつだ。調理スタッフの人件費もかかる上、機材への投資や調理トレーニングが必要不可欠。

例えると、コンビニ運営に加えて弁当屋を始める状況と同じである。しかしながら、競合が持っていない商品を展開したいという思いを持ったフランチャイズオーナーが、ホットシェフにチャレンジしてくれた。

ホットシェフ併設店が増えていくと、相乗効果のように売上も伸びた。現在は、セイコーマート1170店のうち約900店に導入。「人気が目に見えるようになったのはここ10年のことのように感じます」と佐々木さんは言う。

一方、1995年、今も形を変えて存続しているカップアイス「北海道アイスクリーム バニラ」からオリジナル商品の歴史は始まった。開発の背景には、1990年代前半のイギリスでの状況があった。

オリジナル商品第1号の「北海道アイスクリーム」は今も販売されている

「当時イギリスでは小売業が寡占化されていました。競争が激しく淘汰が進み、両手で数えられるくらいの企業でイギリス全土の食品小売の90%くらいを担っていたそうです。
その頃の日本はというと、チェーン店がようやく発達したもののまだまだ地域の店がけっこうありました。そんなイギリスの姿は日本の20年後の姿かもしれないと感じたと、当時の社員から聞いています」

日本でも限られた企業で食品マーケットの大多数を占めてしまう状況が訪れる可能性があることに危機感を感じ、リテールブランドの開発に力を注ぐことを決心。

「イギリスでは各チェーンのリテールブランドがたくさんあり、その商品で競争しています。我々も生き残っていくためには自身の商品をつくらなければならないと強く感じました」

イギリスへ社員を派遣し、造詣の深い現地の大学教授から講義を受けるなどして見聞を広めた。しかし、アイスクリームを皮切りにオリジナル商品を徐々に発売していったものの、期待通りには売れなかった。

転機になったのは1996年に牛乳の生産会社に資本参入し、自社ブランドの牛乳を自社工場で生産したことだ。

「牛乳は毎日飲まれるものなので、気に入っていただけると来店動機になる。子どもがおつかいに来て牛乳を買ってくれるようになったら、かなりファンがいると考えていい。
現在店舗の商品取扱数は3500品目くらいですが、売上ベスト3に牛乳が入っています。我々にとって重要な商品です」

1996年から販売し続けている自社ブランドの牛乳

セイコーマートは新時代のビジネスモデル

近年では、原材料とメーカー機能を評価され、食品メーカーとして取引に発展するケースも増えている。例えば、首都圏を中心に展開するスーパーマーケットからプライベートブランドの牛乳の生産を請け負っている。

コンビニの店舗展開としては北海道、茨城県、埼玉県のみにとどまるが、オリジナル商品は、各地から引き合いがあるという。道外の北海道フェアなどで取り扱いたいとの声が届くだけでなく、販売すると売れ行きが好調のため定番として置きたいと依頼されるケースもある。

道産素材にこだわった独自性の高い商品づくりに実直に取り組み続けた成果だろう。地域に根ざした企業としてのビジネスモデルは、豊かな土壌に恵まれた北海道だからこそ生まれたモデルとも言える。

「セイコーマートとは、店舗の名称であるとともに、新しい時代のオリジナルビジネスモデルでもあります」と掲げる言葉にも、北の大地とともに歩み続けていく覚悟がにじむ。

取材・文/高山かおり
写真提供/セコマ

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