夢はDJデビュー? 野口みずきは子どもの頃からずっと音楽フリーク。引退後の週末は「曲をガンガン流しながら夫とお酒を飲んでます」
集英社オンライン / 2023年1月2日 13時1分
アテネ五輪女子マラソン金メダリストで、同種目の日本記録保持者である野口みずきさんが実は音楽フリークであることを知っているだろうか。ヒップホップに、ロック、パンクと聴いているジャンルは幅広い。休日は、フェスやクラブで体を揺らしているという野口さんに音楽愛を語ってもらった。
野口みずきさんは、2016年に現役を引退した後、たびたびユーモラスな一面をのぞかせている。
2021年9月に放映されたテレビ番組『マツコの知らない世界』(TBS)に出演したときは、特に驚かされた。野口さんがヒップホップへの愛を延々と語っていたのだから。
こちら側の勝手な印象だけで「意外な一面を見た」というのは失礼なことだが、ストイックなイメージがつきまとっていた現役時代とのギャップに驚いたのは、筆者だけではなかったはずだ。
さらに、2022年9月に発売された著書『野口みずきの練習日誌』(ベースボール・マガジン社)の巻末には、お気に入りの曲をセレクトし、シーン別のプレイリストを公開。おまけのようなページにもかかわらず、野口さんの“音楽愛”があふれ出ている。
そこで、野口さんに音楽との関わりを尋ねてみた。
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野口みずきさん。撮影ではお気に入りローリング・ストーンズTシャツを着てくれた
好きな男の子に影響された中学時代
――野口さんが、音楽を好んで聴くようになったきっかけはどんなことでしたか?
野口みずき(以下、同) 父が、洋楽をはじめ音楽が好きだったので、実家にはステレオが整っていて、レコードなんかもたくさんありました。それと、姉はサザンオールスターズや鈴木雅之さんが好きで、子どもの頃から実家では何かしら音楽が流れていたんです。だからですかね。
幼い頃にタイトルもわからないのに聞いていて、大きくなってからも耳に残っている曲があって、なんて曲だったのか探したりもしました。どこか宝物探しをしているような気分になるんです。
中学生になると、さらに音楽の世界が広がりました。好きな男の子がクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』を好きだったり、英語の授業でビートルズを聴いたりしましたね。
ジャケ買いしたミッシェル・ガン・エレファントに夢中に
――今だったらインターネット上に音楽の情報が溢れていますが、中高生の頃はどこで仕入れていたんですか?
どうしていたんだろう……。ラジオのランキングを参考にしたり、あとはジャケ買いしたり……。スリリングでしたけどね(笑)。ジャケットの第一印象で買ったやつでも、けっこう当たりが多かったですよ。
――行きつけのCDショップがあったのでしょうか?
社会人1年目のときは、寮の近くに個人経営のこじんまりとしたCDショップがあって、よく行っていました。そのお店で買ったのが、ミッシェル・ガン・エレファントの『バードメン』。そのときはミッシェル・ガン・エレファントを知らず、ジャケットがカッコよかったので買ったんですけどね。聴いてみたら音楽もカッコよかった!
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――『マツコの知らない世界』に出演されたときは、ヒップホップの話ばかりでしたが、いろんなジャンルの音楽を聞かれるんですね。
番組のときはヒップホップ縛りでしたけど、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)とかロックとかパンクとか、ソウルとか、比較的幅広く聴いていますよ。
――高校生のときに、同級生の影響でヒップホップを聴き始めた、ということでしたが。
クラスメートに、ヒップホップに限らず、ロカビリー(※1950年代後半に流行したロックのスタイルのひとつ)とかいろんな曲を聴いている男の子がいたので、その影響もちょっと強かったのかな。
あと、兄の部屋にラッパーのアイス・キューブのCDがあって、こっそり聴いていました。
アテネ五輪のレース中、脳内に流れた音楽とは
――失礼ながら、野口さんのイメージとヒップホップとがなかなか結びつきませんでした……。
皆さんに言われます、「ギャップが……」って(笑)。真面目に、歌謡曲しか聴いていないようなイメージなんですかね。全然そんなんじゃないです!(笑)
海外へ高地合宿に行くようになってからは、特にヒップホップを聞くようになりましたね。現地では『MTV』などの音楽専用チャンネルや『BET(ブラック・エンターテイメント・テレビジョン)』っていうチャンネルをよく見ていました。
『BET』ではラッパーのドキュメンタリー番組なんかも放映されていました。昔の人はすさまじい人生を送っているんですよね。それに比べると、今のラッパーはちょっとぬくぬくした感じですよね。昔の人は、銃弾を打ち込まれたりとかしていますから。
でも、ヒップホップに限らず、練習やレースのギリギリまで音楽を聴いていましたよ。集中できるし。走っている最中にも、頭に音楽が流れていました。
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――ちなみに、アテネ五輪でマラソンを走っているときは、頭の中にどんな音楽が流れていましたか?
レースの中盤ぐらいからいろんな曲が流れていたんですけど、印象的だったのは、サザンオールスターズの『君こそスターだ』、ラッパーのジョー・バドゥンの『パンプ・イット・アップ』、レニー・クラヴィッツの『カリフォルニア』の3曲ですね。
『君こそスターだ』は日本代表の応援歌。『パンプ・イット・アップ』は、映画『ワイルド・スピード X2』のエンディング曲で、初めてスイスのサンモリッツで合宿をしたときにテレビでしょっちゅう流れていて、頭にこびりついていました。
『カリフォルニア』はミュージックビデオがめちゃめちゃよくて、ずっと印象に残っていたんです。この3曲が頭の中を回っていたような気がします。
目標はDJデビュー?
――ご結婚されてからは、さらに音楽の幅が広がったそうですね。
夫がロックやパンクに詳しくて、特にセックス・ピストルズとか、1960〜70年代のロックが好きなんです。夫の影響で、そういったジャンルの音楽も聴くようになりました。ファッションもロックテイストの服装をしていますし。
私がヒップホップ、EDM担当で、お互いに補完し合う形です。ふたりとも音楽の世界が広がりましたね。
――それぞれの好きなジャンルを共有できるのはいいですね。
ふたりで音楽を楽しんでいます。一緒にフェスやDJイベントに行きますし、家でも、ふたりとも料理が好きなので、音楽をガンガン流しながら料理を作ったり、週末はお酒を飲んで過ごしたりしています。
――音楽をセレクトする権利はどちらに?
平日は、私はひとりで好きなだけ聴いているので、週末は夫が好きな曲をかけていることが多いです。
――ライブやフェスは、現役の頃はなかなか行けなかったのではないでしょうか?
そうなんです。なので、今、めちゃめちゃ楽しんでいますね。今、私が憧れているのがDJです。その場の雰囲気で、いろんな音楽を流していくっていう。DJスクールに通いたいなと思ったりもします。
今は、デジタルのDJ機材もあって、それはそれで便利だと思います。けど、レコードを取り出して、ジャケットを目の前に置いてかけるという、アナログなのがやっぱりすばらしいなって。
小さいハコ(会場)のDJイベントによく行くのですが、この時期は週末にマラソン大会の仕事が多いので、なかなか行けないです(笑)。
――野口さんにとって、音楽とはどんなものなのでしょうか?
現役時代は、走るために聴いていましたね。音楽は、癒やしになったり、ストレス発散になったりしていましたね。
今は音楽の幅も広がり、心から楽しんでいる感じです。今の時代は、ストーリミングで、すぐに聴きたい曲にアクセスできるのもいいですね。さっきまでアナログのDJが素晴らしいって言っておいて、なんですが……(笑)。
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取材・文/和田悟志
撮影/坂本 陽
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