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「丸餅か角餅か」「すまし汁かみそ仕立てか」「野菜はなに?」…お雑煮に正解ってあるのか、研究家に聞いてみた

集英社オンライン / 2023年1月1日 11時1分

この時期になると、「うちのお雑煮はおすまし汁に餅、鶏肉が入っている」「うちは丸餅です」などお雑煮の話題で盛り上がることもしばしば。そもそもお雑煮とは? 餅の形の分岐点は? など、お雑煮研究家の粕谷浩子さんに解説いただいた。

お雑煮は究極の家庭料理

お雑煮の歴史は、古くは平安時代に遡りますが、庶民が食べるようになったのは江戸時代になってからです。歳神様にお供えしたお餅、里芋、にんじん、大根などを、その年の最初に山や川から汲んだ「若水」と新年最初の火で煮込み、家族の健康と豊作を願って食べたというのがお雑煮の始まりと言われています。



お雑煮の面白さはみんな自分の家のお雑煮が普通だと思っていることです。
お雑煮はお正月に食べる「ハレの日」の料理。特別な「ハレの日」にもかかわらず、お正月、家族で楽しむ料理なので、料理人が作る料理ではなく、お雑煮は家庭料理なのです。
その家で代々伝承されてきた料理だからこそ、さまざまなバリエーションがあり、皆さんの会話で「うちの家ではこんなお雑煮」で盛り上がれる、とても稀有な料理だと思います。

そして、お餅が入っていれば、こうでないといけないという料理ではないので、それぞれの地域や家庭の味や具材に特徴が出る料理なのです。

角餅VS丸餅の分岐点はあの天下の分け目の「関ケ原」だった!

お雑煮談義で、よく話題に上がる角餅か?丸餅か?
今や大型スーパーに行けばどちらも手に入る時代ですが、実は明確な分岐点があります。

それはあの天下分け目の戦いの舞台となった関ケ原。
関ケ原より東が角餅、西が丸餅と分かれます。

私も自分の足でその周辺の地域を取材しましたが、関ケ原の近くに伊吹山という標高約1377mの山があるのですが、角餅の文化はここを越えなかったようです。
伊吹山周辺では、角餅が食べられていますが、山を越えた西の滋賀県に入ると、丸餅に切り替わっていて、ここが分岐点だと取材時に実感しました。
ただし、高知県や鹿児島県の一部は角餅を使っています。高知県は山内一豊が土佐藩主になり、角餅に切り替わり、鹿児島県は島津家の当主が江戸文化を持ち帰ったという説があります。

では、そもそもなぜ角餅と丸餅と分かれたのでしょう? お餅は昔、正月前に餅つきをして丸めたものを食べたので、西日本ではそのまま丸餅の文化ですが、東日本では角餅になったのは、人口増加による大量生産が理由の一つです。

江戸の人口が増えて、ついた餅をひとつずつ丸めるより、餅を伸ばして、のし餅にして固まってから切り分けたほうが大量に作ることでき、効率的だったからです。

ちなみに餅の調理方法でも角餅は焼く、丸餅は煮るに分かれます。お雑煮の角餅を焼くのは、固いので焼いたほうが早く柔らかくなるからです。

ただし、いくつかの地域で角餅でも煮て調理するところもあります。例えば、名古屋のお雑煮は角餅ですが、白い餅を城と見立てて、城は焼かぬようにという意味で角餅を焼かずに煮るという説があります。

お雑煮には伝統野菜が使われる

餅の形同様に、おすまし汁か味噌仕立ての分岐点もよく議論されます。餅の形ほど、はっきりした分岐点はないのですが、全国的におすまし汁が多くて、福井県、関西地方、香川県など一部の四国地方で白味噌仕立てのお雑煮を食べられています。

白味噌仕立てのお雑煮が海を渡って四国地方に伝わったのは、保元の乱の後、京都から讃岐地方に流された崇徳上皇のもとへ、京都から往来する人々によって伝えられたとされています。
また、九州地方では麦味噌をつかう地域があります。九州では麦が盛んに作られていたという説があり、大分県の一部では麦味噌仕立てのお雑煮が見られます。

お雑煮に入れる具材も各地域バリエーション豊かです。
お雑煮の発祥地である京都では、具材は全て丸くカットされ「家庭円満」「物事を丸くおさめる」という願いがこめられています。

具材のバリエーションは本当にさまざまなのですが、私が特に注目しているのが野菜類です。お雑煮には、ご当地にしかない伝統野菜が欠かせません。
例えば熊本県の「長にんじん」は直径1.5~2.5cm、長さは1mほどある細長い伝統野菜です。「かつお菜」は博多をはじめ、九州地方のお雑煮欠かせない青菜で、かつおのような旨味があり、「勝つ男」と掛けて縁起を担いでいます。

これらの野菜は年中出回ることはなく、お正月の数日前からお店に並びます。
この数日を逃すと手に入らないので、もしお雑煮を食べなくなったり、ご当地色がなくなったりすれば、こういった伝統野菜は見られなくなり、お雑煮は最後の砦だと思っています。
また、最近は人手不足の問題もあり、伝統野菜を作っている農家がどんどん減っていて、このままだと受け継がれなくなっていくんじゃないかと危惧しています。

左:かつお菜 右:長にんじん

お雑煮文化を守るためには、家族や地域で受け継いでいくことが重要になります。
せひ、ご自身の家のお雑煮の文化や伝統を大切に、今年もお雑煮を楽しんでいただければと思います。

※※※

続きでは、お雑煮研究家・粕谷さんがセレクトするご当地お雑煮を紹介します。

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