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4ヵ月前から仕込む「鮎出汁雑煮」、きなこは味変ではなくマストの「きなこ餅雑煮」… 全国びっくりご当地お雑煮7

集英社オンライン / 2023年1月1日 11時1分

正月に食べるお雑煮は、その地域ならではの歴史や伝統、食材が盛り込まれてバリエーションが豊か! 中でも特徴的なものをお雑煮研究家の粕谷浩子さんにセレクトいただいた。

ほや、穴ぼこ豆腐、ブリ、その土地ならでの具材が主役

宮城県石巻市
ほやの旨味が凝縮!「ほや雑煮」

左:ほや雑煮 みぎ:海のパイナップルと言われている「ほや」

「ほや」とは海のパイナップルと言われている脊索(せきさく)動物の一種です。お酒が進む食べ物と言われていて、夏が旬なので、お雑煮には乾燥させた干しほやが使われていました。


干したほやで出汁を取り、戻したほやは、ほかの具材とともに入れることで、旨味が広がります。今では、冷凍した蒸しほやが地元ではよく使われています。
ほやは藩主の伊達政宗公が大変好んで正月にも食べていて、豊臣秀吉にも献上したという話が残っています。
また、ほやの橙色は、「代々」の字を当て「子孫繁栄」を意味し、縁起物としお雑煮の具材にもぴったりなのです。
農林水産省は2022年「農泊 食文化海外発信地域(SAVOR JAPAN)」として宮城県石巻市が認定していて、地元の観光推進として道の駅などでほや雑煮のメニューを強化したり、ほや雑煮を提供する飲食店をPRしたりするなど、ますます目が離せないご当地お雑煮です。

群馬県高崎市、長野県松本市のお雑煮

群馬高崎市
穴ぼこの豆腐が特徴 「つと豆腐雑煮」

高崎市の中でもごく一部のお武家さんが住んでいた地域のみで食べられている「つと豆腐入り」のお雑煮。
つと豆腐は、豆腐を稲わらで包んで長時間茹でて酢がたった穴ぼこが空いている豆腐のことで、江戸時代に流行った豆腐で、「豆腐百珍」という豆腐料理本にも記載があります。
もともとは、福島県や茨城県で作られたものを、江戸詰めで知り、その地域に持ち帰ったという説があり、つと豆腐は一部地域の限定品です。
豆腐にお出汁が染み込み、煮ると美味しいお雑煮です!


長野県 松本市
年取り魚のブリが主役「塩ブリ雑煮」

海なし県なのに、魚?と思われる方も多いと思います。
富山湾で水揚げされた天然ブリを保存がきくように塩漬けし、富山から歩荷(ぼっか)や牛車で約3日かけて高山へ運んでいたそうで、「越中ブリ」と呼ばれていました。
さらに、高山で塩を加えてそこから野麦峠を越えて信州・松本まで運ばれていたものが「飛騨ブリ」と呼ばれるものです。

この運ばれていた道が「ブリ街道」と呼ばれています。
そんな歴史が背景に受け継がれているのが松本エリアの「塩ブリ雑煮」。
このお雑煮は、お醤油仕立てのすまし汁で鶏肉・大根・にんじん・小松菜・かまぼこなどと焼いた角餅が入り、塩ブリがのります。

また、長野県は、大晦日や年越しの食事につける年取り魚が「鮭」と「ブリ」が入り混じっている地域です。松本市などの中南信エリアは「ブリ」で、北信エリアは「鮭」が年取り魚のため、北信エリアのお雑煮は「鮭」が主役です。
エリアによって魚の種類が変わるのもご当地のお雑煮の面白いところです。

奈良県はきなこがマスト! 島根県は鮎が主役のお雑煮

奈良県
雑煮の餅はきなこがマスト! 「きなこ雑煮」

なんといっても、砂糖を加えた甘いきなこに餅を絡めて食べる、きなこ雑煮にはびっくり。きなこは味変ではなく、マストなのです。また昆布だしの白味噌仕立てなので、さっぱりした味なのも特徴です。
具材の里芋、金時人参、雑煮大根は、全て切り方は輪切りで、物事を丸くおさめるという願いを、豆腐やこんにゃくは四角に切り、蔵を表し、豊作祈願が込められています。
きなこも黄金色なので、豊作を意味して、昔から人々の願いが込められた雑煮なのです。


島根県 益田市
鮎出汁をじっくり味合う 鮎雑煮

清流の高津川を遡上する鮎で出汁をとって作るお雑煮です。
夏のうちに焼き干し鮎を作って、お正月のお雑煮のために保存します。
その期間はなんと4ヵ月!
それは焼き干し鮎には、お盆から8月末くらいまでの鮎が最適だからです。
鮎の身を食べてもお椀に盛り付けて食べてもいいのですが、目的は出汁のために使っていてシンプルに鮎出汁を楽しむお雑煮です。

もはや汁ではない、茶わん蒸しタイプのお雑煮

香川県
甘いあん餅と白味噌のハーモニー 「あん餅雑煮」

甘いあんこ餅が入った、いりこ出汁の白味噌仕立てが特徴です。
香川県でも白味噌仕立てなのは、保元の乱後に崇徳上皇が讃岐地方に島流しになり、京都を懐かしんで作らせ、京都の人々の往来で伝わったと言われています。

具材は金時人参、子芋、大根、あおさですが、注目なのが甘いあんこ餅。

香川県は和三盆の産地ですが、昔は高級品のため作っている庶民には口にすることができませんでした。明治時代から年に1度、お正月くらいはとっておきの砂糖が食べたいと雑煮に入れるようになったそうです。


福岡県
蒸すお雑煮は茶碗蒸しがルーツ 「筑前朝倉蒸し雑煮」

茶碗蒸しタイプで、もはや汁ではない!
福岡藩の分家秋月藩は、長崎の警固を代行し、中国から伝来していた茶碗蒸しの存在を知って、お正月に餅を入れてお雑煮として食べるようになったようです。
また享保の飢饉の時に養鶏を推奨していたため、武家たちの間で、この茶碗蒸しタイプの雑煮が広まったという説もあります。
筑前煮(地元ではがめ煮)のような根菜類が入ります。茶碗蒸しタイプのため、お餅のお代わりがしにくいため、はじめに食べる餅の数を決めて丼に入られて作られます。


以上、特徴的なお雑煮をエリアごとに紹介しましたが、調査すればするほど、お雑煮のバリエーションは豊富です。
ご自身の家のお雑煮の具材、餅の調理法、出汁の種類など、調べてみると新たな発見があるかもしれません。
お雑煮を味わいながら、日本の食文化の奥深さをぜひ感じてくださいね!


取材/百田なつき

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