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キングオブコントの“タブー”を乗り越えて。40歳“野良犬トリオ”や団の「普段、毒にも薬にもならない僕らが勝負できるのはコントしかない」

集英社オンライン / 2022年12月29日 17時1分

キングオブコントは準決勝でネタを2本見せなければならないのだが、毎年、同じネタをかけていると、どうして観客の反応は悪くなる。それもあって“同じネタは2回までしかやってはいけない”との暗黙了解があったのだが、今年、そんな“タブー”に挑戦したのが、や団だった。

ネタ作りにおける「バイきんぐ」モデルとは?

――や団は、芸人としてのスタートがSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)なんですよね。SMAというと、かつては割とキャリアのある芸人が、最後に身を寄せる事務所みたいな印象もありましたが。

本間 今は若い人もたくさんいますけど、かつては自ら来る場所ではなく、“流れ着く場所”だと言われていました。いろいろな事務所を渡り歩いて、どこでも芽が出なかった芸人が最後に漂着する場所だと。



だから、うちはバイきんぐさんとか、ザコシ(ハリウッドザコシショウ)さんとか、錦鯉さんとか、苦労人が多いんです。けれど僕らは20代前半で、いきなりそんな野良犬のたまり場みたいなところに入ってしまった。言うなら僕らは首輪をつけられたことがないんです。

中島 僕らくらいの年代だと、や団はSMA唯一の生え抜きといってもいいと思いますよ。

――現メンバーになったのは2007年ですが、や団自体は2005年にすでに結成されていたんですよね。

本間 僕らはもともと大学時代の同級生3人でトリオを組んだんです。ネプチューンさんんに憧れていたので、最初は同じ渡辺プロさん(ワタナベエンターテインメント)とかに入りたいと思っていました。でも、調べてみると、SMAが2004年にお笑い部門を立ち上げたばかりで、しかもお笑い部門を立ち上げたのは、渡辺プロから移籍してきた平井(精一)さんという人でした。

しかも、その平井さんは渡辺プロ時代にネプチューン結成前の、ジュンカッツ、フローレンスを育てた元マネージャーであり、僕らの大学(日本大学)の先輩でもあったんですよ。これは、おいしいかもしれんぞと思って。
ただ、入ってすぐ相方が一人抜けてしまったんです。そうしたら、平井さんが、ちょうどいいのがいるぞって伊藤を紹介してくれて。元相方と背格好もそっくりで、最初、お客さんも気づかなかったくらいなんです。

伊藤 ちょっと前まで、SMAのライブは紙に名前さえ書けば誰でも出られたんです。ネタ見せもありましたけど、それで落とされることもほとんどなくて。なので僕も、とりあえずライブだけ出させてもらおうかなと思って。入るつもりはなかったんですけど、気づいたら所属にされていて。

――バイきんぐの小峠(英二)さんは若い頃、2ヶ月に一回単独ライブを開催し、そのたびに新ネタを6本下ろしていたと聞いたことがあります。それを4年間続けて、キングオブコントで優勝するまでになったと。

本間 それが今でも、うちの事務所の、成功のモデルケースになっているんですよ。

中嶋「バイきんぐモデル」として、他事務所の芸人も参考にしているくらいですから。

本間 なので僕らも毎月3本新ネタを作ることを一応、目標にはしています。なかなか難しいんですけど……。おそらく生涯でもう500本くらいネタを作ってると思うんですよね。でも、残っているのは、その30分の1ぐらいかな。

キングオブコントのタブー

――キングオブコントはM-1と違って、準決勝でネタを2本見せなければならないところが本当に大変ですよね。

本間 辛いんです。準決勝を突破できるようなネタって、できても1年に1本くらいなんです。そうなると、どうしても、過去ネタを引っ張り出してくるしかなくなってしまう。
実は準決勝で『雨』をやったの、今年で3回目なんです。2017年に初めてやって、すごくいいウケ方をしたんです。それで2019年の準決勝は、2本目のネタが作れなかったので、もう一度、『雨』をやったんです。そうしたら、明らかにネタバレしていて……。

伊藤 本当にお客さんのため息が聞こえましたから。「見たことあるネタだ」ってわかった瞬間、お客さんの熱がすっと冷めるのが肌感覚で伝わってきたんですよ。

――それは怖いですね。

本間 だから、3回目は絶対ないと思っていたんです。2020年、2021年は準々決勝で敗退してしまったので、よくとらえればネタを温存できた。『バーベキュー』は2020年の準決勝で負けたネタだったんですけど、僕はここで負けるようなネタではないとずっと思っていて。それで磨きに磨いて、2022年の準々決勝でもう一度ぶつけたら、今度はなんとか通った。
そして、準決勝です。1本目は『バーベキュー』でいくとして、やっぱりもう1本がなかった。そこで浮上してきたのが『雨』で。2年空いているとはいえ、さすがに3回目は怖いなと思ったんですけど、もう、それしかなかったんで。

――準決勝で3回くらい同じネタをやっている組は他にもいるわけですよね。

中嶋 いや、聞いたことないですね。

――そうなんですか。別に過去にやったネタをまたかけてはいけないというルールがあるわけではないんですよね。

本間 ないんですけれども、ちょっと前までは、なんとなくタブー視されている感じはありました。それでも僕らはもう、やらざるを得ないんで。
ただ、2000年かな、コロナの影響で芸人たちもなかなか新ネタを試す場がなかったときに、TBSサイドから「過去に決勝でかけたネタはダメだけど、準決勝までのネタは何回やってもいいですよ」みたいなお達しがあったんです、やや遠回しな感じで。それで随分、やりやすい雰囲気にはなりましたね。

僕らが勝負できるステージはコントしかない

――『雨』は3回目とはいえ、今年の準決勝のお客さんのリアクションもよかったですよね。

本間 相当ブラッシュアップしていたということもありますけど、初めて見た人も多かったんだと思います。去年までの準決勝は500人キャパぐらいの会場でやっていたんです。でも、今年は1800人キャパの新宿文化センターの大ホールで開催されたので。

中嶋 1000人を超えると、もうお笑い向きのキャパではないんですけど、それに助けられたのかも。500人くらいの規模だと、毎年、同じようなお客さんになってしまう。でも1800人まで拡大したことで、今年、初めてキングオブコントの準決勝を見にきたという人もいっぱいいたと思うんです。

――確かに準決勝の会場は広いなと思いましたが、広い分、いろいろな層のお客さんが集まっている気がしました。お話を聞いていると、今年の決勝で見せたネタは、選りすぐりの2本だったと言ってもいいわけですね。

本間 生涯ナンバー1と、ナンバー2のネタでしたね。それを消費してしまった。だから、来年が大変です。でも、そこは自分たちを信じるしかない。これまでの15年間も1年に1本はいいネタができていたんです。あとは過去ネタを掘り起こしてブラッシュアップすれば、何とかなるのかなと。昔の自分では仕上げ切れなかったものでも、今の自分なら形にできるかもしれないので。

――先ほど通りで写真撮影をしているときに「キングオブコントで見ましたよ!」と、若い男性に声をかけられていました。ああいうことも増えましたか。

本間 少しずつですけど。そういうのを夢見ていたので、嬉しかったですね。

中嶋 びっくりしちゃいました。今日だけで二度、ありましたから。

――そういう変化も含め、キンブオブコントの決勝に進出したことで、自分たちの芸人人生がようやく変わり始めたような感覚はあるものですか。

本間 いや、まだまだ、ここからでしょうね。今はキングオブコント3位バブルでお仕事をもらえていますけど、時間が経ったら、優勝者以外は「2022年のファイナリストのうちの1組」という扱いになってしまうと思うんです。

――や団はM-1も何回か出ていますが、2022年もエントリーしたんですか。

本間 いや、もう出ません。結成年数的にも、もう出られないんじゃないかな。M-1は僕らにとっては修行のうちの1つだぐらいの感覚だったので。漫才はコントと違って、芸人の人となりで笑わせないといけないじゃないですか。

そこへいくと、僕らは3人ともキャラクターが薄すぎる。普段は、毒にも薬にもならないですから。僕らが勝負できるステージはコントしかないんです。コントなら、違う人間になれるんで。

取材・文/中村計 撮影/村上庄吾

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