日本における、フランス最後の王妃マリー・アントワネットへの関心は非常に高い。もはや語るまでもなく、漫画家・池田理代子(以下、池田)が手掛けた少女漫画『ベルサイユのばら』(通称『ベルばら』)の影響がある。
フランス国内では、浪費家であったマリー・アントワネットは、国民を苦しめた浅はかな王妃というレッテルが貼られている。
だが、ユダヤ系オーストリア人のシュテファン・ツヴァイクは伝記小説『マリー・アントワネット』(1932年刊行)の中で、かつての敵国オーストリアから嫁いできた王妃の満たされない結婚生活や、無知で享楽的な面に触れつつも、打倒王政を目指す当時のフランスでは、彼女を必要以上に悪女として仕立てあげたと指摘している。