以前、太田泰子さんの『江戸の親子: 父親が子どもを育てた時代』(吉川弘文館)を読んだとき、江戸時代は家の継承のため、父親が強い信念で子育ての中心となり、密に、深く子供との時間を大切にしていたことを知りました。そこには当時の医療事情から、多くの子供が7歳を越えて、生育するのが難しいという状況もあったといいます。
さて、現在のお父さんたちはどうなのか。成島出監督の新作『ファミリア』は、父親ということを全うすることができない、複数の父親たちが登場します。社会の重い状況に押しつぶされる父親もいれば、理不尽なハプニングに巻き込まれるケースも。逆に血の繋がりはないけど、疑似の父子関係のような温かい交流も描かれます。ある意味、現代の父親像を考えさせる作品。
主人公で陶器職人の神谷誠治を演じるのは役所広司さん。妻を早くに亡くし、今は仕事でアルジェリアの大型プラントのプロジェクトにまい進する一人息子、学(吉沢亮)と離れて暮らしています。彼はある日、隣町の団地に住む在日ブラジル人の青年、マルコスを助けたことから、地元で生じているあるトラブルに巻き込まれていきます。
「この映画が、自分と家族の関係、自分と地域の関係が変わるきっかけになれば」と語る役所広司さんにお話を伺いました。