―そもそも「Jホラー」とはどのような映画を指すのでしょうか。「日本製のホラー=Jホラー」というわけではないですよね。
ひと言でいうと、日本発の「“得体の知れない恐怖”を描いた映像作品」ということになるかと思います。そのような作品が、90年代の日本で同時多発的に生まれたんです。その作り手たちが互いに影響を与え合いながらブラッシュアップしていき、日本だけでなく海外でも評価されるようになると、それらはいつしか「J(Japanese)ホラー」と呼ばれるようになりました。
Jホラー特有の要素としては、具体的に「陰鬱な画作り」「じめっとした空気感」「抑制された効果音」「恐怖の対象がはっきりと現れない」「エロティックなシーンがない」などが挙げられます。
それまでの日本のホラーは、『東海道四谷怪談』(監督:中川信夫 、1959年)に代表される怪談映画が主流でした。そこではおどろおどろしい効果音やBGMとともに、どぎつい照明の中で、いかにもなお化けが出てくるわけですから、その違いは明白ですよね。
恐怖の対象についても、Jホラーにはモンスターや殺人鬼といったわかりやすい敵は出てきません。敵がわからないから倒しようがない、勝ち目がない。そもそも「勝ち負けを想定していない」というか、作品世界に一歩踏み込んだら最後、もう恐怖に浸るしかないんです。