「風俗で稼いだ数千万円はホストとタクシー代にほぼ消えた」。突然の乳がん発覚で風俗引退、その後の人生は…!?
集英社オンライン / 2023年1月6日 19時1分
「風俗に落ちた」といった言葉はよく聞くが、「風俗から抜けた」後の話を聞くことは少ない。風俗をやめた後、彼女たちはどんなセカンドキャリアを過ごしているのだろう。自身の乳がんが発覚し風俗引退を余儀なくされたが、その後、病気を克服して現在マッサージ店で働く女性に話を聞いた。
風俗はなぜ沼なのか?
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風俗勤務歴20年だった青田さん
青田洋子さん(44歳、仮名)は21歳から約20年、ヘルス、デリヘル、ソープランドと様々な風俗店を経験してきた。だが5年前の2018年12月に乳がんが発覚。その翌年に右胸の全摘出手術を行った。その後、抗がん剤治療を経て昨年からマッサージチェーン店で正社員として働いている。
「実は病気に気づいたきっかけはお客さんでした。5年以上、私を指名して下さっていたお客さんで、私の胸に触れた時に“なんか右側だけ硬いシコリみたいなものがあるぞ”と教えて下さったんです。言われるまでまったく自覚がありませんでした。
セカンドオピニオンで乳がんのステージ2だと言われ、検査の結果、脇の下にも転移していたことから右の乳房と乳頭を全摘出することに。抗がん剤治療を経て2019年10月からマッサージ店で働いてます」
そもそも風俗で働き始めたときには目的があり、それを達成したらやめるつもりだったと言う。
「高校卒業後はアルバイトしながら実家暮らししてたんです。でも一人暮らしがしたくなって最短でお金を貯めるために始めたのがヘルス。当時流行ってたドラマ『池袋ウエストゲートパーク』で矢沢心さんがピンサロ嬢を演じていて、勝手に風俗に親近感があって抵抗はなくて。
最初はお金が貯まったらやめようと思ったのに…結局、20年もズルズル(笑)。ある意味、風俗は沼ですね」
すぐやめるつもりが約20年、風俗で働き続けた青田さん。風俗はなぜ沼なのか?
「風俗で働けるのは20代までかなと思ってた。でも30代になってもそこそこ需要があって、まだイケる、まだイケるってやめるタイミングを失うんです。そこそこお金も稼げるから、好きな物や服に散財したり。もちろん風俗の仕事にやりがいを見い出し、様々な風俗の壁を乗り越えることに夢中になってる自分もいたから続いたんですけど」
「風俗の壁」とは…
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ソープ勤務時代の青田さん。病気発覚のきっかけになったお客様は「今もたまに連絡を取っては近況報告しています」という
「最初は仕事を覚えることで精一杯だけど、そのうち店の売上ランキングの上位に入りたくなるんです。頑張って上位10位内に入ると今度はもっと上位を目指したくなる。1位になったら今度は自分の売上史上最高を目指すようになって…そんな次々と現れる壁を乗り越えたくなるんです」
風俗をやめない理由は他にもあった。
「20代後半から10年ほどホストにハマり、デリヘルとソープを掛け持ちしてました。月に1000万円も使うような無茶はしないけど、月50万円から100万円は確実に使ってた、軽めのホス狂です(笑)。
当然ながら売掛というツケで飲んで月末にまとめて払うループに浸かり、推しのホストのバースデーともなれば200万円のシャンパンタワーを立ててました。風俗をやめるまで約10年間で稼いだ数千万円はほぼホストとタクシー代に消えたと言っても過言ではありません」
そういう意味では病気にならなければ風俗をやめることはなかったと振り返る。
「だってやめる理由がないですから。お客様に胸のシコリを指摘された時だって“放っておけば治る”って思ってた。でも、しだいに乳頭から黄色っぽい汁が出てきてた時に“やっぱ変だ”と恐る恐る病院に行ったくらいですから。乳がんを宣告された時は、そろそろ自分の体を労わり今後の生き方を見直しする時なのかもって思いました」
風俗経験がマッサージの仕事にも活きている
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抗がん剤治療ですべて抜けてしまった髪も伸びてきた。「髪質がふわふわに柔らかくなりました」
抗がん剤治療後、先生から「そろそろ仕事を始めてもいいよ」と言われた時にパッと思いついたのは、マッサージの仕事だったという。
「私は昼職の経験はなくパソコンも使えませんし、いまさらそっちじゃないだろうと。やはりそれまでの経験を活かすには接客サービス一択でした。それも体に触れて疲れを和らげたり癒しを与えることは、これまで自分が“お客様はどんなプレイを求めているのか”を必死に追求してきた経験を活かせるのではと。
どんな強さでどんな手順で体に触れればいいか……お客様の反応を伺いながら手技をする。これぞ風俗で培ったことを活かせる仕事だと思いました」
マッサージ店の客の中には少なからず嫌な客もいる。そういう時の対応も風俗時代の経験が活きているという。
「自分を神様だと思ってるかのような横柄な態度や言葉使いの方、すぐにスタッフのチェンジを要求してくる方などもいます。でも、そんなのは風俗時代の変わったお客様の要求からしたら可愛いもんです。どんな態度をされても、どんな言葉を投げかけられても動じない心を身につけられたのは、風俗で働いた20年間の賜物だと思っています(笑)」
一体どんな風俗時代の経験が今に生きているのかも聞くと…。
「忘れられないのはデリヘル時代に80代のおじいさんの汚部屋に伺った時のこと。それも超・汚部屋。足の踏み場がないのはもちろん、自分の大小便をペットボトルやカップラーメンの空箱に入れたものがあちこちに点在してて…」(あまりに酷い内容なので省略)
「再び風俗に戻ろうかと思ったけど…」
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サードキャリアは居酒屋で…
とにもかくにも、風俗時代に動じない心を身につけた青田さんには、実は夢があるという。
「実は手術前には乳房の再建手術をして再び風俗に戻ろうかとも思っていました。そんな時に、知り合いの居酒屋の店長さんから“あと数年したら店を畳む。やめた後は店を300万円で譲るよ”って言われて…これだ!って思ったんです。再建手術なんかにお金をかけるよりもお店を300万円で譲り受け、いつかお店を持ちたいと」
その店はかつての勤務先、川崎の堀之内のソープ街にある居酒屋だという。
「私がソープで働いていた時に仕事終わりに必ず寄るお店だったし、場所柄、風俗嬢のお客さんが多い店なんです。私も女の子たちの“今日は暇だったよー”とか“めっちゃ忙しくて〜”なんて愚痴を聞いたり話し相手になれたらなって。
帰る頃には“明日も頑張ろう”って思える心の糧になるような店にしたい。それまでいろんな準備に追われますが…開店の目標は3年後です」
風俗をやめた後、現役風俗嬢の支援側の道を選ぶ女性は少なくはない。青田さんもまたそのひとり。
「風俗は究極のサービス業と言われています。そこで働く子たちが明日もまたその究極のサービスができるような元気を、少しでも与えられる店ができたら。マッサージ店で得た指圧の技術で女の子の首肩もスッキリさせてあげたいですね」
青田さんのサードキャリアの夢が叶うよう、願うばかりだ。
取材・文・撮影/河合桃子
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