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エヴァ、鬼滅のフィギュアやプラモを作る壽屋が70周年! 町のおもちゃ屋が偶然と意地で世界的ホビーメーカーになれた理由

集英社オンライン / 2023年1月21日 11時1分

「新世紀エヴァンゲリオン」、「鬼滅の刃」、「スター・ウォーズ」などのメガヒット作品の高クオリティフィギュア、プラモデルを手掛ける壽屋(ことぶきや)。今年1月に設立70周年を迎える同社の広報IRチームのチームマネージャー・清水聡氏に熱い思いを語ってもらった。(トップ画像/©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable)

もともとは町のおもちゃ屋だった壽屋が
なぜホビーメーカーへ?

取材に協力してくれた清水聡氏

フィギュアやプラモデルの企画、販売を中心に行い、ホビーメーカーとして名を馳せる壽屋は、その造形技術の高さからなるディテールへの熱烈なこだわりにより、国内外問わずファンが多い。

“世界の壽屋”を求めて、はるばる日本へと来日し同社のフィギュアを買い求める外国人の姿も珍しくはないのだ。



そんな壽屋だが、意外にもその歴史は小さなおもちゃ屋から始まったという。

創業当初の壽屋

「弊社は1953年1月に東京都立川市でおもちゃ屋として創業しまして、しばらくは地元のお客様向けに雛人形や五月人形の販売をしていました。また立川にはかつて米軍基地があったので、兵隊さんを含めた地元のお客様に国内玩具の販売もしていまして、一年のうち半分は節句人形、もう半分は国内玩具を取り扱っていたんです」

こうした町のおもちゃ屋さんとしての営業は30年以上にも及び、立川の人々から愛され続けたが、1980年代中頃に転機を迎えることになる。

© KOTOBUKIYA (84年の製品)こちらは壽屋が初めて製品化したアーマメントだ

「今も昔も立川周辺は、美大生やデザイン関係の方が多い地域でして、80年代当時、そういったアンテナの高いお客様のあいだでガレージキット(合成樹脂の成型方法『レジンキャスト』で作る組み立て式の模型)が流行っていると聞きました。

実物を見てみると、『これなら我々でも作れるかも』という気持ちが沸々と芽生えてきたんです。そこで当時の模型コンテストで優秀賞を受賞したお客様の作品を原型として使わせてもらい、販売したのがホビーメーカーとしての始まりです」

1989年には完全可動式のガレージキットを発売。ガレージキット業界内で初の試みだったこともあって、一躍注目の的になった。が、現在では考えられない方法で製作、販売していたという。

「当時は生産体制がしっかりと整備されていなかったので、おもちゃ屋の店舗のバックルームで製品を作っていたんです(笑)。出来立てを売るたい焼き屋さんみたいに、お客様から注文が入り次第、シリコンの型に樹脂を流し、部品を抜き取るという、今思えば無茶なことをやっていましたね(笑)」

エヴァとの出会いが会社のその後を決めた

90年代当時の失敗を語る清水氏

その後、ガレージキット販売事業はぐんぐん成長。ホビーメーカーとしての歩みを着実に重ねつつあったが、水面下ではヒリヒリするような事態もあったそうだ。

「この時期に会社として、大きな仕事を取り逃したことがありました……。90年代初期、今は誰もが知る某国民的アニメの製品化依頼をいただいたんですが、当時は世間的な認知度が足りないと判断し、丁重にお断りしました。ですが、その作品が後に大ヒットしてしまい……。

このときの苦い経験を活かし、それ以降どんな依頼でもお受けすべしという現在まで続く方針に切り替わりました。それからしばらくして、『新世紀エヴァンゲリオン』に出会ったんです」

このエヴァンゲリオンとの出会いが壽屋の運命を大きく変えることになる。

©カラー/Project Eva.

©カラー/Project Eva.

「エヴァといえば今でこそ国民的な知名度を誇る作品ですが、当時は放送前でしたからまだ一部のアニメファンが注目しているぐらいだったと思います。弊社では先述した苦い経験がありましたので率先して依頼をお受けしました。結果、エヴァのホビー商材において先駆けとなることが出来ました。

うちからは主人公・碇シンジの乗る『エヴァンゲリオン初号機』と、人気キャラ『綾波レイ』のフィギュアを販売しましたが、アニメが人気になるにつれて、需要がどんどんうなぎ上りに。」

「失敗を経験したからこそ、運を引き寄せた」と清水氏は語る。こだわりの強いマニア層のファンをもうならせ、話題になったことで、壽屋はホビーメーカーとして次なるフェーズに入ることになる。

指示が厳しすぎるスター・ウォーズには
機転を利かして成功へ?

日本国内の版権ものだけにとどまらず、世界に打って出ることになる。そう、「スター・ウォーズ」のキャラクターの製品化だ。

「スター・ウォーズといえば、地球規模のビッグコンテンツですから、日本の一中小企業が製品化したいと言ってもすんなりと権利を下ろしてはくれません。しかしあきらめずに、『日本の造形技術でスター・ウォーズの世界観を再現したいんだ』という熱量をぶつけ続けまして。何度もアプローチした結果、ようやく心を許してくれて許諾を得られたんです。

……ただ本当の困難はここからでした。スター・ウォーズは、メディアミックス展開のガイドラインがおそろしいほど厳格で、製品化する際に細かい修正指示がいくつも届くんです。たとえば『ダース・ベイダー』のフィギュアを製品化する際は、『ベイダーはこんなポーズはしない』、『この角度が変』なんて具合に、細かい要望がかなり来て、かなり苦悩しました(笑)」

スター・ウォーズは、キャラクターにも知的財産がある「キャラクターIP」という考え方をいち早く導入したコンテンツ。キャラクターのイメージを崩さぬよう、製品化のジャッジは厳格なものだったのだろう。だがもちろん壽屋はここでも折れず、意地を見せる。

©& ™ Lucasfilm Ltd.

「うちとしても、日本で作る意味をなんとか込めたかった。そこでスター・ウォーズシリーズがもともと黒澤明監督作品に強く影響を受けていることに注目しました。だから『黒澤作品の侍はこういうポーズをするんだ』という具合に“逆提案”してみたんです。

その結果、『侍の意匠を凝らしたポージングと壽屋ならではの造形技術に感動した』と好印象を抱いてくれました。このとき世界的コンテンツも認める日本的モノづくりの精神、技術が壽屋にはあると確信できましたね」

100周年を見据え、ホビーメーカーにとらわれない
新しい価値の創出

© KOTOBUKIYA 壽屋オリジナルIP「FRAME ARMS GIRL」のキャラクター「轟雷」

原作に忠実、かつ日本的なモノづくりの意匠をプラスして確立された壽屋クオリティ。清水氏は「“現実の製品がお客様の理想に追いつける”ようなモノづくりを目指している」と語る。

「我々は微細な凹凸から衣装の質感、光の当たり具合まで研究し、製品を作っております。またキャラクターが作品によって異なる衣装を着ていれば、衣装ごとに“どうしたらカッコよく、可愛く見せられるのか”研究を重ねて、製品を作っていますね。キャラクターの持つイメージを最大限に引き出すこと、とも言い換えられますね。それができていればメーカー冥利に尽きますし、ファンの方々にも納得してもらえる製品になると信じています」

70周年を迎えた壽屋。これを機に初心に立ち返った事業も現在進行形で進めているらしい。

©加々美高浩 © KOTOBUKIYA

『ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル』という壽屋の造形技術、ノウハウを詰め込んだクリエイター向けの精巧なハンドモデルの製作に注力しています。職人気質の高い企業であるというホビーメーカーとしての原点に立ち返り、コンテンツの作り手を支援できればと思いスタートした事業ですので、様々な業界のクリエイターの役に立てれば嬉しいですね」

現在の壽屋本社

取材・文/文月/A4studio 撮影/下城英悟

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