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「北九州の人間にとって成人式は、遊びの最後を飾る祭りやけん」…元ヤン社長が語る、2008年の成人式と前田大尊に憧れた喧嘩の日々

集英社オンライン / 2023年1月8日 9時1分

今年もド派手な北九州の成人式。そんな北九州の成人式に自身も2008年に気合の羽織で参加し、今年年男を迎えた元ヤン社長にインタビューを敢行。平成の成人式と当時の日々を振り返ってもらった。(トップ・サムネイル画像/成人式の会場前でポーズを決める北九州市立吉田中学校の面々。金袴の後列中央、リーゼントの男性が望月さん)

大型バスを貸し切って会場へ。 ※手前の望月さんと奥の寺原さんは当時すでに20歳

2003年、通称「金さん」「銀さん」から始まった北九州のド派手成人式から5年。一度きりで終わると思われた…終わってほしいと思ったに違いない大人たちの思いを大きく裏切り、受け継がれた成人式魂は年毎にその派手さを増していった。



2008年に新成人となり、マッキンキンの羽織袴に身を包んで式に参加、今年は年男で現在は北九州で建設業を営む当時の番長、望月健司さんに成人式の思い出を語ってもらった。

それもひとつの存在証明

――今や北九州の文化と言われるまでに昇華したド派手な成人式が生まれたのは2003年。望月さんが新成人になったのは5年後の2008年ですが、成人式を意識したのはいつ頃ですか?

一個上の先輩達のを見たときやから2007年の成人式やね。「金さん」「銀さん」は知らんけど、北九州でヤンチャだった先輩たちが、気合の入った揃いの羽織袴で式に出ているのを見て、よっしゃ! 来年はオレらの番や!と(笑)。

――オレが一番目立ってやると?

いやオレが、やなくて、オレたちが、やね。北九州は○○中学出身という意識がものすごく強くて。高校やといろんな地域から集まってくるけ、地元に密着している中学の方がまとまりやすいちゅうか、仲もいいんよ。
成人式も中学のチームごとに揃いの羽織袴でビシッと決めて。やけ気持ち的には、オレやなくてオレたちなんよ。

――チームとして一番を目指した?

それもちょっと違うかな。一番になりたいわけやなくて、他のチームには負けたくない。ナメられたくないちゅう感じやったと思いますね。オレたちはここにいるぞみたいな。存在証明みたいなもんやったと思います。

――衣装は…レンタル貸衣装店の『みやび』ですか?

そうそう。先輩たちの成人式が終わってすぐにみやびに行って。オレは『バカ殿様』みたいで嫌やったんやけど、幹事を務めたやつがどーしてもマッキンキンがいいって言い張ってさ(笑)。
レンタル料金? チーム全員分の金の羽織袴はないっちゅーことで、ない分は一から作ってもらったから……一人アタマ20万円くらいやったんやないかな。

――当時は、揃いの羽織袴が普通だった?

ヤンチャな人間の間で流行り始めていたのは間違いないけど…それでも5、6校くらいかな。式当日は揃いの衣装で大型バスを貸し切って。今思い出しても楽しかった記憶しかないですね。

――大型バス…ですか?

ホントはね、リムジンを借りたかったんですよ。でも全部出払っていて。リムジンも早いもん勝ちやから。しゃーないバスでいいかと。当日は『望月健司様御一行』と書かれた大型バスに乗って、会場まで乗りつけましたね。ただ……。

――ただ…なんでしょう?

一個上の先輩たちまでは、当時会場になっていた『スペースワールド』の玄関まで車を乗りつけられたんやけど、オレたちの代からそれは禁止になって。駐車場に誘導されて、そこから歩いて会場まで行くというようにルールに変わったのが、ちょっと残念やったね(笑)。

夢は…番長!

――北九州の成人式は、“日本一ヤバい”成人式として有名ですが、当時から喧嘩とかもあったんですか?

喧嘩? ない、ない、ない。みんなもう20歳ですよ。中学高校の6年間で勝負はついとうけ、それぞれの立ち位置は決まっとるし、喧嘩になるなんてことはないですよ。顔を合わせても「おぅ、元気?」みたいな感じですよ(笑)。

――ということは…望月さんも、中高の時は喧嘩に明け暮れていた?

やってましたね。もういやっていうほど(苦笑)。これは北九州の風土やろうけど、“喧嘩には負けるな!”ちゅうのが厳然と続いていて。「喧嘩に負けた!? お前はそれでもオレの子か? 勝つまで帰ってくるな」と、くらす(殴る)親が多かったですからね。親に怒られたくなければ、もう強くなるしかないみたいな感じやったですから。
人生の目標は、「番長になって、地区制覇!」って思ってるやつがそこら中にいて。オレもその一人ですけどね(笑)。

――そのまま、漫画の世界です(笑)。

いやでも本人たちはいたってマジで。オレも小学校のときに兄ちゃんの影響で読んだ、『週刊少年ジャンプ』のヤンキー漫画『ろくでなしブルース』にドハマりして。夢は主人公の前田太尊になる!やったですからね(笑)。

後列中央で睨みをきかせる望月さん。喧嘩に明け暮れていた当時の写真

――スポーツには興味がなかった?

中学で柔道、高校では空手をやってました。

――なるほど。だから喧嘩にも強かったんですね?

いやそうじゃなくて(苦笑)。順番が逆です。柔道と空手をやっていたから喧嘩が強いんやなくて、喧嘩に強くなりたいから柔道と空手をやりよったというね。まぁおかげで喧嘩では一度も負けたことがなかったですけどね。

――変な質問になりますが、中学生、高校生の喧嘩というのはどこまでやり合うものなんですか。

オレの喧嘩はステゴロ(武器を持たずにコブシで殴り合う)で、相手が“まいった”と言うまでやね。ごめんなさいって言ったらそれ以上はやらない。
一回喧嘩したらみんな友達!みたいな感じやったね。『ドラゴンボール』と一緒ですよ(笑)。

――結果、夢だった番長まで上り詰めた?

中学は割と簡単に(笑)。高校は漫画の『クローズ』の鈴蘭と鳳仙と同じように、バリバリのヤンキーが集まる高校ともう一校、『池袋ウエストゲートパーク』のような街っ子チーマーの高校があって。オレはバリバリのヤンキーに憧れてたけん、そっちに行きよったよ。

現在は建設会社を営み、従業員を抱える社長

やりたいことをやったらええ

――いよいよ最終決戦ですね(笑)。

ライバル校に関してはあっさりクリアできたんやけど、あと2人とんでもない化け物がおって。ひとりは高校に行っとらん完全な一匹狼。もう一人は同じ高校の空手日本一。どっちとやってもお互い無傷では済まんやろうなと思ってたんやけど、なんとなくやめておこうという暗黙の了解みたいなもんが出来上がって。

――暗黙の了解ですか…そういうところは政治の世界や国対国の関係と近いところがあるんですね。

そうかもしれんね。戦争と同じでやり始めたらあとは泥沼やけん。やらんで済むもんならやらんほうがええよ。殴るのも殴られるのも、痛いけん。

――今あらためて、ご自身の成人式のときの写真を見てどうですか?

恥ずかしいよ(笑)。でも面白かったし、楽しかったね。

――新成人に送る言葉があるとしたら、どういう言葉をかけますか。

みんな好きなことをすりゃーいいと。先輩風を吹かすわけやないけど、目立ったり、騒ぎたい気持ちは風邪みたいなもんで、必ず直るから。お金のことも含めて自分の裁量で出来るんやったら、好きなことをやったらいいよって言いたいですね。
なんたって、最後のお祭りなんやから。

――最後の祭りですか?

北九州の人間は、というか気合い入っとる奴らはみんなそうなんやろうけど、卒業式とかそういうイベントごとが大好きで。
オレも中学の卒業式んときは、チームで揃いの刺繍入りの学ランを着たしね。高校の卒業式も祭りみたいなもんやったし、北九州の人間にとって成人式は、その最後を飾る祭りやけんね。

――とことん、やれと。

そう。ただしハメを外しすぎて捕まるようなことがあったら、楽しかったはずの思い出が一瞬で全部パーやけ、そこだけは気をつけろと。ギリギリのところで踏みとどまって何十年かして思い出したときに、「楽しかったよなぁ」って思えるものにしてほしい、とは思うかな。

――先輩のひとりとして、それを見守っているぞと?

見守る? そんなんしないですよ。自分の番が終わったらそれで終り。バトンを受け取って、それを後輩に引き継ぐなんて、オレらだれひとり思ってないですから。ウザい先輩の説教とか無しで新しい文化として継承されていくんなら、それが最高でしょう!? それでこそ、ホンマもんってことでしょう。それでいいと思いますよ。

現在の望月さん。現在もヤンチャそうである(笑)

取材・文/工藤晋

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