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【両親を殺害し冷蔵庫に遺棄・60歳男に懲役30年判決】「トイレ介助が嫌だ」「アニメDVD鑑賞をじゃまされた」小遣い3万円、引きこもり歴30年の無職還暦男は殺害後もいつもの生活を送っていた

集英社オンライン / 2023年1月6日 12時39分

福岡市西区の元酒店で老夫婦が殺害され、業務用冷蔵庫に遺棄された状態で見つかった事件で、犯行に及んだ次男の紙のように軽い罪悪感が浮き彫りとなった。平成時代の三十余年をほぼ引きこもりで過ごした還暦目前の無職男性が、家族を完璧にぶっ壊した本事件、12月19日、検察側は「容赦のない冷酷な犯行で悪質」として、無期懲役を求刑。年明けての1月6日、福岡地裁は懲役30年の判決を言い渡した。事件の背景に迫った集英社オンラインの記事を再公開する。(初出:2022年12月20日)

母親に「もう死んどるよ」と声をかけられ、その母親も…

福岡県市西区横浜の無職、松本淳二被告(60)は昨年6月、同居していた父の博和さん(当時88)と母の満喜枝さん(同87)の首を次々に絞めて殺害、業務用冷蔵ショーケースに遺棄したとして殺人、死体遺棄罪に問われている。14日に同地裁で初公判が開かれ、被告は淡々と起訴内容を認めた。


(福岡地方裁判所 共同通信より)

被告の生育環境や犯行に至る経緯、犯行の概要は検察側の冒頭陳述に詳しい。これによると松本被告は勝手に大学を中退したことを厳しく叱責されてから父親に苦手意識や嫌悪感を抱き、以降は父親を避けるように生活。就職したり、実家の酒店を手伝った時期もあったが、30年以上無職で自宅に引きこもり、自室で好きなアニメや漫画本を楽しむ生活を続けていた。

ところが昨年初めごろから博和さんに認知症の傾向が出始め、さらに4月から満喜枝さんが腰椎骨折で約2カ月間入院したことから、嫌いな父親と自宅で二人きりの生活を送ることになった。父親が同じことを何度も尋ねたり、用事を言いつけるために自分の趣味の時間がじゃまされたことに苛立ちを募らせた松本被告は、いっそ父親が死んでくれたらという感情を抱くようになった。そして、トイレの介助を頼まれるようになったことで、その不満は頂点に達した。

松本淳二被告 NHKより

犯行当日の6月20日午後6時ごろ、2階の自室でアニメのD V Dを視聴中に1階寝室にいた父親の博和さんに呼ばれ、初めてのトイレ介助を経験。同7時ごろ、再び呼ばれて2回目のトイレ介助、さらに眠りに就こうとしていた同9時過ぎ、3回目のトイレ介助に呼ばれたが、今度は父親を立たせることができなかった。

ここで博和さんが用を足すためのバケツを持ってくるよう頼んだことで、用便後の後始末までさせられることに怒りを爆発させた松本被告は殺害を決意。居間から持ち出した電気ポットのコードを首に巻いて締め上げ、博和さんを殺害した。この様子を見ていた母親に「もう死んどるよ」と声をかけられた松本被告は、口封じのために母親も同様手口で殺害、両親の殺害を隠蔽しようと二人の死体を業務用の冷蔵ショーケースに押し込んで、粘着テープで目張りをした。

松本被告の身勝手な殺害動機とは…

「日常」を取り戻した松本被告はその後も好きなD V Dを購入するなどしていつもの生活を続け、母親の通院先や介護センター職員、親戚などに両親の様子を聞かれるたびに嘘をついていたが、これ以上ごまかしきれないと自宅から逃亡した。

親戚からの連絡を受けた福岡県警が6月29日、目張りされた冷蔵ショーケースに入っていた両親の遺体を発見。7月4日に逃走先の京都市内で松本被告を確保、逮捕していた。
父親のことは嫌っていた松本被告だが、母親との折り合いは悪くはなく、35年間に及ぶ引きこもり生活で唯一口をきく相手であり、買い物や病院の送り迎えに付き添っていたという。生活費は両親の年金や貯金から月に1〜3万円を小遣いでもらい、両親の食事の準備や風呂掃除などの家事もそれなりにしており、それ以外は漫画を読んだりD V D鑑賞に一日の大半を費やしていたが、この時間を邪魔されることが最も我慢できないことだったらしい。

福岡地裁・裁判所HPより

息子に惨殺された老夫婦は、現役時代は社交的で地域でも知られた存在で、酒店の一角では簡単な料理を出す「角打ち」としても繁盛していたという。
近くに住む70代の男性はこう語る。

「博和さんは地域の消防団にも入っていたし、奥さんは美人で商売上手で、近くの工場の従業員や土木作業員が角打ちに列をなして賑わってましたよ。時代の流れでこういう商売も年々廃れて、酒屋さんも10年くらい前にとうとう店を閉めちゃったけど、冠婚葬祭や地域の行事にはご夫婦でちゃんと出席されてました」

子供たちはどうだったのだろう。男性が続ける。

「逮捕された淳二さんは頭がよくて進学校に通っていると評判だったけど、大学を中退して、対人恐怖症になったみたいな噂がずっと出ていました。酒屋の配達しているところを一度だけ見かけたけど、ちゃんと手伝ってる様子じゃなかったな。お兄さんもずっと病院に入っているしね。もう最後にあの家族を見かけたのもいつだったかな……」

近隣に住む60代の女性はこう振り返る。

「私は30年くらい前にこちらへ越してきて、世代が違うからそんなに深い話はした事ないんですけど、奥さんはいつもニコニコしてて穏やかな方でした。古くからある酒屋さんらしくて地元な方々からとても愛されていて、駄菓子やアイスも売っていたから子供達にも人気がありました。今では子供の姿すらほとんど見かけない寂しい田舎町になってしまいましたけどね」

昭和の子供がアニメに興じて引きこもっているうちに、時代は流れ、街並みすら変わってしまった。松本被告は何をぶっ壊し、何を守りたかったのだろう。昭和は遠くなりにけり。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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