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「まだ気づかれていない仕掛けも」…圧倒的な情報量で話題騒然となった『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』がジョジョ好きを唸らせた理由

集英社オンライン / 2023年1月12日 15時1分

2022年の7月に発売されて以来、今なお売れ続ける『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』の担当編集者に、アツすぎるジョジョ愛と制作秘話を聞いた。

初めてAmazonランキング1位を獲得した『地球の歩き方』

人気の海外ガイドブック『地球の歩き方』が、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(以下『ジョジョ』)とタッグを組んで誕生した『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』。2022年4月1日に刊行が発表されたこのコラボレーションは、ジョジョファンの中で話題騒然となり、また、エイプリルフールということもあり「ネタか本当かわからない」とSNS上で盛り上がった。

その勢いのまま、『地球の歩き方』として初のAmazon全書籍総合ランキングで1位を獲得。2022年7月14日の発売以降も、ガイドブックとしての完成度や資料価値としての高さ、ジョジョ愛に溢れた仕上がりに「ディ・モールト良い」(非常にいい)などの声が挙がっている。



本書は、杜王町のモデルになった仙台市をはじめ、イギリス、イタリア、インド、エジプト、アメリカなど、第1部~第8部までの物語の舞台を名場面とともに紹介する構成となっている。

例として、イタリアのローマにある「コロッセオ」の説明を抜粋する。

「80年に造られた巨大円形闘技場。その大きさは高さ57m、直径188m、周囲527mで、当時の収容人数は5万人以上。(中略)ここでは、猛獣対剣闘士、または剣闘士同士の凄惨な戦いが繰り広げられ、人気の娯楽になっていた。(中略)そんな血なまぐさい歴史ゆえか、「コロッセオの地下深くには人間の血を吸う未知の生命体が眠っている」という都市伝説も。真相はわからないが、ここではなるべく血を流さないようにしたいものである……。ローマを代表する名所なので、顔を知らない人間とこの町で落ち合うなら、待ち合わせ場所としてもおあつらえ向きだ。ただし、「オレは上! きさまは下だ!!」と言われて上階に行けないかもしれないので、落ち合う場所を指定しておこう」

ファンであれば思わずクスッとなるような、ジョジョ愛に溢れた内容ではないだろうか。どこか奇妙で冒険心をくすぐられるこのガイドブックはどのように生まれ、そしてどのように出来上がっていったのだろうか。本書の制作を担当する由良暁世さんに話を聞いた。

『地球の歩き方』で一番奇妙なガイドブック

『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』を手にする由良暁世さん

由良さんは、本書が生まれたきっかけをこう話す。

「コロナ禍で、『地球の歩き方』の海外取材ができなくなってしまって、海外ガイドブックが作れなくなったんです。それで、新しい取り組みを編集部で模索しはじめました。私はマンガが好きなので、マンガをテーマに1冊つくれないかと思って。
『ジョジョ』は作品の中に世界各地の実在するスポットが登場しますし、2022年に35周年を迎えるということもあって、記念の1冊をつくりたいと思ったのがきっかけです。それで、集英社さんに企画をご提案しました」

集英社に提案した実際の企画書

由良さんは、主にヨーロッパを担当しており、『地球の歩き方』の女子向け版である『aruco』のフランス版では『ベルサイユのばら』、イタリア版では『テルマエ・ロマエ』を用いて歴史や文化を紹介するなど、マンガとリンクした本づくりも行ってきた。
ただ、マンガでまるまる1冊をつくるのは『地球の歩き方』としては初めての挑戦だ。どんなことを意識したのだろうか。

「コロナ禍で世の中が沈んだ空気感になっていて、旅に出られない時期でもあったので、意識したのは、読んだ人に明るい気持ちになってもらいたい、旅に行けなくても楽しんでもらえる本にしたい、ということ。ファンのみなさんにクスッと笑ってもらえるように、客観的な紹介文ではなく、旅情報のなかに原作エピソードを散りばめたつくりにしました。結果として『地球の歩き方』史上最も“奇妙”なガイドブックに仕上がりました」

『地球の歩き方』が大切にしている思いもこもっていた。

「ガイドブックって実用書なので、本来は読んでいて楽しいと感じるものではないのですが、『地球の歩き方』は、歴史や文化のコラムがあったり、旅の体験談や雑学がふんだんに入っていたりするので読み物として楽しまれている方もいらっしゃいます。
旅に行かなくても行った気分になれる、旅から帰って読み返してみて改めて発見があるなど、実用書としてだけではない楽しみ方をされているのを私たちもずっと感じているところではあったので、本書もそういう方向性にしたいなというのはありました」

セリフだけで登場するスポットまでも紹介

本書P50-51

『ジョジョ』では、実在する場所や建物と、作中にしか存在しないフィクションのものがあるが、本書ではそのどちらもスポットとして紹介している。
例えば、イギリスでは「大英博物館」。次に、紳士の入り込むところではない暗黒街「食屍鬼街」(オウガーストリート)が紹介される。リアルとフィクションを行き来する奇妙さが本書の魅力のひとつなのだ。
また、ストーリーとは直接関係はないが、風景として描かれていたり、セリフの中で触れられているスポットの紹介まで網羅されているのも本書の特徴だ。

「女帝 その③」 『ジョジョの奇妙な冒険』 16巻より

「インドで紹介している『久美子の家』という宿は、絵がなくセリフだけで触れられていますが、実在するバックパッカー御用達の宿です。同じくセリフだけで触れられているジョセフ達が泊まっているホテルクラークスも実在します」

「クラッシュとトーキング・ヘッド その⑥」 『ジョジョの奇妙な冒険』 57巻より

「ヴェネツィアだと、広場で子どもたちが遊んでいるシーンにオブジェのようなものが描かれています。これはヴェネツィアで昔使われていた井戸の跡なんですけど、こういう本筋とは関係ない箇所もなるべく拾いました。実際に旅をしたときに、『これがそうか!』という発見になって楽しいだろうなと思って、できる限り取りこぼさないように入れています」

細かすぎるともいえるスポットたちはどのように探したのだろうか。

「マンガを一から読み直して、実在していそうな場所や物はすべてピックアップしてリスト化しました。パッと見では特定できないものはGoogleストリートビューで調べたり、各国編の『地球の歩き方』制作スタッフにも協力してもらって、誌面に落とし込んでいます」

旅目線で気づかされた荒木飛呂彦先生の凄さ

本書では、「旅」をテーマにした荒木飛呂彦先生へのインタビューも8ページ掲載されている。インタビューでは、「面白そうだな」というロマンの匂いだけで旅行先に赴き、文化に触れて、「そこを舞台にしようか」と考えるという、旅が『ジョジョ』を生み出すきっかけになっているエピソードなどが披露されている。

「旅先では、例えば草木の生え方や、柵がどう設置されているか、といった点に着目されていると伺いました。日本とアメリカでは木の生え方がちょっと違うとか。お話を伺って改めて『ジョジョ』を読み返してみると、荒木先生が各地でご覧になったものや体験されたことがふんだんに描かれていることに気づき、感動しましたね。

そういったリアリティがあるからこそ、フィクションの場所でさえ実在するのではと思わせてくれますし、何度読み返しても面白くて。旅をすればするほど『ジョジョ』のスゴ味を感じます」

随所に感じるジョジョ愛と遊び心

本書は、背表紙が、第3部「スターダストクルセイダース」の主人公、空条承太郎のシルエットになっているなど、ジョジョファンであれば思わず嬉しくなってしまうような仕掛けが随所にある。

「マンガを読み返しているうちに『地球の歩き方』の背表紙にあるギザギザ模様が、第3部の承太郎の横顔と重なって見えまして。ファンの方なら気づいてくださるかなと、シルエットを反映しました。初回限定の腰高帯はリバーシブルになっていて、裏面には石仮面とメキシコの遺跡チチェン・イッツァが描かれています。
裏面のイラストは『地球の歩き方』の創刊時(1979年)から表紙デザインをお願いしている日出嶋昭男さんに描いてもらいました。このリバーシブル帯も非常に貴重なコラボになりました」

本書のメインコンテンツである「スターダストクルセイダース旅プラン」もそのひとつだろう。この旅プランは可能な限り承太郎たちの旅プランをなぞってつくられた聖地巡礼ツアーだ。

「『地球の歩き方』では、モデルプランを入れることも多いので、最短のプランをつくってみました。19日間で香港~エジプトまで旅をして、約111万円(2022年3月調査時)。ニューヨークの不動産王(ジョセフ)ならドバイの『ブルジュ・アル・アラブ』に泊まるかなと1泊17万円くらいするホテルも加えていますが、10都市以上巡ってこの金額なので、決して高くはないかと思っています。
ジョジョファン同士のハネムーンにも最適なんじゃないかと。ただ、多くの方がスピードワゴン財団に知り合いはいないでしょうから、保険には必ず入っていただきたいですね」

「このガイドブックは、第1部から第8部までのスポット紹介に加え、「岸辺露伴と歩くルーヴル美術館」などの芸術特集も掲載しています。208ページのなかに情報をぎゅうぎゅうに詰め込んでしまいましたが、分厚くはないので旅のお供にぜひ持ち歩いてほしいです。杜王町のモデルである仙台は、1泊2日のモデルコースも用意しているので、まずは仙台を旅していただけたら」

最後に、由良さんにまだ読者に気づかれていない仕掛けがあるかを聞いたところ「一つだけある」と返ってきた。この記事では、あえて答えは明かさないでおこうと思うが、そんな場所にまでこだわっていたのかと驚かされる遊びが隠されていた。この記事は、ここで締めるが気になる方にヒントだけお伝えする。


ヒントは「地図」だ。


取材・文・写真/砂流恵介 漫画/©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険

地球の歩き方編集室

2022/7/14

2,420円(税込)

208ページ

ISBN:

978-4058018033

発売元:Gakken
https://www.arukikata.co.jp/web/directory/item/101325/

【『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』のおもな内容】
・仙台の歩き方
・エリアガイド:イギリス、イタリア、香港、シンガポール、パキスタン、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプト、アメリカ、メキシコ、インド
・荒木飛呂彦先生スペシャルインタビュー
・岸辺露伴と歩くルーヴル美術館
・『ジョジョ』に学ぶッ!旅の準備と技術
・折込地図 ほか
©荒木飛呂彦 & LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

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